経営・戦略

2026.10.05 10:02

DEIを撤回しても企業業績は改善せず──最新調査が示す意外な事実

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ここ1年半、多くの企業が多様性・公平性・包括性(DEI)プログラムの縮小を進めてきた。ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)の企業平等指数(Corporate Equality Index)に参加するフォーチュン500企業の数は、2025年の377社から2026年にはわずか131社にまで急減した。昨年署名されたトランプ大統領の大統領令により、企業のDEIプログラムに対する政治的・規制的な圧力が高まったことで、この撤退の動きは加速した。

しかし、DEIからの撤退が明確な財務的メリットをもたらしたわけではない。事実、2026年8月に発表されたカリフォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学の研究者による共同研究では、大統領令の発令後もDEIへの取り組みを維持した企業は、取り組みを縮小した企業と比べて、株価収益率や売上高の面で同等に推移していることが明らかになった。この結果は、DEIから撤退すれば企業の財務状況が改善するという前提を覆すものであり、そもそもなぜ企業が撤退を進めているのかという疑問を投げかけている。

企業による撤退の背景にあるもの

企業のDEI撤退は、大統領令によって始まったわけではない。法的課題や保守系活動家からの圧力が高まるなか、大手企業の数社はすでに方針の変更に着手していた。例えば、ウォルマートは2024年11月、サプライヤープログラムにおいて人種や性別の考慮を取りやめ、HRCの企業平等指数への参加を終了し、5カ年計画の人種平等イニシアチブを更新せず失効させることを発表した。

ターゲットは3年間のDEI目標を終了し、社外の多様性団体への報告を停止したほか、黒人やマイノリティが所有する企業の製品の取り扱いを拡大するプログラムを廃止した。メタ、IBM、マクドナルドといった大企業も、DEI関連の公約を撤回した。

トランプ大統領が2025年1月に大統領令14173号に署名すると、さらなる圧力が加わった。企業は自社の方針が変化する法的・規制的環境にどのように合致するのかという疑問に直面し、一部の企業はそれに対応して方針を変更した。例えば、チャーター・コミュニケーションズは、コックス・コミュニケーションズを345億ドル(約5兆4400億円)で買収する際の規制当局の承認を得るため、自社のDEI方針の変更を確約した。連邦通信委員会(FCC)は、チャーターが採用や昇進においてDEIを考慮しないと確約したことを受けて、この買収を承認した。

DEIを維持した企業が不利益を被ることはなかった

DEIからの撤退が本当に報われるのかを検証する最も明確なデータが、2026年8月に発表されたバークレー校とスタンフォード大学の研究者による研究でもたらされた。この研究では、大統領令14173号の後にDEIへの取り組みを維持したS&P 500企業と、取り組みを縮小した企業を、売上高と「異常リターン(市場全体の動きを排除し、企業の意思決定そのものの影響を分離した株価収益率)」という2つの財務指標を用いて比較した。

一方は、政治的な圧力にもかかわらずDEIプログラムを変更しなかったコストコ、アップル、デルタ航空などの企業。もう一方は、プログラムを縮小したターゲットやウォルマートだ。分析の結果、DEIプログラムを維持した企業は、縮小した企業と同等に機能していた。撤退したからといって財務的な恩恵が得られるわけではなく、維持したからといって不利益を被ることもなかったのである。

消費者の反応も同様に分かれている。2023年にトランスジェンダーのインフルエンサーであるディラン・マルバニーと提携したバドライトは激しい反発に直面し、その後数週間にわたって売上が減少した。しかしその2年後、ターゲットがDEIイニシアチブを縮小した際には、活動家が全国的なボイコットを呼びかけるという真逆の反応が起きた。全体として、一般市民の多くは依然としてDEIを支持しており、およそ10人中6人が「多様な従業員を擁する企業のほうが、より収益性が高く、革新的である」と回答している。

それでもDEIに伴うリスク

業績データや消費者の反応がどうであれ、企業がDEIプログラムを維持することによってトランプ政権からどのような対応を受けるかを懸念することには、もっともな理由があった。連邦機関からの不利な扱い、厳しい監視、合併や買収の承認手続きにおける潜在的な障害などがその懸念に含まれる。

