ほとんどのウェブサイトは、一晩にして使い物にならなくなるわけではない。それは徐々に起こる。簡単な更新にも開発者が必要になり、新しいキャンペーンにはカスタムテンプレートが必要になる。そして、ウェブサイトの設計段階では想定していなかった問題を解決するために、さらなる回避策(ワークアラウンド)が追加されていく。
やがて、その摩擦は人々の行動を変え始める。マーケターが新しいランディングページの作成を検討する際、「わざわざウェブサイトをいじるだけの価値があるだろうか」と考えてしまう。テストは後回しにされ、来週にも開始できたはずのキャンペーンが、1カ月がかりのプロジェクトになってしまう。
その時点で、時代遅れのインフラは単なる技術的問題ではなくなる。マーケティングチームがどの機会を追求しようとするかに影響し得る、目に見えない障壁を生み出すのだ。
隠れた「ウェブサイト税」
組織が犯しがちな過ちとして私がよく目にするのは、ウェブサイトのインフラを「まだ機能しているか」どうかだけで評価してしまうことだ。しかし、本当のコストはホスティング、保守、開発に限られない。スピード、実験、機会にもコストがかかっている。
時間がたつにつれ、組織は「ウェブサイト税」を払い始めることがある。事業のニーズに合わなくなったインフラを回避しながら作業することで積み上がるコストである。
この「税金」がどこに隠れているか、見直すべき6つのポイントを以下に紹介する。
1. マーケティングのスピード:チームはどれだけ速く市場に投入できるか
マーケティングチームに、ランディングページの公開、サービスページの再構成、キャンペーンの立ち上げを依頼してみてほしい。彼らは自分たちだけでどれだけのことができるだろうか。
ランディングページを1枚作成するだけで、マーケティング部門が開発者にオリエンをし、ページが構築されるのを待ち、さらに修正を重ねてからようやく公開にこぎつける、という組織を見てきた。本来ならマーケティングのタスクであるべきことが、開発プロジェクトになってしまっていたのだ。
隠れたコストは、開発者の時間だけではない。機会を見つけてから、それを市場に出すまでの距離である。
2. 開発コスト:保守しているのか、改善しているのか
古いウェブサイトには技術的負債が蓄積しがちだ。テンプレートは改修され、プラグインが追加され、連携はつぎはぎされ、開発者は回避策を作る。そこで重要になるのが、保守と改善の違いである。保守はシステムを稼働させ続けることだ。ウェブサイトの改善は、顧客と事業にとってより有用なものにすることである。
開発予算のかなりの部分が制約を回避するために使われているなら、そのリソースは成長に投資されていない。
3. 創造性とガバナンス:CMSは一貫性を犠牲にせず自由を提供しているか
コンテンツ管理システム(CMS)は、マーケターが新しいデジタル体験をつくるための柔軟性を提供すべきである。ただし、柔軟性にはガードレールが必要だ。すべての編集者に完全な管理権限を与えれば、ページはブランドから逸脱し得る。すべてを厳格に固定すれば、マーケターは新しいことを試すたびに開発者を必要とする。
私の戦略エージェンシーでは、この課題に何度も直面してきた。それを受けて、私たちは制御された柔軟性という考え方に基づくカスタムCMSを開発した。再利用可能なコンポーネントと組み込み標準によって、マーケティングチームに大きな創造的裁量を与えながら、ブランドの一貫性を守る仕組みである。
目標は無制限のカスタマイズではない。チームが必要とするところに自由を与え、一貫性が重要なところにガードレールを設けることだ。
4. パフォーマンスと検索:インフラが成果を制限していないか
時代遅れのコード、過剰なプラグイン、実装が不十分なサードパーティー技術は、ウェブサイトを遅くし、最適化を難しくする。これは従来型検索とAI搭載検索におけるパフォーマンス向上の取り組みを妨げかねない。Google、ChatGPT、その他のAI検索体験全体で可視性を高めるには、権威あるコンテンツを公開し、情報を明確に構造化し、技術面とコンテンツ面の変更を迅速に行うことが、ますます求められている。
マーケティングチームが優れたSEOとAI検索戦略を持っていても、CMSが構造化データ、内部リンク、コンテンツ更新、技術的改善を難しくしていれば、実行に苦労する。その場合、インフラはマーケティング上の問題の一部になる。
5. 連携とデータ:体験を進化させることはどれほど難しいか
現代のウェブサイトは、CRM、分析プラットフォーム、顧客ポータル、製品データベース、その他の業務システムと連携することが増えている。古いアーキテクチャは、新しい接続のたびに複雑さを増すことがある。
私たちは、ウェブサイトの進化がますます難しくなっていた医療テクノロジー企業で、まさにこの問題に直面した。基盤となる構造が、顧客ジャーニーの改善、新機能の導入、マーケティング部門へのより大きな管理権限の付与を制限していた。より柔軟な基盤の上に再構築することで、顧客が接する体験と、マーケティング部門が裏側で実現できることの双方を改善できた。
6. 拡張性:ウェブサイトは次に来るものを支えられるか
おそらく最も見過ごされているコストは、機会費用である。CMSは現在のウェブサイトを支えられるかもしれない。だが、組織が向かう先を支えられるだろうか。
買収、新製品、新市場、パーソナライズされた体験が、自動的に大規模な開発プロジェクトになるべきではない。新しい機会のたびに別の回避策が必要になるなら、ウェブサイト基盤は単なる技術的制約ではなく、戦略上の制約になっている。
現状維持はいつ、より高くつくのか
古くなったウェブサイトのすべてを置き換える必要があるわけではない。重要なのは、置き換えにかかる費用だけでなく、現在の環境の総コストを評価することだ。
デジタルマーケティング監査は、インフラがより広範なパフォーマンス課題の一因になっているかどうかを明らかにするのに役立つ。マーケティングのスピード、開発要件、ブランドガバナンス、パフォーマンス、そしてアーキテクチャが事業の向かう先を支えられるかを確認すべきだ。
最も重要なのは、ウェブサイト上で実行するのが難しすぎると感じるために、チームが良いアイデアを避け始めていないかを問うことである。それこそが、最も明確な警告サインかもしれない。
結論:目に見えない障壁を取り除く
ウェブサイト基盤の近代化は、最新技術を追いかけることではない。マーケティングチームに、機会を追求し、実験し、アイデアから市場投入までをより少ない摩擦で進める力を与えることだ。
時代遅れのウェブサイトの最大のコストは、必ずしも維持に費やしている金額ではないからだ。時には、ウェブサイトのせいで追求するのが難しすぎると判断し、結局追求しなかった機会こそが最大のコストなのである。



