リーダーシップ

2026.10.05 09:38

「イエス」と言うたびに何かに「ノー」と言っている:キャロライン・ウェブが説く優先順位の技術

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私が知るすべてのリーダーが、最優先事項に費やす時間を増やしたいと願っている。キャロライン・ウェブも、そうではないリーダーに出会ったことがないという。経済学者であり、エグゼクティブ・コーチ、そしてマッキンゼー・アンド・カンパニーのシニアアドバイザーでもあるウェブは、どんな生産性向上アプリでも変えられない現実から話を始める。「何かに『イエス』と言うたびに、別の何かに『ノー』と言っていることになるのだ」

ウェブの新著『Leadership Intelligence: Science-Backed Strategies for Mastering 21 Everyday Management Challenges』(クラウン・カレンシー刊)では、日常的な21のマネジメント課題を取り上げ、心理学、神経科学、行動経済学に基づいて各章で解説している。彼女の主張はこうだ。AIがルーティンワークを担うようになるにつれ、頭角を現すのは、人間ならではの強みである判断力、信頼関係、そして相手が何を求めているかを察する力を最大限に活かせるリーダーだ。彼女はこれを「人間ならではの領域」と呼ぶ。

しかし、落とし穴がある。こうした強みを発揮するには、人間にとって最も希少なリソースである「意識的な注意(アテンション)」を必要とするのだ。そして、最もキラキラしたもの、新しいもの、あるいは声の大きいものが注目を集める世界において、注意力を守るには、意図的な選択が必要となる。引き算(サブトラクション)の戦略家である私にとって、彼女の優先順位付けの章が目に留まったのはそのためだ。彼女のモデルには、「イエス(Yes)」、「任せて育てる(Grow)」、「ノー(No)」の3つのステップがある。ウェブに著書の執筆プロセスについて話を聞いたところ、このモデルが、リーダーシップの3つの次元(自分、組織、世界)すべてに共通して機能することが明らかになった。

自分(ME):前向きなイエスと、そのために手放すもの

ウェブが提案する最初のステップは、流されて引き受けるのではなく、意図的に「イエス」を選ぶことだ。彼女は次の2つの問いを勧めている。

  • 自分がチームや世界に対して、独自に提供できる価値は何か。
  • 5年後に振り返ったとき、この役割で何を成し遂げたと胸を張りたいか。

これらの問いが重要なのは、意識を向けない限り、自分ならではの貢献は実現しないからだ。ウェブが言うように、送られてくるメールすべてに返信し、すべての要望に「イエス」と言って一日を終えることもできる。「しかし、それは本当に自分が言いたい『イエス』なのか」

彼女は本書を執筆する際、自らこれを実践した。「リーダーシップに関する決定版となる体系的な本を書くなら、何かを諦めなければならない」と彼女は語った。彼女が諦めたのは、自身が愛してやまない仕事のリストだった。新規のクライアント獲得を止め、講演活動、ポッドキャストへの出演、外部コラムの執筆、ニュースレターの発行を一時休止した。また、いくつかのコミュニティからも距離を置いたため、一時期は非社交的になったように見えたと認めている。

一方で、彼女が残したものにこそ学ぶべき点がある。彼女は既存のコーチングのクライアントとの関係は維持した。コーチングと執筆が相互に好影響を与え合うからだ。コーチングのセッションで得た気づきが本の章の執筆につながり、執筆での思考の整理がコーチングの質を高めた。また、親しい友人たちと会う時間も残した。

私の「Stop-Drop-Roll(ストップ・ドロップ・ロール)」メソッドにおける「ロール(波及効果)」とは、やめたことによる良い影響を指す。ウェブはそれを明快に説明した。「手放したからこそ、イエスと答えた対象に対して、最高の自分をより多く注ぎ込むことができる」。良いものを手放すことで人生が縮小してしまうのではないかという不安は、杞憂に終わった。実際、こうした「引き算」によって、彼女の取り組みの影響力は飛躍的に高まったのだ。

こうした選択は、最初から確信を持ってできたわけではない。ウェブは本を書くという決断を下すまで、長い時間をかけて熟考した。彼女の「立ち止まるための習慣」は、驚くほどアナログなものだ。

  • シャワー室に防水ノートを置く。
  • 一日の終わりに「何がうまくいったか」「何を学んだか」という2つの問いを自分に投げかける。
  • 2〜3年ごとに、自分のエネルギーがどこに注がれているかだけでなく、どこからエネルギーを得ているかを深く見直す(エネルギー・オーディット)。この見直しによって、彼女はキャリアの岐路で、必ずしもわかりやすい選択肢ではなく、行動変容やコーチングという本当に望む方向へと舵を切ることができた。

私たちは、立ち止まることの大切さを教わる機会がほとんどなく、立ち止まること自体で評価されることもまずない。私たちが評価されるのは、立ち止まった「後」の成果だからだ。

