経営・戦略

2026.10.06 09:57

成長の鍵は新規獲得ではなく「既存顧客」にある

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多くの企業は、成長予算を「新規獲得」という一方向にのみ注ぎ込んでいる。新規顧客の獲得はニュースの見出しを飾り、インセンティブ制度の対象となり、戦略決定の場でも優先される。一方で「既存顧客の維持(リテンション)」に割り当てられるのは残りの予算にすぎず、通常は、何らかの問題が発生した後に初めて対応するカスタマーサービス機能として扱われている。

私にとって、この不均衡は決して納得のいくものではなかった。金融サービス、小売、ホームサービスの各分野でオペレーションを率いて20年以上のキャリアを持つ私は、獲得と維持の双端に身を置き、両者がいかに断絶しているか、そしてその断絶がビジネスにいかに大きなコストをもたらしているかを目にしてきた。

キャリアの初期、ある財務リーダーから今でも忘れられないアドバイスを受けた。「現金を数えるだけでなく、現金の流れを追え」というものだ。それは、ビジネスにおいて最大の支出が実際にどこで発生しているかを理解することを意味していた。私は、原材料の輸送から製造、そして数万もの店舗への流通に至るまでを追跡した。そして、そのサプライチェーンのあらゆる段階が、最終的な顧客体験をどのように形成しているかを身をもって学んだ。そのとき、成長とは単一のチームの責任ではなく、財務、サプライチェーン、製品、マーケティングといったすべての機能がもたらす成果なのだと理解した。

現在の私の職務では、オペレーション、カスタマーサービス、サービス提供、そして品質保証をすべてひとつの組織に統合することに注力してきた。この体制は、私の根本的な信念を反映している。すなわち、顧客維持は単一の部門の仕事ではない。部門横断的な規律であり、オペレーションこそがそれを具現化する場所なのだ。

顧客維持が置かれている「誤った場所」

多くの組織において、顧客維持はマーケティングやカスタマーサクセスなど、都合の良い場所に置かれがちだ。そのため、顧客の日々の体験を形作るオペレーションチームや、顧客維持の取り組みが実際に機能するかどうかを水面下で左右する他の部門から断絶している。

顧客ロイヤルティや維持は、サービス体験と切り離されたものではない。それらは体験そのものに直接組み込まれている。顧客が離れていくのは、顧客維持の仕組みが機能しなかったからではなく、技術者の到着遅れや慌ただしい電話対応といったオペレーション上の瞬間を通じて、「自分は優先されていない」と感じるからだ。

しかし、オペレーションだけで完結するわけではない。価格設定チームや製品チームは顧客のロイヤルティを料金に反映させるかを決め、マーケティングチームはオンボーディング時の期待値を形成し、データチームは顧客維持がどこで破綻するかを予測する。これらの部門が孤立して機能していると、解約という事態に至るまで誰も問題に気づかない。

オペレーションを起点に、顧客維持を全員の仕事にする

オペレーション部門の人々が、自らを「顧客維持の、端的に言えばブランドのアンバサダー」であると認識した瞬間に、顧客維持は改善する。すべての技術者、配車担当者、サービス担当者が、自らの対応が顧客維持を左右する瞬間であると理解すれば、今日の顧客を満足させているチームは、ビジネスが次にどこに投資すべきかを最も明確に見極められるチームにもなる。

依然として「新規獲得」に偏るデフォルトの予算

新規顧客を獲得するよりも、既存の顧客を維持するほうがはるかにコストが低いことは、数値で実証されている。新規顧客の獲得には、既存顧客を維持するよりも5倍から25倍のコストがかかることは有名だが、予算やインセンティブの構造は依然として新規獲得を優先しがちだ。顧客中心主義に関するギャラップ(Gallup)の調査は、この不均衡の代償を裏付けており、「完全にエンゲージしている顧客は、平均的な顧客と比較して、ウォレットシェア、収益性、売上、関係性の成長において23%のプレミアムをもたらす」としている。

5年間、期日通りに料金を支払い続けてきた住宅所有者を想像してみてほしい。彼らのもとに届く契約更新の通知には、値上げの案内だけが書かれている。感謝の言葉も、ロイヤルティ割引も、これまでの取引実績への謝意もない。その一方で、近所の新規顧客には初年度割引や歓迎の連絡が届く。当然、この忠実な顧客はその違いに気づく。これこそが、郵便受けの中で静かに顧客維持が失われる瞬間であり、これは単なるオペレーションの失敗にとどまらない。価格決定における判断ミス、マーケティングのギャップ、およびオペレーションの見落としが同時に重なった結果なのだ。

こうした投資不足は、多くの場合、社内における顧客維持の分類方法に起因している。つまり、資金を投入すべき成長エンジンではなく、抑制すべきコストセンターとして扱われているのだ。しかし、維持された顧客は単に維持コストが低いだけでなく、我々のようなビジネスにおいては、追加売上(エクスパンション・レベニュー)や紹介の源泉にもなる。

新規獲得と並行して、顧客維持にも資金を投じ、測定する

顧客維持を中心に据えて構築された企業には強みがあるが、それは顧客維持への注力姿勢を、全体像を示す誠実な指標と結びつけている場合に限られる。目標は、顧客にとって最も重要な点において、自社が顧客とどこでつながっているかを理解し、自社のブランドを誠実に見つめ直すことだ。数値上は顧客が定着していても、フィードバックで「十分に満足していない」と示されている場合には、特にこれが当てはまる。

NPSは報告のためではなく「予測」のために使う

私の経験では、顧客が最初の印象をどう評価するかは、その顧客が長期的に残るかどうかと密接に結びついている。

多くの組織はNPS(ネット・プロモーター・スコア)を遅行指標、つまり行動を起こすべきタイミングが過ぎた後に報告するスコアとして扱っている。しかし、NPSの真の価値は先行指標にこそある。それは解約率の数値に現れる前に、顧客維持がどこで機能し、どこで破綻しそうかを示すシグナルとなる。顧客維持に焦点を当てるだけでなく、その焦点をオペレーションの調整に活かすべきであり、単に「指標が好調に推移している」と報告するためだけに使うべきではない。

顧客維持は部門横断的な規律である

だからといって、新規獲得を諦める必要はない。求められるのは、事業開発、財務、マーケティング、製品、オペレーションのリーダーたちが、顧客維持に対する予算配分や連携体制のバランスを再調整することだ。新規獲得が常に得てきたのと同じだけの発言権、予算審査、そして先を見据えた分析を、顧客維持にも等しく与えることを検討すべきだ。

顧客維持のあり方は企業によって異なるが、行き着くところは常に同じ規律である。それは、カスタマージャーニーにおける各部門の役割を、等しく「守る価値があるもの」として扱うことだ。それを測定し、資金を投じ、その初期シグナルに対して新規事業と同じだけの厳格さを持って行動を起こすリーダーこそが、優位性を手にすることになる。

(forbes.com 原文)

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