「AIのことなら……サテライトオフィス!」——タレントの篠崎愛が両手で「S」の形をつくり、左手の人差し指を高々と掲げながら発する姿が印象的なこのCMは、一度見たら忘れられないインパクトがある。
クラウドサービスやAIサービスを提供するサテライトオフィスは、5年前からこうしたコーポレートブランドの広告に力を入れてきたが、リーチに課題が見えてきた。
そこで同社が次なる一手として選んだのが、Amazonが展開するPrime Video広告だ。サテライトオフィス代表取締役社長の原口豊、広告出稿を支援したGMO NIKKO代表取締役社長執行役員の佐久間勇、Amazon Adsパートナー事業本部長の金子泰典が、新たなBtoB広告戦略について語り合った。
メディアの多様化で広告は飽和状態
金子泰典(以下、金子):サテライトオフィスさんは、篠崎愛さんを起用したCMが非常に印象的です。
原口豊(以下、原口):クラウドサービスやAIサービスを提供する私たちは、5年ほど前からコーポレートブランドの広告に力を入れてきました。もともとは小さなスタートアップですから、営業先で「サテライトオフィスを知っているか、知らないか」で、その後の展開が大きく変わります。テレビCMなどでまず社名を知ってもらう。そうすることで、営業の入り口が変わるのです。個別のサービスを売るためではなく、まず「サテライトオフィス」という会社そのものを知ってもらうことを重視してきました。
佐久間勇(以下、佐久間):当社とサテライトオフィスさんは、2022年からお取り引きさせていただいており、タクシーやエレベーター広告といったDOOH(デジタル屋外広告)領域のマーケティング支援を行ってきました。
BtoB企業の場合、最初から申し込みの獲得を重視しがちで、デジタル広告ですぐに成果が出なければ、そこで施策をやめてしまう。でも原口さんは営業活動と広告をセットで捉えて、信頼感や知名度といったラストワンマイルを重視されている。そうした考えがサテライトオフィスさんの成長にもつながっているのではないかと思っています。
金子:BtoB企業であっても、最終的にサービスを選ぶのは個人です。その人が意思決定をする段階で、「この会社を知っている」「このサービスを聞いたことがある」という状態をつくっておくことは非常に重要です。
原口:テレビやタクシー、エレベーター、コンビニ、電車など、さまざまなメディアで毎年展開していくなかで、別の課題も見えてきました。最初の年は「見たよ」という反響がたくさんあったのに、翌年になると、同じ予算をかけても「見て当たり前」という反応になってしまう。認知が広がる一方で、新しい層に届けることには限界を感じていました。
佐久間:この現象を分析すると、3つの構造的課題に行き着きます。1つは、既存メディアを重ねても同一層への重複接触が増えるだけで、純増リーチが伸びない「リーチの重複」。2つ目は、従来メディアの視聴者層が固定化し、新規層への到達が限界を迎える「新規層への到達限界」。3つ目は、追加投資に対して得られる追加リーチ(インクリメンタルリーチ)が縮小していく「投資効率の逓減」です。
金子:昨今はメディアの細分化が進み、本当に届けたい相手にメッセージが届いているのかが大きな課題になっています。さらにテレビ離れが進むなかで、従来メディアだけではリーチできない層が増えているのも現実です。単なる接触の「量」ではなく、質の高い「クオリファイドリーチ」をいかに確保するかが求められています。
佐久間:そうした課題を考えているときにもち上がったのがAmazonのPrime Video広告です。Prime Video広告の販売を拡大するにあたってAmazon Adsさんとの協業を本格化する話が出ていたタイミングで、サテライトオフィスさんに合うのではないかと考え、すぐにご提案させていただきました。
原口:Prime Video広告が始まったことは知っていたので、話を聞いたときは、「ついに来たか!」という感じでした(笑)。
金子:Prime Video広告の特徴は、主に3つあります。1つ目は、リーチ規模です。Prime Videoは日本国内幅広い視聴者に利用されているサービスです。リビングのテレビでしっかり見られるメディアで、なおかつ広告の視聴完了率も一つの特徴です。CMをスキップできない設定になっているので、目に留まりやすいのです。それに視聴者の多くがプライム会員であり、購買力があることも強みです。そして2つ目は、インクリメンタルリーチが期待できる点です。Prime Video広告は、テレビ離れといわれている若年層をはじめ、TVCMだけでは届かない視聴者に大画面のCTV環境で到達できます。また、Amazonのログインベースのインサイト活用により、TVCMと重複しない「純増リーチ(インクリメンタルリーチ)」を定量的に可視化できる点も強みです。
佐久間:プライムの会員規模自体も非常に魅力的ですが、それと合わせてオーディエンスの特性として、他のメディアとの重複が少ない。つまり、効果的に新規層にリーチできることも魅力です。テレビ離れが進むなか、いわゆるコードカッター(ケーブルテレビを解約した層)やコードネバー(一度も有料テレビを契約したことがない層)へのリーチが期待できる点も、既存のテレビ・交通広告では届きにくかった「未到達層」を純増で獲得できるという意味で重要です。
