ジェニファー・マルクー(Jennifer Marcou)は、マイクロソフトやアメリカン・エキスプレスで数十年にわたりリーダーシップを発揮し、最終的にはバイスプレジデントやゼネラルマネージャーを歴任して何百人もの部下を率いてきた。また、これまでに何百人ものビジネスパーソンをコーチングしており、その多くは内向型の人たちだ。彼女の新著『Lead with Quiet Confidence: A Practical Guide to Success for Introverts(静かな自信を持って導く:内向型人間のための実践的成功ガイド)』は、そうした経験から生まれた。しかし、彼女の活動の根底にある大きな問いは、単に内向型人間がどのように成功するかということだけではない。そもそも企業などの組織が、リーダーシップというものを狭く定義しすぎているのではないか、という点だ。
職場ではいまだに、目に見えやすい行動が評価されがちだ。最初に発言する人、エネルギッシュな印象を与える人、積極的に人脈を広げる人、あるいは人目を引く人などがそれにあたる。マルクーは、そうした行動は自信の表れかもしれないが、必ずしもリーダーシップ能力の証明にはならないと主張する。「目立つことはコミュニケーションのスタイルであって、リーダーシップの能力ではありません」と彼女は筆者に語った。この違いは極めて重要だ。なぜなら、存在感の実績をそのままポテンシャルと同一視する企業は、最も優れた思考の持ち主を見過ごしている可能性があるからだ。
「目立つこと」が能力と勘違いされるとき
リーダーシップを評価する仕組みは、目に見える行動を中心に構築されていることが多い。すぐに自発的に手を挙げる、頻繁に発言する、自己アピールをする、そして幅広い人脈を築くといった従業員は、注目を集めやすい。これらの行動自体に何の問題もない。問題が生じるのは、組織がそうした行動を、判断力や影響力、戦略的能力の代替指標として扱い始めるときだ。
マルクーは、目立ちにくいものの、極めて重要な別のリーダーシップ能力を指摘する。それは、確かな判断力、戦略的思考、深い傾聴、そして思慮深い意思決定だ。こうした能力は、リアルタイムで見極めることが難しい。特に、迅速な反応や積極的な参加を重んじる文化においてはなおさらだ。
これによって2つのリスクが生じる。1つ目は明白で、能力のある人材が見過ごされてしまうことだ。2つ目はより見えにくい。上に立つリーダーたちに似ていない従業員が、「自分はリーダーに向いていない」と考え始めてしまうことだ。マルクーはこれを人材パイプラインの問題と捉えている。特定のスタイルのリーダーばかりが昇進する様子を何度も目にすると、キャリアアップの候補として自分を思い描くのをやめてしまう人が出てくるのだ。
彼女の提案は、目立つ行動をなくすことではない。目立つことと、その人の価値を切り離すことだ。内向型の人たちも、自分の貢献を周囲に認識してもらいやすくする工夫は必要かもしれない。しかし、だからといって自分の性格をガラリと変える必要はない。適切なタイミングでの質問、明確に表現された1つのアイデア、あるいは築き上げた新しい関係が1つあるだけで、周囲が捉えるリーダーシップの可能性は大きく変わり得る。行動を少し変えるだけで、リーダーとしてのキャリアの軌道は大きく変化する。
行動を変えることと、アイデンティティを変えることを区別するこの視点は、マルクーの考え方全体に通底している。
内向型の人たちは、「もっと発言しなさい」「もっと目立ちなさい」「先頭に立って引っ張りなさい」と言われることが多い。アドバイスする側に悪気はないかもしれないが、受け取る側にとっては「自分のありのままのスタイルは不十分なのだ」という、心を蝕むメッセージになりかねない。「私たちの多くは外向的になろうと努力してきましたが、それは自分らしくないだけでなく、ひどく消耗する行為です」と彼女は言う。
彼女の考えでは、成長とは、その場で最も大きな声を出す人になることではない。状況が求める必要に応じて、選べる行動の幅を広げることなのだ。「目標は自分を作り直すことではありません。自分の幅を広げることなのです」
この考え方には実践的な意味がある。例えば、マルクーがコーチング事業を立ち上げた際、自分に合わないと感じる電話での新規開拓営業(コールドコール)を無理に行うことはしなかった。その代わり、すでに知っている人たちに連絡を取り、彼らの抱える課題について尋ね、そこから対話を深めてコーチングの仕事につなげていった。彼女は営業活動をしていたことに変わりはないが、自分の強みに合った方法を見つけただけなのだ。人脈作りは「一度に1人ずつ、丁寧に対話すること」にすぎないと彼女は結論づけた。
「最も速い声」を評価することのコスト
目立つことを重視する偏りは、組織の意思決定の場にもよく現れる。会議では、意見を素早くまとめて口にできる人が有利になりがちだ。しかし、スピードと質は同じではない。
「思考の速さと、思考の質は別物です」とマルクーは言う。話しながら考えるタイプの人もいれば、自分の頭の中でじっくり考えてから発言したいタイプの人もいる。職場が即座の反応ばかりを評価すると、深い内省から生まれるアイデアを組織的に切り捨ててしまうことになる。
解決策は、会議のやり方をすべて内向型の人に合わせることではない。より多様な思考のあり方が表面化できる環境を整えることだ。マルクーは、質問や資料を事前に配布すること、考える時間を設けること、重要な意思決定を会議後に再度開くことを提案する。静かな社員の貢献が少ないことに気づいたリーダーは、まず暫定的な反応を求め、その後に追加の考えを促すことができる。「目標は、内向型を外向型より優遇することではありません。双方がそれぞれの持ち味を最大限に発揮できる環境を整えることです」と彼女は語る。