さらに、訴訟のリスクもある。雇用機会均等委員会(EEOC)は、採用や昇進の決定において人種や性別を考慮する方針など、公民権法第7編(Title VII)に違反する可能性があるとみなした職場のDEIプログラムに対する監視を強化している。2026年には、同委員会はDEIに関連する差別疑惑をめぐり、複数の雇用主に対する調査や訴訟を起こした。

一部の慣行は、大統領令の発表前から法的課題に直面していた。人種ベースのクオータ(割当)制の導入、特定のグループに限定したフェローシップやリーダーシップ育成機会、面接候補者リストにおける多様性の義務付け、DEI基準とインセンティブの連動といったプログラムは、より厳しい監視の目にさらされてきた。過小評価されているグループを明確に優遇するプログラムに対する訴訟を受け、複数の法律事務所がダイバーシティ・フェローシップの応募要件を変更した。

これによって、企業は大きな決断を迫られている。DEIプログラムを縮小すれば、従業員や顧客の離反を招く恐れがある一方、特定のプログラムを維持すれば、法的・規制的なリスクが高まる可能性がある。適切なバランスを見出せる企業とは、DEIを完全に維持するか廃止するかという二者択一ではなく、どの慣行がビジネス上および法律上、引き続き合理的であるかに焦点を当てる企業だ。

今、企業が取るべき行動

この過渡期を乗り越えて最も有利な立場に立つのは、最も早く撤退した企業でも、最も頑なに維持し続けた企業でもない。政治的な状況に流されるのではなく、自社の法的リスク、従業員のデータ、そして自社のビジネス上の優先事項に基づいて、慎重な判断を下した企業である。

DEIプログラムの法的リスクを検証する

法的リスクは、すべてのDEIイニシアチブで一律ではない。採用決定や昇進基準、限定的な育成機会、クオータ制、あるいは法的に保護された特性に連動したインセンティブを伴う慣行は、他よりもリスクが高い。企業は、一括してすべてを廃止し、成果を上げているプログラムまで排除してしまうのではなく、法務顧問とともに各プログラムを個別に検証すべきである。目的は、どこに本当の法的リスクがあるかを特定することであり、成果を出していたプログラムを打ち切る口実として規制の圧力を利用することではない。

「優遇」ではなく「機会の提供」に焦点を当てる

特定のグループだけに機会を限定するプログラムに頼らなくても、多様な労働力を構築し続けることは可能だ。リーダーシップ育成プログラムの門戸をより広く開放し、採用活動の対象となる候補者層を広げ、従業員向けの支援を背景に関わらず利用できるようにすればよい。機会への障壁を取り除くために、新たな障壁を作る必要はない。また、保護された特性に基づいてアクセスを制限するプログラムに比べ、その手法は法的リスクが大幅に低い。

プログラムの実際の効果を測定する

DEIプログラムも、他のビジネス上の取り組みと同じ基準で評価されるべきだ。単に参加者数を数えるだけでなく、定着率、エンゲージメント、採用成果、昇進率などをデモグラフィック(属性)別に追跡している企業は、プログラムの継続、変更、または中止を判断する際、より有用な材料を手にすることができる。また、そのデータは、プログラムが外部からの厳しい監視にさらされた際、意思決定を正当化する強力な根拠にもなる。

リーダーシップ育成のパイプラインを見失わない

特定のDEIプログラムから撤退したからといって、職場に存在する格差が消え去るわけではない。グラントソントンの2026年の調査によると、シニアリーダー層に占める女性の割合は31%となり、2025年の34%、2024年の35%から低下している。また、女性の配置も特定の職種に偏っており、人事部門のリーダー職では46%を占めるものの、最高経営責任者(CEO)職では28%、最高商業責任者(CCO)職では27%にとどまる。DEI方針を変更する際にも、企業はこうしたギャップがどこで生じているかを追跡し続けるべきだ。さもなければ、将来的に後継者育成の課題に直面するリスクがある。

ここで得られるより大きな教訓は、すべてのDEIプログラムを維持すべきだということではない。政治的・規制的な圧力だけで、どのプログラムを廃止するかを決めるべきではないということだ。企業には今、こうしたプログラムを実質的な効果に基づいて評価するための十分な証拠がある。そして、圧力ではなく証拠に基づいて決断を下す企業こそが、DEIをめぐるリスクと、依然として残る労働力の課題の双方にうまく対処できる立場に立つことになる。

(forbes.com 原文)

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