事業継承

2026.10.03 12:53

バフェットが仕掛けた、二つの承継と一つの規律

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60年にわたり、ウォーレン・バフェットの名前はバークシャー・ハサウェイにとって最も価値ある、非上場の資産だった。2026年1月1日、その資産は人の手に渡り、60年で初めて、そのいかなる部分もバフェット家の人間には引き継がれなかった。

この事実だけでも本来は大々的に報じられるべきだった。ところが世間は、長男ハワードが会長に就任したという一族内の承継に目を奪われた。ウォーレン・バフェットは株主への書簡で、この任命を長期にわたる見習い期間の完了であり、同社にとって不可欠なものだと説明した。

「ハワードは、その文化と価値を守る。それらはどちらも、当社の貸借対照表上のどんなものより価値がある。ハワードのことを、株主が保有し、できれば請求することがないよう願う保険契約だと考えてほしい。ハワードはバークシャーを深く大切に思っており、当社の全取締役も同じだ。バークシャーほど株主本位の会社は、これまでも、これからも存在しない」
ウォーレン・バフェット

しかし、より大胆な決断はそのすぐ隣で下されていた。バフェットは、会社の実際の運営、資本配分、買収、つまりシステム全体のコントロールを、自身とはまったく血縁関係のない寡黙なカナダ人会計士、グレッグ・アベルに委ねたのである。アベルは2000年、ミッドアメリカン・エナジーの買収を通じてバークシャー・ハサウェイに関わり始めた。アベルを後継者とする任命は、ウォーレン・バフェットによって2021年に確認され、2025年5月には、アベルのCEO就任が年内に正式決定されると発表された。アベルは2026年3月に正式にCEOに就任した。

5年に及ぶ承継計画は、市場と組織内の双方の反応に対処するための十分な時間をもたらした。このこと自体が、最も長期的かつ透明性の高い承継アプローチの1つであり、グローバルなファミリービジネスとしては異例である。ウォーレンがなぜそのように役割を分けたのかを理解することこそ、この承継物語の本当の教訓であり、さらに、現在静かに進行しつつある第2の承継の舞台を整えることになる。それは、アベルには渡されず、代わりに娘スージーのもとに置かれた約1500億ドル(約23兆7000億円)の行方である。

3人の子どもたちは、ガバナンス、文化と価値観の保護、そして慈善活動を通じた富の分配に関わる役割を担っている。ハワードは2026年9月に非業務執行取締役会長に指名された。彼は1993年から同社の取締役を務めている。姉のスージーは2021年に取締役会に加わり、ウォーレンの資産を慈善目的に配分する責任を負う。次男のピーターは自身の慈善団体を持つが、資金配分に関する受託者の職務を共有している。

実力でその地位を勝ち取った「アウトサイダー」

グレッグ・アベルの米国資本主義の頂点への道は、アルバータ州エドモントンで小銭を得るために空き瓶を返却するところから始まった。彼は会計士として訓練を受け、プライスウォーターハウスクーパースで経験を積み、1992年に小規模な地熱エネルギー会社カルエナジーに入社した。2000年、バークシャーがその会社を買収した時点で社名はミッドアメリカン・エナジーに変わっており、アベルもともに加わった。その後20年にわたり、彼は現代ビジネスではほとんど誰もしなくなったことを実行した。1つの場所にとどまり、信頼を静かに複利で積み上げたのである。2008年にミッドアメリカンのCEOとなり、2018年にはバークシャーの非保険事業全体を統括する副会長に就任した。そして2021年までに、バフェットはインタビューで本音を明言した。もし自分がその夜に急死したら、翌日にはグレッグがバークシャーを経営しているだろう、と。

その地位は、四半世紀にわたる実力主義と実績に基づくものだ。血筋ではなく、能力と成果によって最適な人物が任命されるという、理想的な事業承継の形である。

アベルは長年にわたり、BNSF鉄道、シーズ・キャンディーズ、デイリークイーン、そしてバフェットが買収した数十社の事業を監督してきた。公の知名度はなく、多くの証言によれば、それを築くことにも関心がなかった。デイリークイーンのCEOは簡潔にこう述べた。「彼は高いビジネス洞察力を持つだけでなく、非常に優れたビジネス本能を備えている」。アベルは正式にCEOの肩書を得ると、慎重に慣らし運転をすることはなかった。就任初年度のうちにアルファベットに100億ドル(約1兆5800億円)を投じ、住宅建設会社テイラー・モリソンの買収に68億ドル(約1兆700億円)を支払った。こうした決断力ある「バフェット流」の賭けは、看板の名前が変わっても規律は去っていないことを市場に示した。

一族に残された役割

ハワード・バフェットは、バークシャーの取締役会に33年間在籍していたにもかかわらず、資本配分や買収に関する発言権を明確に与えられなかった。それはアベルの領域であり、他のグローバルなファミリー企業で見られるような対立や権力闘争のリスクを低減するものだった。バフェットはハワードの役割を、バークシャーの文化と価値観、「当社の貸借対照表上のどんなものより価値がある」ものの守護者として位置づけた。将来の指導部が、バークシャーを独自たらしめているものを解体しようとすることへの抑止である。