これが特に重要になるのは、自信が能力と混同されるときだ。
組織は「確信効果」とでも呼ぶべき罠に陥りやすい。強く主張されたアイデアは、その伝え方の勢いだけで説得力があるように見えてしまうのだ。マルクーは「最初に耳にしたアイデアや、最も自信に満ちた態度で語られたアイデアが、常に最善とは限りません」と警告する。
よりよいプロセスは、そのバイアスに対抗できる。リーダーは事前にアジェンダを回覧し、割り込みを評価するのではなく体系的に意見を求め、人々が考える時間を持った後の追加の貢献を認めることができる。これらは小さな手続き上の選択だが、誰の知性が組織で活用されるかを左右する。
だからこそマルクーは、この問題を単なるダイバーシティ&インクルージョン(包摂)の観点だけで捉えていない。「リーダーが物静かなメンバーの声に耳を傾けていなければ、チーム全員の知恵を引き出せていないことになります。それは単にインクルージョンの問題にとどまらず、意思決定の質そのものの問題なのです」
この捉え直しは極めて重要だ。物静かな人たちのための居場所を作ることは、単なる公平さの配慮ではない。組織のパフォーマンスを高めるための規律なのだ。例えば、議論を始める前に各自がアイデアを書き出すブレインストーミングを行えば、反応の早い参加者が意見を述べる前に、他のメンバーが考える時間を確保でき、議論の方向性が一部の人に引っ張られるのを防ぐことができる。目的は、単に平等に話す時間を与えることそれ自体ではなく、より優れた情報を集めることにある。
エグゼクティブ・プレゼンスを再考する
スタイル(見かけ)と実質(中身)の混同を最もよく表しているのが「エグゼクティブ・プレゼンス(役員にふさわしい存在感)」という言葉だ。これは、カリスマ性のある人が持つ、目に見えない特別な資質のように扱われがちだ。
マルクーはこの解釈を否定する。
「エグゼクティブ・プレゼンスとは、信頼と信用を築くことであって、人目を引くことではありません」と彼女は言う。明確なコミュニケーション、約束の実行、落ち着き、そして信念を示すことで、誰もが存在感を築くことができる。「カリスマ的であることは任意です。信頼を喚起することは任意ではありません」
そう考えれば、存在感は誰かが生まれ持っているか欠いているかという性格的特徴ではなく、練習して身につけられるものになる。また、目立つことの役割も変わる。マルクー自身、ゼネラルマネージャーの昇進を逃した経験から、この教訓を身をもって学んだ。多くの内向型人間と同様に、彼女も「優れた成果を出していれば、言葉にしなくても伝わるはずだ」と思い込んでいた。しかし、誰もその存在を知らなければ、仕事そのものが声を届けることはできないと気づいた。
「目立つことは自己アピール(エゴ)ではありません。コミュニケーションなのです」と彼女は語る。
彼女は、自身のビジネスユニットの女性リソースグループで取り組んできた活動を、より広い全社的なリーダーシップ・イニシアチブと共有し始めた。これにより、彼女のチームが開発したアイデア、実績、実践方法が多くの人に伝わるようになった。また、これまで彼女のリーダーシップを目にする機会がなかった人々(将来のゼネラルマネージャー候補を評価するシニアエグゼクティブを含む)にも、彼女の存在が知られるようになった。
この教訓は、執拗に自己宣伝をする人間になれということではない。どんなに有益な仕事であっても、見えないままでは組織への影響力が限られてしまうと理解することだ。
リーダーシップを測る大きな尺度
マルクーは最終的に、この「静かな自信」を、より本質的な問いに結びつけている。「成功したキャリアは何のためにあるのか」という問いだ。
彼女自身、ある時点で「実績」や「人からの尊敬」が個人としての価値観の最上位から外れ、代わりに「成長」や「畏敬の念」が位置を占めるようになったと語る。彼女の心の中の問いは、「どこまで出世の階段を登れるか」から、「どれだけ多くの人の成長を助けられるか」へと変わっていった。
このパラダイムシフトによって、評価の基準が変わる。5人の部下を育てて昇進させたリーダーは、新たな役職を手に入れたリーダーと同じくらい、永続的な価値を生み出したと言える。意欲的で高いパフォーマンスを発揮するチームを築いたマネージャーは、ただ単に管理範囲を広げただけの人よりも、はるかに大きな影響力を持つリーダーシップを示しているのかもしれない。
このことのもたらす意味は、内向型の人たちだけにとどまらない。組織は、自らが「評価する」と決めたリーダーシップを手に入れることになる。声の大きさ、スピード、目立つことばかりを評価していれば、目立つのが得意な人ばかりが登用され続ける。もし、判断力、傾聴力、思慮深さ、信頼構築、そして貢献度を評価するようになれば、より多様なリーダーシップの才能が開花する。
マルクーが言うように、「成功とは、自分が何を手に入れたかではなく、自分がどのような人になりつつあるか、そしてその過程で周囲の人が成長するのをどれだけ手助けできているか、ということなのです」
これこそが、「静かな自信」の最も価値ある定義かもしれない。それは「声を持たないリーダーシップ」ではなく、「自らの声が最も大きくなくても、十分に価値があるのだと知っているリーダーシップ」のことなのだ。



