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政治

2026.10.09 08:15

政策より政局重視? 李在明はなぜウクライナに厳しくあたるのか

Vadym - stock.adobe.com

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韓国とウクライナの対立が表面化している。きっかけは、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の国連総会での演説だった。ゼレンスキー氏は、ウクライナの捕虜となっていた北朝鮮兵士2人を韓国に移送したと明らかにした。これに対し、韓国は「移送を非公開とする合意に違反した」と強く反発した。

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韓国政府は、非公開とすることは、「北朝鮮兵を韓国に移送すれば、ロシアの捕虜となったウクライナ兵との交換機会を失ったとして、ウクライナ国内で批判を受ける恐れがある」として、ウクライナ側が最初に提案したと主張した。韓国側も、移送を公表すれば北朝鮮に残る捕虜の家族の安全が脅かされかねないなどとして、非公開にすることで合意したと説明した。

これに対し、ウクライナ大統領府関係者は「非公開にする合意」の存在を否定した。ウクライナ側は韓国側の謝罪要求にも応じていない。李在明大統領は、ウクライナ側が「相手国の国家元首をうそつきに仕立て上げた」と反発し、合意の事実を認めて公に謝罪しなければ「追加措置を講じる」と警告した。韓国内では、韓国政府が2026年7月に表明した1億ドル規模の包括的支援について、見直しの可能性を指摘する声も出ている。ウクライナが要請していた韓国保有のパトリオット地対空ミサイルの供与も、さらに難しくなった。

烈火のごとく怒った李在明政権に対し、韓国内でも保守系メディアを中心に「怒りすぎでは」という指摘が出ている。戦略的に見て、ウクライナを窮地に追い込むことは、自由主義陣営の結束を乱すだけでなく、ロシアを支援している北朝鮮を喜ばせる結果にもなるからだ。

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一方、李在明氏は、南北軍事境界線近くで最近起きた地雷爆発による韓国軍兵士3人の負傷について「不幸な出来事」と語った。国連軍司令部は、軍事境界線の韓国側で北朝鮮製の対人地雷1発を発見し、休戦協定違反があったと判断した。韓国軍は、兵士らが北朝鮮軍の地雷で負傷したと断定している。韓国内などでは「もっと厳しく北朝鮮を非難すべきではないのか」という批判の声が起きている。なぜ、ウクライナに厳しくあたる李在明氏が、北朝鮮には融和的な姿勢を示すのか。

韓国政界筋の1人は「李在明は頭の良い男だ。南北対話が難しいことくらい十分わかっている。北朝鮮に未練があるから、甘い顔をしているわけではない」と語る。背景にあるのは「政策ではなく、政局」だという。同筋は「すべて、与党(共に民主党)内の李在明に反発する主流派を抑え込むのが目的だ」と語る。

共に民主党では従来、全羅道を主要な支持基盤とし、学生運動を経験した政治家を多く含む伝統的な進歩(革新)勢力が党内で大きな影響力を持ってきた。これに対し、学生運動を経験せず、慶尚北道出身の李在明氏は、かつて党内の「非主流派」とみられていた。公認権を握る党代表として臨んだ2024年総選挙では、李氏と距離のある現職議員らが相次いで公認から外れたが、党内には今も李氏の路線に反発する勢力が残る。2026年8月の党代表選では李氏に近い金民錫前首相が勝利したものの、閣僚人事の混乱や検察改革を巡る対立などを背景に、党内の亀裂は解消していない。

この政界筋は「李在明が北朝鮮に融和姿勢を示しているのは、北朝鮮に融和的な主流派の機嫌を損ねたくないという思いが強いからだ」と指摘する。その意味で、北朝鮮軍兵士と戦うことになったウクライナに厳しく出ても、主流派の反発をそれほど招くことにはならないのだという。

李在明氏は、大統領に当選する直前まで複数の刑事裁判を抱えていた。就任後、裁判は憲法上の大統領の不訴追特権を理由に相次いで延期されたが、次の大統領選で保守勢力が勝てば、退任後に裁判が再開される可能性がある。進歩勢力の結集が至上命題でもあり、それが外交に微妙な影響を与えているとも言えそうだ。

文=牧野愛博

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