最近、ある同僚が銀行での不快な体験を話してくれた。彼女は、取引銀行が新しい親会社に移行するわずか数週間前に、新しいビジネス口座を開設した。本来なら簡単な手続きのはずが、情報提出の繰り返し要求、頻繁に変わるオンラインツール、矛盾する回答、そして親身になってくれるが同じ情報を持たない担当者への幾度もの電話といった、数週間にわたる労苦に変わってしまった。
個々のやり取りに致命的なものはなかった。しかし総合すると、ちぐはぐで不必要に困難に感じられる体験となっていた。
このことは、私が金融サービスと顧客体験の分野でキャリアを積む中で繰り返し見てきた、ある事実を思い出させた。顧客は、組織が自らを評価するようには組織を評価しない。顧客は体験を部門、チャネル、テクノロジーごとに切り離して捉えることはない。彼らはただ、一つの企業として体験するだけなのだ。
私が関わってきた組織も含め、多くの組織は、個々のシステムを一つずつ改善することに大きな力を注いできたと思う。CRMプラットフォームはより包括的な顧客像を約束し、アナリティクスはよりよい意思決定を支援した。デジタルチャネルはサービスを迅速化し、品質向上プログラムは一貫性を高めた。
今日、AIはほぼすべての顧客接点を変革すると期待されている。それぞれの投資には意味があり、その多くは実際に価値をもたらした。
それでも顧客は、同じような不満を口にし続けている。情報を何度も説明させられ、話す相手によって異なる回答を受け取り、チャネルを移動するたびに振り出しに戻ったかのように感じるのだ。
問題は必ずしもテクノロジーにあるわけではない。テクノロジーとテクノロジーの「隙間」で起きていることにあるのだと、私は考えている。
顧客が体験するのは「引き継ぎ」である
組織は自然と機能別に編成される。マーケティングには目標があり、営業にはノルマがある。業務部門は効率を重視し、カスタマーサービスは解決率を測定する。ITはすべてを稼働させ続ける。こうした構造は社内では理にかなっているが、顧客には見えない。
顧客はオンラインで調べ、担当者と話し、支店を訪れ、メールを受け取り、AIアシスタントとチャットし、そしてさらに別の従業員とやり取りすることもある。それぞれの接点は、異なるシステム、チーム、業績指標を伴うかもしれない。しかし顧客にとっては、ひとつの会話に過ぎない。
業界として、私たちはあらゆる移行プロセスを重視するよう努めなければならない。なぜなら、すべての引き継ぎは、信頼を築く機会にもなれば、摩擦を生む原因にもなるからだ。
私は、どの部門も指標改善の方法を示せる会議に何度も立ち会ってきた。それでも顧客は一貫性のない体験を訴えていた。誰も間違ったことはしていない。各チームはそれぞれの担当部分を最適化していた。だが顧客は、ジャーニー全体を体験していたのだ。
AIがハードルを引き上げる
今日、AIは組織の運営方法を変えつつある。質問に答え、会話を要約し、ルーティンワークを自動化することで従業員の生産性向上を支援できる。これらは意義ある進歩だ。
しかし、AIにはもう1つ別の作用があると私は考えている。すでに存在するものを加速させるのだ。
顧客に関する重要な情報が組織全体にスムーズに流れていれば、AIは体験をさらに優れたものにできる。しかし、チームがそれぞれ異なる優先事項で動き、情報が分断されている場合、AIはそのギャップを顧客に対してさらに浮き彫りにし、不満を増大させる可能性がある。
テクノロジーが必ずしもこうした問題を生み出しているわけではない。むしろ、問題を露呈させているケースが増えているのだ。
問うに値する3つの質問
経営幹部と顧客体験について話すとき、私はよく、テクノロジーそのものから一歩引いて、いくつかのシンプルな問いを投げかけるよう促している。
・顧客情報は、顧客自身と同じくらい滑らかに社内を移動しているか。
・チャネルや部門を問わず、各やり取りは前のものを踏まえて積み上がっているか。
・何か問題が起きたとき、チームは一緒になって顧客の問題を解決しているか、それとも単に別の誰かに引き渡しているだけか。
答えは通常、リーダーが当初想定するほどテクノロジーとは関係がないものだ。
私の経験では、最大の改善は、個別機能を独立して最適化するのではなく、組織が顧客ジャーニー全体をマッピングし始めたときに生まれる。そこでこそ、最も重大な摩擦が可視化されることが多いのだ。
次なる競争優位
長年、組織はよりよい製品、よりよいプロセス、よりよいシステムを築くことで競争してきた。それらは今も重要だ。
しかし次の競争優位は、より根本的なものから生まれると私は確信している。それは、関わる部門、テクノロジー、人員の数に関わらず、一貫してつながった一つの顧客体験を創出する能力である。
どれほど強調しても足りないが、顧客は組織の内部でどのように業務が行われているかなど気にしていない。顧客が気にしているのは、すべてのやり取りに一貫性があり、自分が解決しようとしている課題に焦点が当てられているかどうかである。
本稿の冒頭で紹介した体験を思い返す。社内では、その銀行は複雑な移行を管理していた。チームは懸命に働き、リーダーは熟慮の上で意思決定し、各部門には正当な優先事項があった。
だが顧客はそのいずれも体験していない。彼女が体験したのは、ひとつの組織だった。
それが、顧客が私たちを評価する基準だ。そしてそれこそが、リーダーが自らを評価すべき基準でもあると、私はますます確信している。



