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2026.10.02 15:24

なぜ人々はAIにブーイングするのか──CEOが見落とす「第3の問い」

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5月、アリゾナ大学の卒業式で、グーグルの元CEOであるエリック・シュミットが祝辞の中でAIについて語った際、卒業生からブーイングが起きた。セントラルフロリダ大学では、登壇者がAIの話題を持ち出すと、学生たちが「AIなんて最低だ!」と叫んだ。南カリフォルニア大学では、学生代表のスピーカーであるキャッシュ・エイモスが聴衆の前に立ち、「誰か私を雇いたい人はいますか?」と問いかけた。スタジアムからは笑いが起こった。すると彼は「大真面目です」と言った。

登壇者が次から次へと卒業生に対し、AIを受け入れるよう語りかけるなか、唯一歓声を浴びたのは、アップルの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアックだった。彼は「あなたたちにはAI、つまり『本物の知性(Actual Intelligence)』がある」と語りかけたのだ。

これらの学生はテクノロジー嫌い(テクノフォビア)なわけではない。Z世代の半数以上は、少なくとも週に1回はAIを利用している。彼らはテクノロジーそのものにブーイングしているのではない。語られているストーリーに対してブーイングしているのだ。そして、多くの企業が語るストーリーとは、「AIが私たちをより迅速に、より無駄なく、より効率的にしてくれる。ピラミッド型組織を再編し、より少ないリソースでより多くの成果を上げられるようにする」というものだ。

壇上の誰も語らず、CEOたちもほとんど語ろうとしないのは、22歳で社会に出ようとする若者にとって、その「少ないリソース(less)」が何を意味するかということだ。彼らが足を踏み入れる市場では、エントリーレベル(未経験者向け)の求人件数がこの2年間で35%も減少しているのだ。

効率化のストーリーは真実ではあるが、不完全である。

誤解のないように言っておくが、私は効率化に反対しているわけではない。生産性の向上、利益率の改善、スピードの向上はどれも本物であり、すべての企業がそれらを取り込むべきだ。

しかし、私が役員会で目にするのは次のような光景だ。AIに関する議論はほぼ決まって「何を自動化できるか?」から始まり、「いくつの職務を削減できるか?」で終わる。「以前はできなかったことで、今なら何ができるか?」という3番目の問いに達することは滅多にない。

真の価値はこの3つ目の問いにある。そして、株主リターンと雇用のどちらかを選ぶという誤った二択が崩れるのも、ここである。

世界経済フォーラムは、2030年までに9200万件の雇用が置き換えられると推計している。その多くは技術変化によるものだ。一方で、1億7000万件の新たな職務が生まれる。この純増は自然に実現するものではない。誰かがビジネスを築き、サービスを設計し、仕事を創り出さなければならない。その誰かこそがCEOなのだ。

縮小か、拡張か:2つの異なるゲーム

多くの企業が「縮小ゲーム」をプレイしている。同じビジネスモデルで、人員を減らし、利益率を向上させる。これは機能する。しかし、競合他社もすべて同じツール、同じモデル、同じプレイブックを持っている。効率化は参入条件であって、堀ではない。

一方、「拡張ゲーム」では異なる問いが投げかけられる。以前はコストがかかりすぎて解決できなかった、どのような課題を今なら解決できるか? 採算が合わないという理由で、これまで無視していた顧客は誰か? AIが定型業務を処理し、人間が判断を下すとき、何が実現可能になるか?

これは理想論ではない。過去のあらゆる技術主導の成長サイクルを支えてきた論理である。電化の時代において真の勝者となったのは、蒸気機関を電気モーターに単に置き換えただけの企業ではなかった。彼らは工場を再設計し、新しい製品を開発し、それまで存在しなかった市場に参入した。テクノロジーが縮小を可能にし、成長は拡張からもたらされたのだ。

AIも同じである。縮小しかしないCEOは、現在のモデルから価値を抽出し続け、やがて空洞化させる。拡張するCEOは、現在のモデルからリターンを獲得しつつ、次のモデルを構築する。

