ノーステキサス大学(UNT)は4万2000人以上の学生を抱える。多くの研究大学とは異なり、志願者の大部分に入学を許可しており、門戸の広さと最先端の研究能力を両立させる全国に約25校ある「ブロードアクセス(広範な入学機会を提供する)R1大学」の一つとなっている。ハリソン・ケラー学長のもとで進められている同大学の再構築は、大学に新たな命を吹き込んでおり、高等教育における極めて重要な試みの一つとなっている。
ケラーのアプローチは、ローテクな手法から始まることが多い。それは、学内のイノベーターたちとディナーを共にする、彼が「フェローシップ・ディナー」と呼ぶ取り組みだ。そこでは、彼が言うところの「素晴らしく見事な仕事」をしている教員のイノベーターや学科長たちとの対話が重ねられる。ケラーは自身が得た気づきを率直に語る。「教員に対する不満を口にする人は多いが、ほとんどの大学は、教員の創造的なエネルギーを活かすためのインフラを構築できていない」
イノベーションに向け、学内の創造的エネルギーを解放する
ケラーの考えでは、問題は教員の無関心さではなく、組織としての怠慢にある。ケラーの説明によれば、大半の大学が提供しているのは「個人がやりたいことをやるためのプラットフォーム」にすぎない。彼自身の経験は、テキサス州政府の高等教育長官としての職務や、キャリアの初期におけるテキサス大学オースティン校の教授学習センターでのディレクター職に由来する。こうした立場から、テキサス州の公立大学が直面する課題と、考えられる解決策のあり方の双方を見出すことができた。
教授学習センターを率いた経験から、ケラーは、そうしたセンターが時に創造的エネルギーの「逃し弁」として機能し、「大学の制度を変化から隔離する役割を果たしてしまっている」と確信するようになった。ケラーによれば、独創的な教授に対する暗黙のメッセージは「この箱の中であれば、イノベーティブであっても構わない」というものだ。ケラーが望んでいるのは、その箱を開け、それらのイノベーションを大学全体に広げることである。
また、ケラーはUNTの外部にも目を向け、地元の雇用主、地域のコミュニティカレッジ、急成長を遂げるノーステキサス経済圏のビジネスリーダーなど、周辺地域のパートナーを巻き込むネットワークを構築している。その結果として生まれているのは、外の世界に対応すると同時に、学生数と資金面での大きな逆風の中でも自らを再発明できる、開かれた大学である。ケラーは、学生の成功を中心とした再編成と、地域との関係性の完全な再定義という2つの方法で、公立研究大学のあり方を再構築しようとしている。
価値ある資格
ケラーのアプローチの核心的な要素の一つは、彼が言うところの「価値ある資格」に真っ向から焦点を当てることだ。このアプローチは、テキサス州の高等教育長官としての彼の仕事から生まれた。そこで彼は、管理組織や大学自体が、在籍学生の卒業率や全人口における学位取得率よりも、さらに先にある目標に目を向けなければならないことに気づいた。
ケラーによると、このような卒業・修了目標の問題点は、高等教育機関が「価値があるかどうかもわからない多くの学位や資格を乱発する」状況を作り出しかねないことだ。ケラーは教育委員会に対し、そうした資格の価値に注目するよう促すことで、テキサス州を「教育達成度の目標を、州経済における資格の価値に連動させた最初の州」にする手助けをした。
その原則は現在、大学のあらゆるレベルに浸透している。資格の価値に指標を置くことで、ケラーはUNTの方向性と使命を、雇用主やノーステキサスの新たな経済圏の需要に全学レベルで対応するものへと転換させた。「Time to value(価値創出までの期間)」、すなわち学生が教育への投資に対して純増の投資リターンを得るまでの期間といった新たな指標が、学内の学位体系とカリキュラム構成の双方を刷新し始めている。
数字は厳しい現実を浮き彫りにした。この損益分岐点に達するまでの期間は、コンピューターサイエンスの学位では約3年だったのに対し、特定の専攻では15年以上にも及んでいた。ケラーは、経済的な機会を基礎に据えると、カリキュラムだけでなく履修指導や資金援助など、他の多くの事柄に対する考え方が変わることに気づいた。そして、UNTが学生や卒業生に真の価値をどのように提供できるかへと焦点を移した。ケラーの言葉を借りれば、「卒業生が就職できなかったり、奨学金を返済できなかったりするようでは、それを成功とはみなしたくない」のだ。大学がこの基準を採用すれば、もはや自ら都合の良い価値提案を規定することはできなくなると彼は考えている。
未来の労働力を形成するエコシステムの構築
ケラーはまた、UNT単独ではこの構造改革を実行できず、「巨大な戦艦の舵を一度に切る」のは困難であること、そして「規模の大きい影響を与えるためには、ネットワークやパートナーシップを通じて行う必要がある」ことも認識していた。その結果、彼が新たに創設したのが「テキサス・タレント・アクセラレーター(Texas Talent Accelerator)」だ。そのウェブサイトでは、「ノーステキサスの人材パイプラインを強化するために、産業界、高等教育機関、経済開発のパートナーが積極的に連携する地域の労働力インテリジェンスハブ」と説明されている。