組織(WE):手放して、育てる

第2のステップは、多くの優秀な人材(ハイパフォーマー)が挫折するポイントだ。かつて得意で、今でも得意だからという理由で、抱え続けている仕事がある。ウェブは、委任(デリゲーション)のハードルを上げるために、より鋭い問いを突きつける。「その人は素晴らしい仕事をしてくれるか」ではなく、「自分ほど完璧にできなくても、他の誰かに任せられる仕事ではないか」という問いだ。

自分が最も得意だと思っている限り、私たちはその仕事を抱え込んでしまう。しかし、そうした業務に費やす時間は、戦略的思考やチームの育成といった、リーダーにしかできない仕事から時間を奪うことになる。ウェブは率直にこう指摘する。「あなたが書いたメールの方が5%出来が良いとしても、大した違いはない」

彼女は自身のビジネスでもこれを実践し、その結果、彼女の右腕であるアシスタントは大きく成長した。本書の委任の章で紹介されている「Fix/Flex(フィックス/フレックス)」のフレームワークは、リーダーに対し、どの部分を「固定(フィックス)」し、どの部分に相手の裁量(フレックス)を持たせるかを極めて明確にすることを求めている。私たちは仕事を任せる際、本人が思っている以上に曖昧な指示しか出していないことが多い。

これが今、特に重要であるのには理由がある。AIの登場により、若手プロフェッショナルはほぼ何でも検索できるようになった。しかし、ダウンロードできないのは、リスクを伴う本物の実務をやり遂げる経験だ。リーダーが「5%の質の向上」にこだわって仕事を抱え込むとき、失われるのは自身の時間だけではない。他者の成長機会も奪っているのだ。

世界(WORLD):ゾンビプロジェクトをあぶり出す

第3のステップである「前向きなノー(Positive No)」こそ、他のすべての土台となるものだ。ストレスを抱えているとき、ウェブのアプローチは一見、逆効果のように思えるかもしれない。

  1. 温かい言葉で始める。
  2. まず自分の「イエス(現在コミットしていることとその理由)」を明確に伝える。
  3. その上で「ノー」を告げる。
  4. 温かい言葉で締めくくる。

私たちは急いで「ノー」とだけ言ったり、あるいは断るのを避けてメールを放置し、結果的に双方に不快な思いをさせたりしがちだ。「明確に伝えることこそ、優しさだ」とウェブは言う。

これは組織の規模でも同様に重要だ。ウェブはある病院のCEOや役員チームと仕事をした。彼らは変革プログラムを軌道に乗せたいと考えていたが、新しい取り組みのためのリソースを確保するには、現在進めているプロジェクトのいくつかを中止する必要があることを理解していた。そこでチームは、現在のすべての取り組みを黄色い付箋に書き出し、壁に貼って現状を把握することにした。やがて壁一面が付箋で埋め尽くされ、実際いくつのプロジェクトが動いているのかさえ、誰も把握できていなかったことが明らかになった。

ウェブはその後、多くの組織で同様のパターンを目にしてきた。「何かを始めても、進捗を確認したり管理したりすることを忘れ、なぜか5年後も稼働し続けているのだ」

役員チームは付箋を次の3つのグループに分類した。

  • 組織の「前向きなイエス」に直結する取り組み
  • 実態をより詳しく把握する必要がある取り組み
  • 明らかに終了させるべき「ゾンビプロジェクト」

ゾンビプロジェクトには、ウェブが言うところの「これまでの貢献に感謝する」という、いわば「こんまり(近藤麻理恵)」的な片付けの瞬間が必要だった。これらを終了させたことで、時間とエネルギーが解放され、劇的な変化をもたらしたという。

自社のプロジェクトさえ把握できていなかった病院の話を、対岸の火事として笑うのは簡単だ。しかし、このパターンはあらゆる場所に存在し、状況は悪化している。『ハーバード・ビジネス・レビュー』が紹介したガートナーの調査によると、2022年に平均的な従業員が経験した計画的な組織変更は10回で、2016年の2回から急増している。一方で、組織変更を支持する従業員の割合は、2016年の74%から43%に低下した。ウェブが提唱する原則は、多くの変革管理に欠けている「もう半分の視点」を示している。人々に新しいことを求めるのであれば、既存の仕事を手放させることにも賢明でなければならないのだ。

何から始めるべきか

これを実践するのに、壁一面の付箋を用意する必要はない。ウェブは、カレンダーを開いて、現在自分が引き受けているすべての予定を書き出すことを勧めている。その中で、自分の「前向きなイエス」に合致するものに印をつける。そして、残りの予定を厳しく見直すのだ。他の誰かの成長機会として任せられるものもあるだろう。あるいは、温かく明確な「前向きなノー」を告げるべきものもあるはずだ。

もし今週それを行うのが難しいと感じるなら、ウェブが提案する最もシンプルな引き算から始めてみよう。それは、マルチタスクをやめ、シングルタスクに集中することだ。それを行うたびに、彼女がすべての聴衆に投げかける次の問いに答えることになる。「今この瞬間、自分の脳が最高のパフォーマンスを発揮できる環境をどうやって整えるか」

最後に、私から問いを付け加えたい。もしあなたが今抱えているすべてのコミットメントを付箋に書き出したら、その森には何匹のゾンビが潜んでいるだろうか。

(forbes.com 原文)

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