ロシア中部シベリアにあるペスト対策研究所で28歳の女性研究員が死亡したことを受け、歴史上最も恐れられてきた感染症の1つである「肺ペスト」に対する懸念が高まっている。
この件を巡っては現在も調査が進められているが、ロシア当局は、同研究員が原因不明の重度の肺炎を発症して死亡したと報告した。他方で、同研究員の業務に関連する微生物が発症の原因であることを示す証拠は見つからなかったとしている。この事態を受け、予防措置として200人が医学的観察下に置かれている。
一方、英ロイター通信の報道によると、ソーシャルメディア(SNS)上では、同研究員がペストの原因菌であるペスト菌に感染した可能性があるとのうわさや情報が流れている。現時点では、肺ペストの集団感染や、同研究員の死亡にペストが関連していたという証拠はないものの、今回の事例は肺ペストが他の感染症とどう異なるのかを改めて認識させるものとなった。
肺ペストとは
肺ペストは、細菌によって引き起こされる3つのペストの形態のうちの1つだ。この型のペストは、肺炎を引き起こす肺内の感染症を指す。多くの場合、ノミやげっ歯類にかまれることで人間に感染するが、肺ペストのように感染が肺に及んだ場合、咳やくしゃみによる飛沫(ひまつ)を介して人から人へと感染が広がる恐れがある。
肺ペストの症状
肺ペストの潜伏期間は通常1~7日だが、感染から数時間後に症状が現れる場合もある。症状は他の呼吸器感染症と似ており、頭痛、発熱、悪寒、胸痛、咳、息切れなどが見られる。肺ペストの場合、血痰や水様性の痰が現れることもある。治療せずに放置すると必ず死に至る。
肺ペストは治療できるのか?
何世紀も前の時代とは異なり、現代の医療では、ペストは抗生物質で容易に治療することができる。米国では疾病対策センター(CDC)が、ゲンタマイシンまたはフルオロキノロン系抗菌薬を10~14日間投与する治療を推奨している。また、濃厚接触者についても、暴露の状況に応じて通常7日間、予防的に抗生物質が投与されることがある。



