成長とテクノロジーは、複雑な関係にある。
テクノロジーは現代の企業にとって不可欠な成長の原動力であり、いかなる妥協も許されない最も重要な資産である。新しいツールにより、企業はイノベーションを起こし、規模を拡大し、成長を加速させ、これまで以上の成果を上げることができる。逆に、テックスタック(技術基盤)の更新を怠れば、企業として進化することは極めて困難になり、最終的には競争力も損なわれる。デジタル時代において、特にAIの役割が日々増大する中、企業の浮沈は技術的なインフラに左右される。それが成熟したとき、企業は繁栄するのだ。
しかし、テクノロジーと企業がともに成長しているからといって、両者が足並みをそろえているとは限らない。
テクノロジーが成長を促すことはあっても、企業の成長スピードがテクノロジーを追い越してしまうことがある。企業が新しいシステムを導入した結果、顧客や売上、従業員、事業拠点が拡大したものの、突然予期せぬ障害に直面するというのは、実によくあることだ。これは、規模の拡大に適応するのに多少の時間がかかるというような、単なる「成長の痛み」ではない。ビジネスの成長にテクノロジーが追いつかないときに起こる現象なのだ。
かつてツイッター(Twitter)と呼ばれ、現在はXとなっているサイトは、その悪名高い一例だ。急速なユーザーの獲得は初期の成長には大いに貢献したが、基礎となる技術インフラはもともとそのような規模を想定して構築されていなかったため、人気がピークに達したときに頻繁なシステム障害を引き起こした。しかし、この問題はテック企業に限ったことではない。成長がテクノロジーを追い越すあらゆる場所で、従業員、顧客、そして最終的には収益に対する課題が生じる。
成長が問題となるとき
歴史を振り返ると、成長とテクノロジーの乖離が始まり、成長の勢いを維持しようとする企業を苦しめる、いくつかの一般的なシナリオが存在する。
その1つは、企業が単一の拠点から複数の拠点へと展開する場合だ。新しい製品やサービスによって、より広い地域にサービスを提供できるようになったのかもしれない。しかし、拠点を増やすということは、それらの拠点を運営するために必要なテクノロジーをスケールアップ(規模拡大)させることを意味する。また、データを統合し、可視性を高め、ガバナンス(統治)を強化するための機能を備えることも必要になる。業務に支障をきたすことなく成長を維持するには、まったく新しいシステムと戦略が不可欠だ。
もう1つの限界点は、企業が対面式のオフィスからハイブリッドワークやリモートワークへと移行するときに発生する。デジタルワークスペースは無数の成長機会をもたらすが、それを機能させるには単に電子メールやビデオ会議を導入するだけでは足りない。テックスタック全体をクラウドに移行する必要があり、サイバーセキュリティへの懸念が高まり、コラボレーションツールの重要性が増し、モバイル技術が不可欠になる。多くの企業が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期に初めてこれらの問題に取り組んだが、働き方が進化し続ける中で、これらは依然として困難な課題であり続けている。
他の部門のスタッフは増員するものの、IT部門のスタッフは増やさない企業もまた、危険な領域にある。企業規模が大きくなれば、日常的な問題が深刻な損失を招くのを防ぐために、より多くのITサポートが不可欠になる。企業が成長を維持するためにテクノロジーをアップデートする必要性に気づいたとき、主導すべきなのは社内または共同管理のITチームだ。ITサポートの規模拡大を先延ばしにしすぎると、成長とテクノロジーの不均衡を迅速に是正することは極めて困難になる。
これらのシナリオ以外にも、ITが負荷に耐えかねていることを示す兆候がある。
• 実施するたびに結果が悪化していくセキュリティ評価
• 四半期ごとに、より多くの時間とリソースを費やすようになる手動での回避策
• 企業が拡大しているにもかかわらず、低下していく顧客体験(CX)
これらの指標はすべて、技術的な基盤が負荷に耐えられないほど脆弱であることを示している。問題が発生してから対処することも可能だが、より優れた戦略は、成長とテクノロジーが同じペースで進むように予防的(プロアクティブ)に取り組むことだ。
テクノロジーを企業の成長と同調させ続ける方法
今日のテクノロジー主導の経済においても、ITをビジネスの根幹とは切り離されたもの、あるいは単なる補完的なものとみなす傾向がある。しかし実際には、ITこそが中心的な役割を担っている。そのつながりを明確にするための方法がいくつかある。
1. ビジネスの成果を中心に計画する:技術的な視点からビジネス戦略を見つめ直し、ITにどのような追加やアップグレードが必要か、どのような重要業績評価指標(KPI)を達成すべきか、工程表が現実的であるかなどを特定する。ビジネス計画とIT計画は、常に同じ目的地に向かう2つの道筋として捉えるべきだ。
2. 四半期ごとの報告を実施する:四半期報告制度を導入することで、経営陣がテクノロジーの成功している部分と課題を常に把握できるようにする。報告を行うというシンプルな行為そのものが、ステークホルダーが常に重要な質問を投げかけ、ありのままの指標を浮き彫りにすることを確実にする。
3. 従業員にアンケート調査を行う:全従業員に対し、自社のテクノロジー対応力を10段階で評価してもらうか、第三者機関によるアセスメント(評価)を受けて客観的な意見を得る。これにより、経営陣が自分たちの主観的な印象だけに頼るのを防ぐことができる。現場の課題から遠く離れた経営陣の印象は、往々にして不正確だからだ。
4. 早期かつ継続的にITへ投資する:場当たり的なIT投資を避け、後手に回らないようにするために、必要性が明らかになる前に、早期から継続的に投資を行う。ここに挙げた他のステップを実践することで、単にトレンドを追いかけるのではなく、適切な場所に適切な額を投資できる確率が高まる。
5. 戦略的なITチームを結成する:IT、営業、経理、経営陣、財務など、組織全体から人材を集め、テクノロジーがどれほど効果的に機能しているかを調査し、どのような変更が必要かを予測する。この戦略的グループが定期的に会合を持てる時間と場所を確保し、その調査結果が確実に経営幹部(C-suite)に届くようにする。
6. 業界のピアグループ(同業他社の集まり)に参加する:競合他社がどのようなツールを導入し、どれだけの費用を費やし、その過程でどのような成功や失敗を経験したかを学ぶことで、競争力と最新情報を維持する。ピアグループは、企業がAIの導入を成功させ、あるいは最新技術をいかに活用するかを模索している現在、特に価値がある。
成長とテクノロジーは、決して互いに競い合うものではない。成功する企業とは、両者を完璧に同調させ、新たな顧客、市場、マイルストーン(節目)が生まれるたびに、それをしっかりと受け止めるインフラがすでに整備されている企業なのだ。



