CEOは企業の価値観を定義できる。それをウェブサイトに掲げ、入社時研修で語り、社内会議で繰り返すこともできる。しかし、だからといって社員がその価値観の実践を目にするとは限らない。
人は、日々起こる出来事を見て、その会社が何を大切にしているかを学ぶ。リーダーがどんな行動を評価するか、何か問題が起きたときにマネージャーがどう対応するか、意思決定にどれだけ裁量が与えられているかに目を向けているのだ。
自らリーダーを務め、また他のリーダーが強固な組織を築く様子を研究してきたなかで、私は文化とは意思決定の場で明らかになるものだと学んだ。組織が「信頼」「責任感」「成長」を重視すると謳っていても、社員はミスをしたとき、決定に異議を唱えたとき、より大きな責任を求めたときに、その価値観が本当は何を意味するのかを知るのである。
1. 自ら基準を体現して企業文化を築く
リーダーは、就業規則に明記されるずっと前から、自らの行動を通じて期待値を設定している。
私の知人のスティーブン・ニグロは、TAG Financial Institutions Groupの創設者であり、組織の誰にとっても明確な独自の哲学を持っている。
彼の哲学は、明確な道徳的・倫理的基盤を築き、それを貫くことから始まる。そして、教育、信頼、責任、共感、そして失敗から学ぶ自由を人々に与えることへと広がっていく。
社員はリーダーの発言と行動の食い違いに気づく。敬意を語りながら、業績の高い社員の無礼な振る舞いを容認するCEOは、ある基準を発信していることになる。社員に主体性を求めると言いながら、あらゆる決定を事後に疑うCEOも同じだ。
価値観がどれほど機能しているかを見極める方法のひとつは、物事がうまくいかなかったときに何が起こるかを観察することである。たとえば、責任感を例に取ろう。誰かが締切を守れなかった。次に何が起きるか。マネージャーは何が問題だったか尋ねるか。社員はそれを修正する機会を得られるか。こうした日常的な場面こそが、会社における責任感の意味を示す。もし会社が成長を重視するなら、指導やコーチングにどれだけ時間を割くか。経営幹部にも同じ基準が課されているか。
どの基準が本当に重要なのか、社員が推測しなくてよい状態になるほど、企業文化の信頼性は高まる。
2. 社員のオーナーシップを通じて企業文化を強化する
リーダーが意思決定の余地を与えたとき、社員は自らの仕事に責任を持とうとする。
アマゾンのCEOアンディ・ジャシーは、目の前の職務にとどまらないオーナーシップの重要性を強調してきた。アマゾンでは社員が事業全体を考え、問題を見つければ責任を持って解決策を探すよう奨励されている。たとえ上位の人物と意見が食い違っても声を上げることが、その文化の一部となっている。
CEOは、自社でどのように意思決定がなされているかを見直すことで、こうしたオーナーシップの感覚を育てることができる。もし日常的な意思決定が常に上層部へ承認を求めて上がっていくなら、社員は仕事の責任を負いながら、それに対する権限をほとんど持たないことになる。
社員により大きな権限を与えることは、職務やチームを越えた連携を促進する。特に、狭い責任範囲を超えて貢献する自由がある場合に有効だ。
文脈も重要である。社員が「やるべきこと」しか知らなければ、状況が変わったときに立ち止まってしまう。事業が何を達成しようとしているのか、なぜその目標があるのかを理解していなければ、意思決定にオーナーシップを持つことは難しい。
社員があらゆる戦略判断に関与する必要はない。しかし、会社がどこへ向かっているのか、なぜその優先順位があるのかを理解していなければ、自分の仕事に責任を持つことはできない。そこで必要なのが、効果的なコミュニケーションである。CEOは社員が意思決定し、問題を解決し、仕事を前進させるための文脈を与える必要がある。
そして、あとは手を引くことだ。この戦略がマイクロマネジメントよりはるかに効果的に機能することを、私は実際に目にしてきた。
顧客からの依頼、プロジェクトの変更、予期せぬ問題のすべてにマネージャーの承認が必要なら、社員は本当の意味で意思決定をしていない。許可を待っているだけである。
CEOは、権限を与えた後に何が起こるかにも注意を払うべきだ。あらゆる選択が疑問視され、覆されるなら、社員は意思決定をしなくなる。オーナーシップを与えるということは、その人が自分とは異なるやり方で仕事に取り組むかもしれないと受け入れることを意味する。
仕事が定期的に滞る場所に目を向けるのも有益である。マネージャーが日常的な顧客対応をいちいち承認している。社員は良いアイデアを持っているのに、それを試す権限がない。そうしたなかから、現場に近づけてよいリスクの低い意思決定をいくつか選び出すのだ。社員に明確な境界を示し、判断を任せよう。
3. ミスを認められる企業文化をつくる
自由が増えれば、社員が時に誤った判断をすることもある。その後に社員がどのような行動をとるかに対して、CEOは大きな影響力を持っている。
フォードの元CEOアラン・ムラーリーは、同社の再建期にこの問題に直面した。フォードの経営幹部は、会社が苦境にあっても、幹部会議で問題を提起することに躊躇していた。ある幹部がついに深刻な問題を切り出したとき、ムラーリーはその率直さを歓迎し、議論を解決へと導いた。
社員は、誰かが「間違った」と認めたときに何が起こるかに注目している。もし返ってくる反応が非難や恥辱なら、次の人が進んで手を挙げるだろうか。彼らは待ってしまうかもしれない。そして待っている間に、月曜日には対処可能だった問題が、金曜日にはまったく違う様相を呈していることもある。
その代わり、リーダーに勧めたいより良い戦略は、ミスを社員の学びの機会として活用することだ。CEOは、いくつかの率直な問いによって、こうした会話をより生産的にできる。何が起きたのか。そのとき社員はどんな情報を持っていたか。いまならどう違う行動を取るか。リーダーは、自らの意思決定についても、こうした問いに答える覚悟を持つべきである。
とはいえ、責任を問うべき場面もある。合理的な判断の結果が悪かった場合と、既知の問題を無視したり、会社の基準を繰り返し無視したりする場合は別物だ。社員はその線引きを理解しておく必要がある。
ミスが弱点のあるプロセスを露呈させたなら、そのプロセスを修正すればよい。必要な情報や研修が欠けていたなら、そのギャップを埋める。そして社員が問題を早期に発見したときには、適切であればその人を解決策の検討に関わらせることだ。
社員はこうした経験を通じて企業文化を学ぶ。誰が信頼されるのか、リーダーは悪いニュースにどう反応するのか、幹部は他の全員に求める基準を自ら守っているのかを見ているのだ。
私の経験からすれば、価値観は紙に書くのは簡単だ。しかし、それを信じるかどうかを最終的に決めるのは社員であり、彼らはリーダーの実際の行動を見て判断している。



