ゼロから抗体を設計するプロセスは、依然として困難
第3のテストでは、AIに対して、訓練データセットとして与えられていない抗体配列をつくるという課題を与えた。こちらも結果はまちまちだった。AIが設計した抗体のなかには、標的分子と非常によく結合するものもあった。提出された設計の約3分の1は、標的分子の濃度が1リットルあたり10億分の1モルに満たない場合でも結合能を示した。しかし、結合能をもたない設計も多かった。そして、結合能の高い設計のなかには、開発可能性に難があるものも多く、実験検証が依然として必須であることが裏づけられた。
AIモデルは、計算上有望に見える配列を特定することはできても、その設計に基づいてつくられた抗体が実際に機能するかどうかは、ラボ実験をして初めて判断できるのだ。
「AIが設計する抗体」の可能性
AIは、過去の実験の情報に基づいて、既存の抗体の設計を改良する場合には、優れた成果を示した。しかし、多数の候補のうち最も有望なものを予測する場合や、まったく新しい配列を設計する場合には、AI利用の成果ははるかに不安定だった。
新薬開発にAIがますます普及するなかで、この違いは重要な意味をもつ。AIモデルが「有望な予測」を出力したとしても、必ずしも効果の高い新薬ができるとは限らない。
AIntibodyコンペティションは、両者の違いを見極めるための指針となった。今後の研究では、コンピューターの予測を、同一条件で実験的に検証することを求めることで、どのアプローチが本当に抗体開発を効率化するのかが明らかになるだろう。
将来的には、新たな抗体開発に必要な膨大なラボ実験を、AIの活用によって大幅に削減できるかもしれない。しかし、現時点で最も有効なのは、AIを利用して、こうした実験をより小規模に、より候補を絞り込んだものにするというアプローチだろう。


