337万人の解析で遺伝性T790M変異と肺がんの強い関連を確認
遺伝性T790M変異は極めて希少で、保有者が少ないため、肺がんとの関連を測るのが難しい。研究はダナ・ファーバーがん研究所が主導し、研究機関「23andMe Research Institute」と共同で実施した。研究利用に同意した23andMe参加者1000万人超の遺伝情報を調べ、肺がんになったことがあるかどうかが分かっている337万人を解析対象とした。対象者は全員欧州系だった。
遺伝性T790M変異は約1万5850人に1人の割合で見つかった。
研究では、遺伝性T790M変異を持つ人と持たない人で肺がんとの関連を「オッズ比」という統計指標を使って比較した。オッズ比は、2つの集団で病気との関連がどの程度異なるかを示す数値で、1なら両集団に差がなく、数値が大きいほど関連が強い。
全対象者では、遺伝性T790M変異の保有者と非保有者を比較したオッズ比は約25だった。喫煙者だけで比較すると約10、非喫煙者だけでは60超となり、最も大きな差が表れたのは非喫煙者だった。
非喫煙者で60超だったのに対し、喫煙者では約10にとどまった。ただし、これは喫煙に肺がんを防ぐ効果があることを意味しない。喫煙者はもともとの肺がんリスクがはるかに高いため、遺伝性T790M変異による上乗せの影響が相対的に小さく表れる。
同じデータでは、遺伝性T790M変異の有無とは別に、喫煙そのものと肺がんとの関連を比較したオッズ比は約4だった。
遺伝性T790M変異はアパラチア南部に集中し、アジア系ではまれ
遺伝性T790M変異の保有者の大多数は、英国とアイルランドからの入植者に由来する1つの祖先系統にさかのぼる。約200~225年前、比較的孤立した地域社会で遺伝性T790M変異が世代を超えて受け継がれ、アパラチア南部に集中するようになった。同地域の一部では約2000人に1人が保有し、全米平均を7倍以上上回る。
遺伝性T790M変異は、アジア系の人ではまれだ。これは、東アジアで多くみられる後天的なEGFR遺伝子変異とは別の話である。アジアの一部では肺がん患者に占める非喫煙者の割合がはるかに高い。それにもかかわらず遺伝性T790M変異がアジア系で少ないため、非喫煙者に生じる肺がんリスクには遺伝性T790M変異以外の要因が関わっている可能性が高い。


