AIは、既存の抗体の改良に役立つ
3つのテストのうち、AIが明確に成功を収めたのは、既存抗体の改良を指示された場合だった。提出された設計のうち約13%が、開発可能性を損なわないまま、少なくとも20倍に上る結合能の改善を示した。
この研究でAIによって設計された抗体のうちの一つは、標的分子への親和性において、従来の実験手法で開発された最も効果的な抗体に匹敵するものだった。このことから、すでに有望な抗体の候補が手元にあり、さらなる改良を施したい場合には、AIが有用なツールとなり得ることが示された。
AIの優位性となり得るのはスピードだ。適切な演算アプローチにより、従来は数週間を要したスクリーニング実験の過程を省き、AIが生成したごく少数の候補に絞り込める可能性がある。数千種に上る「あり得る組み合わせ」をすべてテストする代わりに、AIが選別した少数の抗体をテストするだけで済むようになるかもしれないのだ。
「最も有望な抗体」の特定には苦戦
一方、類似した複数の候補のなかから最も有望な抗体を特定するテストでは、結果にあまり一貫性が見られなかった。AIアプローチの大部分は、ランダムに抗体を選択するよりも優れた結果を残せなかった。参加チームのうち、評価のベースラインとなるランダム選択を一貫して上回る結果を出したのは、わずか1チームだけだった。
この結果には、抗体設計の本質的な難しさが反映されている。抗体の配列に変更を加える方法は無数に存在する。結合能を改善する変更によって、抗体が不安定化したり、あるいは、非標的分子と相互作用するようになる可能性もある。そのためAIには、複数の特性を同時に最適化することが求められる。この課題は、「過去最も効果的だった抗体に、最も似ているのはどれか」を単純に予測するよりも、はるかに難しい。