おそらく最も興味深く重要な要素は、3人のきょうだい全員に割り当てられた役割である。スージー、ハワード、ピーター・バフェットは父の遺言の共同執行者であり、財産の99%以上を受け取る慈善信託の共同受託者でもある。アベルの職務とは異なり、これを評価する決算説明会はない。ハワードの役割とは異なり、単独で説明責任を負う人物もいない。3人のきょうだいが全会一致で行動することを求められ、多くの国が対外援助に使う額を上回る資金を毎年どこへ動かすかを決めるのである。

最も長い実績を持つきょうだい、スージー

アベルの信頼が鉄道会社や公益企業の経営によって築かれたのだとすれば、スージー・バフェットの信頼も同じように築かれた。ただし、よりスポットライトから離れた場所でである。彼女はウォーレンの長子で、1953年にオマハで生まれた。25年にわたり、1999年設立のシャーウッド財団と2005年設立のバフェット・アーリー・チャイルドフッド・ファンドという2つの財団を静かに運営し、教育、貧困緩和、社会正義に関するネブラスカ州を拠点とする活動に13億ドル(約2050億円)超を振り向けてきた。アベルと同様、彼女も肩書を与えられたわけではない。任務の規模が変わるはるか前から、数十年にわたり比較的目立たない環境でそれを築いてきたのである。

その実績は、今かつてなく重要になっている。2024年、バフェットは、自身の死後、その財産を3人のきょうだいが共同で運営しなければならない新財団に移すと発表した。その規模はまさに圧倒的だ。子どもたちは少なくとも年150億ドル(約2兆3700億円)を寄付する必要があり、これは米国の年間慈善寄付総額の約4%に相当する。ピーター・バフェットはその重荷を包み隠さなかった。「私は望んでいなかった」と彼はCNBCに語った。「父に電話して『私は辞退したい』と言った。父は『そう思うのも無理はない』と言った」

バフェット自身も、途中で計画を見直さざるを得なかった。2026年3月、彼は当初のアプローチ、つまり財産の大半を移すのを自身の死後まで待つという計画は、自身の長寿を踏まえると現実的ではないと認め、生前贈与を加速させた。現在、シャーウッドを含む子どもたちの財団には年間約5億ドル(約788億円)が流れており、彼は生きている間にその使途を見ることができる。最初から計算を正しく行うことで知られる人物としては、まれな公の認定である。

2つの承継、1つの規律

2つの物語を並べてみると、どちらにも同じ原則が貫かれている。バフェットは能力と血筋を切り離し、それぞれを実際に適した役割に結びつけた。アベルは、20年にわたる証明可能な成果によって事業を勝ち取った。スージーは、誰に命じられたわけでもない財団運営を25年続けることで、富の分配を担う席を勝ち取った。ハワードの役割は実質的だが、範囲は限定されている。それは、血筋そのものが資格となる唯一の職務である。文化を守るには、バフェット家の人間だけが持つ一種の組織的記憶が必要だからだ。

ファミリーオフィスがここから学ぶべきこと

  • 事業運営を担う仕事には外部者を起用せよ。アベルの名前ではなく、20年にわたる実績こそが、資本配分を安全なものにしている。準備状況に関係なく事業の支配権を一族内に留めることに固執するファミリーは、生き残りよりも安心感を最適化している。
  • 3つの承継を分けよ。誰が企業を運営するのか、誰がその価値観を守るのか、誰が富を管理するのかは、異なる能力である。バフェットは1人の後継者に3つすべてを背負わせるのではなく、それぞれを別の人物に割り当てた。
  • 実績は肩書に勝る。アベルのCEOの座も、スージーの信託における役割も、移行時に授与されたものではない。大きな決断が訪れるはるか前から、小さな決断の積み重ねの中で、数十年かけて勝ち取られたものだ。
  • 自身の長寿リスクに備えよ。バフェット最大の誤算は事業に関するものではなく、当初の寄付スケジュールに照らして自分がどれほど長く生きるかを過小評価したことだった。承継計画や相続計画には、単一の発動事由だけでなく、見直しの時点を組み込むべきである。
  • 構造的な安全装置として全会一致を求めよ。重要な富の意思決定を進める前に3人の相続人の合意を強制することは、そのうちの誰か1人が一族の掲げる価値観から逸脱することへの組み込み型の抑止となる。

アベルが引き継いだとき、バークシャーの株価は動じなかった。それは、市場がこの承継を儀礼的なものではなく本物だと信じたことを示す最も明確な証拠である。次世代のバフェットの寄付が同じ規律を保てるかどうかは、より静かな試練であり、今この瞬間も、はるかに少ない注目の中で進行している。

(forbes.com 原文)

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