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サイエンス

2026.10.07 15:00

ギリシャで羊41万頭殺処分、輸出産業フェタチーズを襲う「羊痘ウイルス」の猛威

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「中世欧州の羊の伝染病」を今に伝える古書

今回発表された研究論文は、先述したデイリー氏と、博士課程研究者であるルイ・ロトをはじめとする計36人の共同研究者により執筆された。

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研究では、1万4000年以上にわたる時期を対象に、ユーラシア地域で採取した754件のサンプルを分析し、22例の古い羊痘のゲノムを復元した。このうち17例は、中世の「羊皮紙」に由来するものだった。具体的には、8世紀初頭から14世紀のあいだに作製された書籍や書類で、今の英国の一部にあたるブリテン島のほか、ライン川上流地方、オーストリアやフランスのものだ。

前述したヨーク福音書では、3葉から羊痘のDNAが見つかった。これに加えて、西暦800年前後にカンタベリーで編まれたとされるラテン語辞書「コーパス語彙集」(ケンブリッジ大学所蔵)、西暦700年頃に制作された『パウロ書簡』写本、13世紀フランスの修道士ヴァンサン・ド・ボーヴェが編纂した「中世最大の百科事典」の一部である「歴史の鏡(Speculum historiale)」の写本からも、遺伝子が見つかった。なお、最後の事例の写本は、歴史的に「ヴィンランド地図」との関連で名高い一冊だ(15世紀ごろに作られたとされる、北アメリカ大陸の一部が描かれている地図だが、後年の捏造とされている)。 

さらにこの論文によると、西暦700年ごろにノーサンブリア王国(現イングランド)のウェアマウス・ジャロー修道院で作られたとされる「アミアティヌス写本」で使われている羊皮紙には、羊痘や人間の天然痘などが含まれるポックスウイルスの仲間による感染症に似た病変とおぼしき跡が見つかったが、ウイルスのDNAは回収できなかったという(なお、この写本は、全巻が現存するラテン語聖書としては最古のものだ)。

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ただし、論文に記載されているDNAが回収された事例の数字は、実際に病気の痕跡が見つかった割合と比較すると、かなり小さいものだ。筆者が直接デイリー氏に聞いたところによると、研究チームは合計で約80の羊皮紙をスキャンし、そのうち32で羊痘の痕跡が見つかったという。つまり、彼らが検証した中世の本の5つに2つには、家畜伝染病の痕跡があったということだ。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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