金子:3つ目は、新しいメディアだからこそ得られる先行者優位です。本格始動したばかりの新しい広告枠であるため、広告受容度が高い状態で高い質の接触を生み出すことができます。
原口:この“スピード感”については、苦い経験があります。2022年末にChatGPTが登場すると、多くのスタートアップがそれに関連したサービスを提供し始めましたが、当社は、その動きから半年ほど遅れてしまいました。1年遅れると、取り返しがつかないぐらいのハンディキャップになる。その反省があったからこそ、Prime Video広告にも早いタイミングで出稿したかったのです。
メディアポートフォリオの最適化で新たなリーチを獲得
金子:動画広告の効果測定は従来難しいとされてきましたが、Prime Video広告ではAmazonのサービス上で得られるさまざまな情報を手がかりに、広告の効果を詳しく分析できます。具体的には、「Amazon Brand Lift Study」によって、広告接触の有無によるブランド認知・意向の変化を調査することができます。また、「Amazon Marketing Cloud(AMC)」によって、広告接触から購買までのオーディエンスの行動を分析することも可能です。
佐久間:そこは、私たちが非常に魅力を感じているところです。「テレビCMのようなスケール感」と「デジタル広告特有の計測精度の高さ」を両立できることは、クライアントへの提案における新たな武器になります。
原口:今回のPrime Video広告への出稿では、先行者メリットも意識し、まずは規模を取りに行くことを優先しました。そのため、オーディエンスを細かく絞り込むのではなく、広くリーチすることを重視しましたが、来年からはしっかりオーディエンスを絞って調査し、指標化して、他媒体との差別化を図りながら集中的に広告投資していきたいと思っています。
佐久間:今後はAMCを活用し、単なるデモグラフィック分析にとどまらない行動シグナルに基づくペルソナ分析を行うことで、サテライトオフィスさんにとって有効なオーディエンスの傾向を深く掘り下げていきます。
プライム会員のこの規模感は、既存メディアの補完レベルではなく、大きなリーチを取りに行く戦略、ポートフォリオのなかでもいちばん大きな柱のひとつです。オーディエンスにしっかりリーチしながらPrime Video広告のポテンシャルを最大限活用していくのが、今後の大きなミッションです。サテライトオフィスさんが実現されたいブランド像やサービスの認知に対して、高速にPDCAを回しながらご支援していきたいと考えています。
原口:当社は軸足をクラウドからAIへと移すにあたって、CMもAIを打ち出したものに一部差し替えてきました。篠崎愛さんのお名前のスペルが同じなので、テロップを“篠崎AI”と表示したCMは好評です。当社は最先端をキャッチアップすることを強みとしているので、これからも扱う技術は変わっていくでしょう。広告についても同じで、技術や市場に合わせてやり方を変えていく必要があります。だからこそ、新しいものが出てきたら、まず試してみることが重要だと思っています。
金子:Prime Videoは、まだ始まったばかりのサービスだからこそ、これから新しいユースケースを生み出し、広告媒体としての価値をさらに高めていきたいと考えています。Amazon Adsというと、Amazonで商品を販売する企業向けというイメージがあるかもしれませんが、サテライトオフィスさんのようなSaaS企業にも活用いただけます。幅広い接点を持つPrime Videoをメディアポートフォリオに加えることで、これまでとは異なる層へのリーチや、広告戦略の可能性を広げていただければと思います。
Amazon Ads
https://advertising.amazon.com/
はらぐち・ゆたか◎サテライトオフィス代表取締役社長。1990年、東京理科大学工学部経営工学科を卒業後、山一證券入社。97年の山一證券の自主廃業により、起業を決意。98年にベイテックシステムズを設立。クラウドコンピューティング時代を予見し、2011年には社名をサテライトオフィスに変更。「仕事のストレスは仕事で発散する」ほどの仕事好き。
さくま・いさむ◎GMO NIKKO代表取締役社長執行役員 兼 GMOコマース副社長執行役員。リクルート系求人広告事業を展開するサンプランニングに在籍中、2009年にGMOインターネットグループにグループジョイン。12年にGMO NIKKOに異動。広告事業本部本部長、専務取締役、代表取締役社長などを経て23年3月より現職。25年1月よりGMOインターネット執行役員、26年10月よりGMOコマース副社長執行役員を兼務。デジタル広告とマーケティングが専門。
かねこ・やすのり◎Amazon Adsパートナー事業本部長。日本・オーストラリア統括。金融機関やコンサルティングファームなどに勤務し、東京やシンガポールで、経営企画業務および大企業向けの成長支援業務を主導。2019年にAmazon Japan入社。24年1月より現職。東京を拠点に、日本全域および越境広告を行う独立系広告代理店、テックパートナーとの関係強化を通じて、日本におけるAmazonの広告事業のビジネス拡大に従事する。



