経営・戦略

2026.10.02 20:44

50の市場で信頼を得るには? アプリストア戦略の設計術

stock.adobe.com

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海外市場向けのアプリを開発する際、文化が重要ではないと考える者はいない。自国以外の市場は、異なる前提やユーモア、信頼のシグナルによって動いていることを誰もが知っている。しかし、その認識を実際の実行計画に落とし込むことは、容易ではない。ローカライズを、一度チェックマークを入れれば、それ以降すべての市場で使い回せる単一のタスクとして片付けてしまってはならないのだ。

これまでに多くのクライアントの数十に及ぶ市場への参入を支援してきたが、他は完璧でもこのギャップが原因で、海外展開が不振に終わるケースを何度も目にしてきた。グローバル展開とは、1つの戦略を50回適用することではない。むしろ50の異なる戦略を実行することに近い。なぜなら、その製品を信頼するかどうかは市場ごとに判断されるものであり、単に翻訳しただけでは信頼を得ることは極めて難しいからだ。

こうした信頼構築戦略の大部分は、アプリ自体のデザインや機能ではなく、ユーザーに最初のダウンロードを決意させるアプリストアのプロダクトページ、すなわち掲載情報、スクリーンショット、説明文などの「存在感(プレゼンス)」にかかっている。

翻訳は最低限にすぎない

言葉を置き換えるのは簡単なことだ。より難しいのは、適切な言語に変換された後に、何を変えるかという点である。

例えば、テキストの長さが挙げられる。米国で効果を上げる1行のテキストも、完璧に翻訳されていたとしても、英国のオーディエンスの目には冗長に映ることがある。

レイアウトも同様だ。右から左に読む言語(アラビア語など)では、画面の再構築が必要になる。また、ドイツ語やフィンランド語の単語は英語よりも大幅に長くなることでローカライズ業界では知られており、追加の文字数を想定せずに設計されたボタンやスクリーンショットのキャプションの表示が崩れてしまうことがある。こうした問題は、単なる翻訳用ファイルの中だけでは決して見えてこない。

すべての市場を一度にローカライズしない

新しい市場に参入する際、直感的にその市場向けのクリエイティブをゼロから作り直したくなるかもしれない。しかし、私の考えでは、これは進める順序が間違っている。

私は、まず国内市場(あるいは主要市場)でアプリストアのクリエイティブをテストし、明確な勝者が決まるまで構造化されたA/Bテストを繰り返す方法を推奨している。そして、毎回クリエイティブを再発明するのではなく、その「勝ちパターン」を新たな各市場に合わせて適応させていくのだ。米国で成果を出したアプリストアのプロダクトページを英国に展開する場合、核となるコンセプトや価値提案(バリュープロポジション)は同じままでよい。変更するのは、コピー、キャプション、スクリーンショット、そして場合によってはレイアウト自体である。英国版は新しいアイデアではない。同じアイデアを、異なるオーディエンスに向けて表現し直したものだ。欧州のある市場から別の市場へ展開する際も、同様のプロセスをたどる。根本的なコンセプトは維持したまま、それに付随するあらゆるビジュアルやテキストの要素を再構築していく。

この違いは重要である。まずコンセプトをテストすることで、「そもそもこのアイデアは通用するのか」という問いに対する答えが得られる。あまりに早い段階でローカライズを行うと、その問いと、「この具体的な見せ方、このスクリーンショットの組み合わせ、この的確なコピーは、新しい市場で機能するか」という別の問いが混同されてしまう。コンセプトを検証する前に本格的なローカライズへ直行することは、アイデアとその翻訳の両方を同時にテストするために貴重な予算を費やすことを意味する。もし成果が出なかった場合、どちらが失敗の原因だったのかを突き止める術はない。

単なるローカライズではなく、カルチャライズを行う

一部の市場では、単にコピーを適合させるだけでなく、まったく異なるクリエイティブの論理が必要とされる。

私たちのエージェンシーは、日本市場への進出を支援したサイバーセキュリティ・アプリで、これを目の当たりにした。既存のスクリーンショットをそのまま直訳するのが最も手っ取り早い方法だっただろう。しかし開発チームは、表面的な言語だけでなく、ビジュアルを根本から見直すために現地の文化エキスパートを招き入れた。そのプロセスを経て作成されたスクリーンショットは、単に自国で成果のあったものをそのまま当てはめるのではなく、日本のオーディエンスに実際に響く要素を中心に構成され、米国版とは大きく異なるものとなった。

ローカライズ(現地適合化)は、言葉を変え、レイアウトを調整することだ。一方でカルチャライズ(文化的適合化)は、クリエイティブが伝えようとするメッセージそのものを変化させる。なぜなら、言葉が通じたとしても、信頼やユーモア、切迫感といった感覚は、文化が違えば同じようには伝わらないからである。

どの市場に注力すべきかを決定する方法

最初からすべての市場においてアプリストアのカルチャライズを完璧に行う予算を持つ企業など存在しない。そのため、展開の実行と同じくらい、主要市場の優先順位付けが重要になる。最初のステップは、ビジネスの業績を大きく左右する可能性のある少数の市場、すなわちそのカテゴリーがすでに支持を得ている、あるいは競合他社がすでに投資を行っている市場を特定することだ。そこから先は、以下のいくつかのフィルターを用いて優先順位を絞り込んでいく。

• 収益ポテンシャル(Revenue Potential): 最初のフィルターは通常、獲得可能な最大市場規模(TAM)と、そのカテゴリーにおける既存の需要である。文化的な乖離が大きくても、ダウンロード数や収益の上限が十分に高く、投資を正当化できるのであれば、その市場には投資する価値がある。

• 文化的距離(Cultural Distance): 購買行動やデザインに対する期待値が自国市場から離れていればいるほど、単なる翻訳だけでは成果が上がりにくくなる。そのような市場こそ、単なるテキストの差し替えではなく、真のカルチャライズを行う価値がある。

• 競争の飽和度(Competitive Saturation): 競争の激しい市場だからといって、自動的に進出を避けるべき理由にはならないが、参入のハードルは高くなる。競合他社がすでに文化的なローカライズを徹底している場合、一般的なローカライズ版では市場を打破することはできない。

• オーガニックシグナル(Organic Signal): 有料広告の予算を投じる前に、すでにオーガニックな需要、ダウンロード数、検索ボリューム、カテゴリーへの関心が存在するかどうかを確認する価値がある。これは、本格的なキャンペーンを展開して需要を確かめるよりも、はるかに安価かつ迅速に実際の関心度を測る方法となる。

順序設計こそが真の優位性

グローバル展開で成功を収めるのは、最も巨額のローカライズ予算を持つ企業ではない。何を最初にテストし、次に何を適応させ、データが価値を示した場所でのみ何をゼロから再構築すべきかを理解している企業が、通常は勝者となる。

優れた成果を上げるキャンペーンを展開し、50の市場で信頼を構築するためには、1つの市場ずつ丁寧に向き合い、50の個別の、そして意図的な決定を下していく必要がある。

(forbes.com 原文)

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