新納弘崇は2019年5月、Umee Technologiesを設立した。電気通信大学発の同社が提供する会話解析AI「Front Agent」は、商談の音声データを分析し、成約に至るまでの会話の運び方や無意識な狙いといった、トップセールスと若手・新人との「差分」を可視化して、組織全体の成約率を高める。Web会議のほか、対面商談やテレビ通販の音声解析も実現し、約200社が導入している。
クオンタムリープベンチャーズは、22年8月のプレシード期に単独で投資を実施。25年3月にはシリーズAラウンドでも継続出資している。代表の古谷健太郎が投資した理由とは。
古谷:新納さんと最初にお話ししたのは2022年の春ごろです。AI技術へのギークなこだわりと野心的なビジョンに触れ、「普通の起業家ではない」と一目で感じました。
新納:私はもともと技術畑の人間で、電気通信大学で機械工学を学び、東京大学との共同研究で神経信号を読み取る義手の開発にも携わっていました。非言語情報を扱うサイエンスへの関心はそのころから変わっていません。その後、ヤマハに入社し、新商品開発と兼任で顧客の声を商品開発に生かす社内プロジェクトに携わりました。「現場の担当者がどういう会話をしているのかわからない」という課題に取り組んだ経験から、音声データをビジネスに生かすノウハウを得たことが、今の事業にもつながっています。当時は生成AIもない時代でしたが、会話データという、人が活用しきれていない資産に着目し、AIを拡張する音声基盤の需要がやってくると仮説を立て、母校である電気通信大学発のベンチャーとして起業しました。まずは収益に直結しやすい営業から着手しようと決めたんです。
古谷:新納さんは出会った当時から事業モデルと世界観が何ひとつブレていませんね。経営者の資質とテーマの普遍性、この両方が揃っていたからこそ、単独で出資を決めたんです。4年たった今も「会話データは宝の山であり、商談のクオリティを高めるテーマだ」という着眼点は色あせていません。
新納:まさにそのテーマの核にあるのが「なぜトップセールスだけが売れるのか」というノウハウの解明です。一般的なテキスト化ツールはトップセールスの無意識な示唆や意識の変化、お客様との合意形成の違いなどまでは可視化できません。「Front Agent」は、そうした差分を、会話を多角的に整理するデータベースとしてプロットします。狙ったデータをいつでも取り出せて、なぜその結果になったのかも説明できるからこそ、組織全体に還元できるようになります。まずはオンライン商談から始め、今では対面商談やテレビ通販にまで対応領域を広げています。
古谷:プレシード期のころは、新納さんが見ていた未来がまだ早すぎるくらいでしたが、生成AIがこれだけ普及した今、ようやく時代が追いついてきましたよね。