ウィンウィンは甘い理想ではなく、構造的なものである

この議論には、企業の社会的責任(CSR)のように聞こえる側面もある。「正しいことだから雇用を維持すべきだ」という主張だ。しかし、私の言いたいのはそういうことではない。

縮小だけに終始せず、拡張を目指す企業のほうが、長期的にはより多くの株主価値を創造する。彼らはより優秀な人材を引きつける。人は縮小している企業ではなく、成長している企業に集まるからだ。新たな課題を解決することは新たな市場を生み出すため、新しい収益源が開拓される。そして、四半期ごとにすり減っていくのではなく、数十年にわたって蓄積される組織的な能力を構築することができる。「パーパスがパフォーマンスを動かし、パフォーマンスが利益をもたらす」という考え方はすでに定着している。AIにおけるこれに相当する法則は、「拡張が能力を育み、能力がリターンをもたらす」である。

AIが定型的な知的労働を処理するとき、何が経済的に実現可能になるかを考えてみてほしい。これまで費用面で手が届かなかった人々へのパーソナライズされたヘルスコーチング。中間層向けの先見的な財務アドバイス。かつてはコスト面で不可能だった規模での予防保全。これらはどれも仮定の話ではない。AI以前には成り立たず、今では成り立つようになった価値の領域であり、それらを提供し、調整し、構築するためには人間の存在が必要なのだ。

AIを単なるコスト削減の手段としか見なさないCEOは、これを見過ごすことになる。AIを成長のテコとして捉えるCEOは、慈善事業としてではなく、より大きなビジネスを構築する過程の自然な副産物として、雇用を創出することになる。

実践における具体策

• 「効率化」と「拡張」の2つのトラックを走らせる。AIによる縮小によって1ドル(約1万未満円)の利益が生じるごとに、その1ドル(約1万未満円)をどこに再投資すべきかを問いかける。多くの企業は明確な第1のトラック(効率化)を持っているが、事実上、第2のトラック(拡張)を持っていない。

• 職務を削減する前に、仕事を再設計する。AIが業務を自動化するとき、問いかけるべきは「このポジションを廃止できるか?」だけではない。「今なら、どのような高次の仕事が可能になるか?」でもある。多くの場合、新しい職務の価値は、古い職務を削減することで得られる節約額を上回る。ただし、それを探そうとすればの話だ。

• 人材のパイプラインを守る。エントリーレベルの職務をすべて排除してしまえば、将来のリーダーが育つ徒弟制度のような育成の場を失うことになる。これは感情論ではなく、競争上の議論である。

• 重要な指標を測定する。取締役会が導入スピードや人員削減数を追跡しているのであれば、AIを活用したサービスによる新たな売上や、社内異動、そして企業が人的能力を構築しているか、あるいは消耗させているかも追跡すべきだ。何を測定するかは、何を重視しているかのシグナルとなる。そして、最も優秀な社員はそれを見ている。

人々がAIにブーイングするとき、本当に言いたいこと

スタンダードチャータードのグループ最高経営責任者(CEO)は先日、AIによって職を失うリスクのある従業員を「価値の低い人的資本」と表現した。彼は自身の発言を2度にわたって釈明し、謝罪した。その謝罪の早さは、これまでのストーリーがいかに脆弱なものになっているかを物語っている。

人々はテクノロジーそのものにブーイングしているのではない。自分たちを「構築すべき能力(可能性)」としてではなく、「最適化すべきコスト」として扱うストーリーに対してブーイングしているのだ。「人員削減による利益の増加」は間違いではないが、それは第1章にすぎない。第2章は、単に支出を減らすだけでなく、どうすればより多くのことを成し遂げられるかを見出そうとする企業のものだ。

9200万件の雇用が失われる一方で、1億7000万件の新たな雇用が生まれる可能性がある。このギャップを埋めるのはアルゴリズムではない。古い価値を際限なく縮小することよりも、新しい価値を創造することのほうが勝ると決断するリーダーたちだ。これはスローガンではない。誰もが気づける場所に隠されている、明快なプレイブックなのだ。


(forbes.com 原文)

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