本連載が始まって1年がたつ。本連載でもAIなどの技術的変化や中国の台頭など、国際秩序の変化を取り扱ってきたが、その秩序の変化が一層際立つのは、2022年から続くロシアのウクライナ侵攻と、2026年2月から始まったアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃をめぐる問題である。
当初、これらの大国による武力行使は、第二次大戦後の国際法秩序、すなわち力による現状変更を認めないという考え方への挑戦であり、力のある大国が新しい秩序をつくり出すものだと考えられていた。しかし、現実は、ロシアは4年半の時間をかけてもウクライナの一部を占領するにとどまり、現在はウクライナがロシア内陸の奥深くまでドローンを使った攻撃を行っているという状況である。また、アメリカも空爆によってイランを屈服させるというもくろみは外れ、逆にホルムズ海峡が封鎖されることで、厳しい立場に立たされている。つまり、想像されていたような、大国が国際秩序を自由に設定できるような現実にはなっていないということである。
なぜこんなことになったのだろうか。ひとつにはウクライナやイランは甚大な被害を受けつつも、相手の武力の前に屈することなく、戦い続ける意思をもっているということであろう。両国にとって、大国による侵略はおよそ正当化されるものではなく、国際法上も違法とされる攻撃でありうることから、国際的な正義や攻撃の理不尽さが戦い続けるモチベーションになっていることは間違いない。また、ウクライナには西側諸国、イランにはロシアや中国といった同盟関係ではないため共同防衛は行わないが、さまざまなかたちで物資の支援を行う協力国の存在がある。これらの国々が継続的に物資を供給することで継戦能力を維持していると言える。
また、ドローンを使った新しい戦い方に、大国の軍が対応できていないということもひとつの原因と考えられるだろう。冷戦後の欧米諸国は、技術的優位性を生かして、限られた装備でも標的をより早く見つけ、センサーや衛星信号を使って精密誘導を行うハイテク兵器を揃えることで、軍事的優位性を保つということを想定してきた。しかし、廉価なドローンを大量に使って消耗戦を仕掛けることになると、安いドローンを高価なミサイルで迎撃し、相手の飽和攻撃に対応できないという状況を生み出した。



