2022年、私はドバイで不動産仲介会社を共同創業し、会長を務めた。その後の18カ月で、同社は創業者1人の体制から約75人規模へと成長し、地域で認知を獲得した。そして2023年、中東のコングロマリットに買収された。私はその時点で退いた。
だが、その買収劇こそが書く価値のあることだとは思わない。本当に書く価値があるのは、それまでの18カ月間だ。この期間、会社は「優れた仕事」の本当の意味を見失いかける寸前まで行った。そして、なぜほとんどの人が最初の挑戦でこの段階をうまく乗り越えられないのか、という点である。
人員拡大に追いつかない社員研修
新入社員は一人ひとり、異なるレベルの研修履歴、判断力、倫理観を持って入社してくるが、そのどれもが初日に明らかになるわけではない。仕事のセンスを直感的に掴める人もいれば、同じ過ちを繰り返さなくなるまでに数カ月の指導を要する人もいる。しかし、決して妥協してはならないのが「基準」だ。その週の担当者が誰であれ、案件の発掘、確認、文書化、成約に至るまでの全てのプロセスは、等しく高い基準で遂行されなければならない。
急成長企業に関するマッキンゼーの調査でも、これと同様の指摘がなされている。直感に頼った採用は創業チームの段階であればうまく機能するが、従業員数が急増し始めると機能しなくなる。誰が本当に優秀なのかを判断するための共通の基準が失われてしまうからだ。
米国市場に関する2023年の業界報告書は、別の角度から同様の事実を明らかにしている。免許を持つエージェントが不足しているわけではない。不足しているのは、実際に成約に結びつけられるエージェントなのだ。不動産業界に限らず、あらゆる分野において「人員の増加」は「能力の向上」と同義ではない。
真の限界点とは、最優秀なパフォーマンスを発揮する社員と最も未熟な社員との格差が顧客の目の前に露呈する前に、新入社員がその基準に到達できるかどうかにあると私は考えている。そこには、採用のスピードなど全く関係がないのだ。
管理体制の強化では、研修不足のチームを救えない
よくある対処法は、管理階層を増やすことだ。別のマネージャーを置き、チェックリストを増やし、承認ステップを追加する。一見、前進しているように思えるが、そうではない。チェックリストは、すでにチェックすべきだと分かっているミスしか拾えない。研修不足のチームにさらなる事務手続きを課せば、「すべてが正しく行われた」と記された書類がただ増えるだけで、顧客が実際に直面する本質的な問題は、何の対策も取られないまま密かに見過ごされてしまう。
急成長に関する2024年の論文は、多くの経営者が実感していながらも、なかなか言葉にできない事象を言語化している。それは、成長こそが「成功」と解釈されるがゆえに、急成長に伴う実質的なコストが二の次にされがちだという点だ。しかし、研修不足のチームに対して管理を幾重にも重ねたところで、アカウンタビリティ(責任の所在)が強化されるわけではない。むしろ責任が多くの人に分散され、最終的に誰も結果に対して責任を負わなくなってしまうのだ。
手遅れになる前に実施すべき「テスト」
痛い目を見る前に、自社の研修と品質管理が採用スピードに追いついているかどうかを確認する方法がある。チームが直近で完了した20件の仕事を抽出して、次の3つの質問を投げかけてみてほしい。
1. それぞれの仕事が、定義された同一の基準に沿って完了しているか?
2. 単にプロセスに関与した人ではなく、その成果に「責任を負った人物」の名前を特定できるか?
3. 先月採用されたばかりの人物が、指導された内容だけを頼りに、今日同じ結果を再現できるか?
どれか1つでも「ノー」があれば、品質よりも人員拡大のスピードが上回っている可能性が高い。採用活動が加速するたびにこのテストを繰り返し実施すること。これが、最も早く正確な兆候を掴む手段となる。
この経験から得た教訓
はっきりと言おう。この18カ月にわたる成長の経験こそが、現在の私が「ミスをカバーするために膨らみ続ける人員」ではなく、「監査可能なシステム」を中心に据えてあらゆるビジネスを構築するようになった理由だ。この手法は時に成長を遅らせるかもしれないが、問題が手遅れになる前に表面化し、修正を加えられる唯一の成長モデルであると私は確信している。
現在、私はカナダで手掛けている不動産開発プロジェクトにおいて、これとまったく同じテストを実施している。現地では地価の下落により、通常市場が許容するレベルよりも高い仕様で建物を建設する余地が生まれている。ここで問うべきは、ドバイが私に教えてくれたことと同じだ。すなわち、「事業規模が現在の5倍になったとき、このシステムは持ちこたえられるか?」ということである。早期にこのシステムを確立することこそが成否を分けるのであり、建設に携わるチームの規模は関係ないのだ。



