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サイエンス

2026.10.07 15:00

ギリシャで羊41万頭殺処分、輸出産業フェタチーズを襲う「羊痘ウイルス」の猛威

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羊痘ウイルスの系統分析

現在ギリシャを中心にバルカン半島に広まっているものも含めて、現存する羊痘ウイルスの系統の変異はすべて、今から330年ほど前ごろに始まったことがわかっている。

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アイルランド、ダブリン大学のケヴィン・デイリー博士によると、バルカン半島で現在流行している株は、この「330年の歴史を持つ系統」に属するものであり、現代の系統における変異の中で「A1クレード(分岐群)」に入ると言う。このウイルスが、1世紀にわたってそれまで感染がなかった集団にウイルスを広めているのだ。

なお、バルカン半島で現在流行している羊痘ウイルスは、中世の欧州で流行していたウイルスとは別の系統に属している。そして、中世欧州に存在していた羊痘ウイルスは、すでにこの世に存在しない。

中世に欧州に広がっていた系統は、先述した「20世紀初頭におけるフランスでの撲滅」以前にほとんど消えていたことがわかっている。その理由については、現代の系統に属する株によって置き換えられたのか、あるいは、何らかの撲滅作戦によって断絶したのか、いまだに決着がついていない。論争に終止符を打つために必要な、空白の500年間のゲノムをまだ誰も分析できていないからだ。

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しかし研究者たちは、さまざまな手段を使って、歴史上の羊痘ウイルスの遺伝子分析を行おうとしている。以下では、そうした研究について紹介していこう。

古い聖書からDNAを採取する

2017年、ある研究チームが、古い「ヨーク福音書」の各ページに、柔らかいプラスチック消しゴムをこすりつけてサンプル採取を行なった。

この福音書は、英国南東部にある街カンタベリーで、西暦1000年頃につくられたものだ。キリスト教の主要な4つの福音書をラテン語で綴った写本であり、現在も、ヨーク大聖堂に主教が就任した際の宣誓式で使用されている。

研究チームは、消しゴムくずに含まれていた遺伝子を解析し、この本の原材料として使われている動物を特定しようとした。「eZooMS」と呼ばれるこの手法は、本そのものを切り刻むことなく、当時の写本に使われた動物の皮に含まれている皮膚細胞から、コラーゲンとDNAを収集するやり方だ。

それから10年近くが経って、これらの保存されていた試料が再び分析された。すると、羊皮紙のページのうち3葉から、羊痘ウイルスのDNAが見つかった。

興味深いのは、ヨーク福音書に使われていた「羊皮紙」は仔牛の皮であり、羊の皮ではない点だ(日本語では「羊皮紙」と言うが、もともと山羊や仔牛の皮も使われる)。これまで羊痘に関しては、家畜の牛が自然宿主となった例は記録されていない。しかし、この福音書のページに使われている皮には、確かに羊痘ウイルスのDNAが存在していた。このDNAは、福音書が作られた時代である中世の仔牛が直接接触したはずがないものだった。

2026年9月に『Science Advances』に掲載された研究論文によると、見つかった病原体の系統は、少なくとも3700年前にまでさかのぼることが可能だ。これは、かつて欧州固有の羊痘の系統が存在したことを示すものだという。

ただしこの系統は、現在までに絶えている。冒頭で述べたように、現在南欧ではギリシャを中心に羊痘が拡大しており、数十万頭の羊や山羊の殺処分を強いられているが、その原因となっているウイルスは、古い聖書で見つかったウイルスとは別の系統に属している。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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