昨年11月に実施したラウンドでは評価額が10億ドル(約1200億円)で1億ドル(約120億円)を調達しており、わずか1年で市場価値が4倍になったことになる。同社はアジア圏への進出を図るため、今後数週間のうちに追加で資金調達を行うとしている。
Yelloは、今や韓国でeコマース企業のCoupangに次いで価値の高いスタートアップになろうとしている。Coupangは昨年6月にソフトバンクから50億ドル(約6000億円)の評価額で10億ドル(約1200億円)を調達している。
Yelloの戦略は、モバイル関連スタートアップに出資を行ない、育成することだ。これまでにeコマース企業のCoochaやソーシャルマッチングアプリの1km、ウェブエージェンシーのEmotionなどを傘下に収めている。CEOのSanghyuk Leeが2012年にYelloを創業して以来、同社は80社以上に出資しており、アジア最大のモバイル・メディア帝国を築くことを目指している。
Yelloは韓国をはじめとするアジア各国でスマートフォン普及率が急激に高まっていることに目をつけ、メッセージやゲーム以外で高い成長性が見込める市場を開拓したスタートアップを発掘している。投資候補となるのは創業2年程度のスタートアップで、Yelloは買収か出資によってグループ化した後、インキュベーターのようなスタンスでその企業を育成する。テッククランチによると、2013年5月に買収したCoochaは、当初85万人だったMAUが300万人にまで増え、売上高は80万ドル(約9600万円)に達しているという。
Yelloグループの主な収益源はモバイル広告で、ポートフォリオ企業のネットワークを活かしてアプリのプロモーションを行っている。韓国では、サムスンなどの大手テック企業は社外のテクノロジーに興味を示すことが少ない上、スタートアップ投資がアメリカに比べて未成熟であることからアプリ企業の市場価値は比較的低い。このため、Yelloにとっては少ない投資額でポートフォリオを増やすことができる有利な状況となっている。
創業者のLeeの手法は、2012年にマリッサ・メイヤーがCEOに就任してからのYahooの取組みに似ている。YahooもSummly(3000万ドルで買収)やFlurry(2億4000万ドルで買収)、Tumblr(11億ドルで買収)などホットなスタートアップを次々と傘下に収めている。ただ、Yahooの場合はメインビシネスの減速のほうが、これらの買収の成果よりも大きい。
Yahooとは対照的に、Yelloは猛烈なスピードで成長を続けている。最終利益は赤字ながら、売上高は前年から1000%近く成長して8730万ドル(約105億円)となっている。同社は2019年までに売上高27億ドル(約3240億円)、営業利益9億600万ドル(約1087億ドル)を目指している。
Leeは2016年中にアメリカのNasdaqか韓国のKosdaqに上場することを目指すと述べており、次の様に発言した。
「我々はフェイスブックでもテンセントでもないが、スタートアップ企業たちと手を組んでフェイスブックを目指したい。志を共有する企業が一緒になったプラットフォームの運営者になりたい」
Yelloの主要株主はVRヘッドセットメーカーのOculus Riftへの出資で知られるサンフランシスコのベンチャーキャピタルFormation 8だ。