このアクセラレーターが生み出すのは、地域経済のための早期警戒システムである。この情報共有エコシステムは、雇用がどこに向かっているのかを追跡し、大学をそれらの雇用にどう結びつけるかを探る。アクセラレーターにはすでに100社を超える雇用主と50の非営利団体が参加しており、その中には多くの商工会議所や経済開発公社、ダラス連邦準備銀行、地域全体の提携カレッジが含まれる。
同じネットワーク重視のアプローチによって、UNTはテキサス州の高校とも連携できるようになった。ケラーが立ち上げた代表的な取り組みは、高校の教員が指導する「デュアルエンロールメント(高校と大学の二重登録制度)」科目のパイプラインを拡大するものだ。UNTがそれらの教員を訓練し、それぞれの専門分野で少なくとも18の大学院単位を取得できるようにする新たなプログラムを創設した。これにより、UNTは資格を持つ優秀な教員陣を育成し、コミュニティカレッジと提携して、二重登録プログラムがテキサス州全体の学生を高等教育へと導く経路を広げられるようにしている。その結果、UNTと地域の学校、そして成長する経済を結びつける変革されたシステムが誕生し、UNTに新たなエネルギーと活力を与えている。
大学全体で取り組む再構築
ケラーは、大学全体で取り組むアプローチによって、UNTの再構築に取り組んできた。学内で行われた160回以上の対話をベースに、ケラーとUNTは現在「Learning Ecosystem for Empowering Futures(未来を力づける学習エコシステム)」、通称LEEFと呼ばれる仕組みを構築した。LEEFは、教育センター、学習研究所、そして「カリキュラム・コネクター(Curriculum Connector)」と呼ばれる特徴的な部門の、相互に関連する3つのユニットで構成されている。UNTのウェブサイトによると、カリキュラム・コネクターは「UNTのすべての学生の学問的経路が、有意義な仕事につながるスキル、経験、資格に、意図的に、かつ一貫性を持って結びつくようにする」役割を担っている。
ケラーはカリキュラムの刷新にとどまらず、教員や大学の指導部と協力して、UNTの組織構造や評価制度(インセンティブ構造)の変更にも着手している。「教員向けに設定するインセンティブ構造は極めて強力だ」と彼は語り、それを変更することは「タブーに触れる」ことであり、「何が業務量としてカウントされ、何が昇進やテニュア(終身在職権)、昇給の評価対象となるか」を再考することを意味すると認めている。現在進行中の構造改革は、研究実績に加えて、優れた指導、地域社会への貢献、学際的な取り組みを評価できるように昇進やテニュアの基準を広げることを目指している。同様にケラーは学部長たちに対し、教員と協力してUNTの学科を再編し、約60の伝統的な学科を、イノベーティブで学際的な仕事により適した評価基準を明確にする学際的な「スクール(学部・大学院)」へと統合するよう指示した。これらの新しいユニットの一つである「基礎数理科学スクール(School of Math and Science Foundations)」は、数学、化学、生物学、物理学の導入課程を引き継ぎ、ケラーによれば「それらの科目を非常に質の高い形で教えることに意図的に集中している」という。
UNTのイノベーションエンジン
UNTで具体化しつつあるもう一つの改革は、ケラーが「イノベーションエンジン」、すなわち「スピードを上げて物事を試すことができる場所」と呼ぶ仕組みの創設だ。その具体例としては、UNTのフリスコキャンパスや、女性・ジェンダー研究、エスニック研究、地域社会研究のプログラムを統合した応用リベラルアーツ・スクール(School of Applied Liberal Arts)など、新設されたいくつかの学際的スクールが挙げられる。これらのユニットはカリキュラム・コネクターと連携し、仕事一体型の学習を取り入れた、学生のキャリア機会をより明確に見通せる新しい科目を設計している。人文学はUNTの将来にとって不可欠であると語るケラーは、「今こそ人文学が輝くべき時だ」と考えている。雇用主が求めているのは、「コミュニケーション能力があり、批判的に思考し、情報の信頼性を評価し、チームで働くことができる人材」だからだ。
UNT復活に向けたエネルギーは、すでに大学の内部に存在していた。ケラーの戦略は、より学際的あるいは起業家的なアプローチを望みながらも、学科の優先事項に縛られていた教員たちと協力することに基づいている。ケラーはUNTの再構築を、「高等教育に対する信頼や、私たちが提供する教育プログラムの価値をめぐる課題に、主体的に取り組む試み」と表現する。彼は、他の大学もUNTの例に倣うことができると楽観視しており、教員の創造性を引き出すことで、「歴史上の極めてダイナミックな時代において、異なる方法で価値を提供する能力を備え、その準備ができた」学生を社会に送り出すことができるようになると信じている。



