多くの人は、他人に操られないための最善の策は、疑い深くあることだと思っている。習慣的に相手を完全に信頼しなければ、誰も自分を利用することはできない、という考え方だ。だが、信頼と不信に関する研究はそうではないと指摘している。
他人を疑ってかかる人が相手の不誠実さを正確に見抜けるわけではない。実際、学術誌『Frontiers in Psychology』に2020年に掲載された研究では、疑ってかかる姿勢が、相手が真実を話していることを見抜く能力を低下させることを明らかにしている。
他人に操られにくい人は、日常生活において他人を信頼する傾向がある。特徴的なのは、特定の状況になると懐疑心が働くことだ。操作が起こりやすい瞬間に懐疑心のスイッチが入り、それ以外の時はオフになっている。
そもそも、なぜこのような疑う習慣が必要なのかを理解しておくと役に立つ。コミュニケーションの研究者は「トゥルース・デフォルト理論」と呼ばれるものについて説明している。これは学術誌『Journal of Language and Social Psychology』に2014年に掲載された論文で、初めて提唱された理論だ。この理論によると、疑うべき明確な理由がない限り、人は自然に相手が正直に話していると考えるのだという。
人間関係やコミュニティはこうした信頼の上に成り立っているため、デフォルトの姿勢はたいていの場合、私たちにとって有益だ。だがこれは同時に、人を操ろうとする側が、あなたの判断力をあらかじめ押さえ込む必要などないことを意味している。ただ、あなたがその判断を働かすことがないようにすればいいのだ。人に操られることがないよう、判断力を働かせるのに役立つ3つの習慣を紹介しよう。
習慣1:迅速な決断を迫られたらペースを落とす
操作によく見られる特徴の1つとして、すぐに決断するよう迫ることが挙げられる。販売員の「この特別価格は本日限りです」というセールストークや、パートナーからの「即答できないのは真剣に向き合っていない証拠だ」といった揺さぶりなどがその典型例だ。いずれの場合も、慎重に考えるための時間が十分に得られない。
説得の心理プロセスを専門とする研究者は、これを「精緻化見込みモデル」を用いて説明している。このモデルでは、人は大きく分けて2つの方法でメッセージを評価するとしている。時間と集中力があるときには、言われている内容の妥当性を検討する。一方、急かされていたり気が散っていたりすると、相手がどれほど自信を持って話しているかといった表面的な手がかりに頼りやすくなる。



