気候・環境

2026.10.02 09:18

カザフスタンのサイガ、山火事リスク軽減の一助となる可能性

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ここ数年、世界各地で山火事が急増している。

カザフスタンの広大なステップ(大草原)は近年、より高温で乾燥した条件にさらされるようになり、山火事のリスクが大きく高まっている。火災が発生した場合、管理手法は主に防火帯、計画的な野焼き、消防インフラ、監視に依存している。

しかしカザフスタンの一部地域では、ある重要な草食動物が、山火事リスクを下げるためにはるかに基本的なことをしている。植生を食べているのだ。

20世紀に絶滅寸前まで追い込まれたサイガは、いま目覚ましい回復を遂げている。

カザフスタンが景観の耐火性を高める新たな方法を模索するなか、サイガの回復は、山火事の燃料となるものを減らすという予想外の恩恵をもたらす可能性がある。

サイガの復活

歴史的に、サイガはハンガリーと東欧からウクライナ、ロシア、カザフスタン、モンゴルを経て中国の満州に至るユーラシア・ステップに広く分布していた。

1990年代のソ連崩壊と、それに伴う貧困や失業の蔓延により、サイガの密猟は急増した。これは食用肉だけでなく、貴重な薬効があると信じられ、漢方薬に用いられていた雄の角を目的としたものだった。

移動性野生動物種の保全に関する条約によると、その結果、サイガの個体数は1990年代後半から2000年代初頭までに約95%減少した。

さらに2015年には深刻な細菌感染症の流行により、カザフスタンで20万頭を超えるサイガが死んだ。石油・ガス探査の急速な増加や輸送回廊の拡大も、サイガの移動や従来の放牧地へのアクセスを大きく妨げた。

同様に、家畜数の増加もこうした放牧地をさらに消耗させた。

その後、アスタナ・タイムズによると、世界のサイガ個体数は2025年にユーラシア全域で約410万頭まで大きく回復し、その多くはカザフスタンに集中している。

これを受けて、国際自然保護連合(IUCN)はサイガのレッドリスト上の分類を「深刻な危機(Critically Endangered)」から「準絶滅危惧(Near Threatened)」へ変更した(絶滅リスクの低下を意味する)。

この回復は主に、政府による強力な密猟取り締まりの成果である。アルティン・ダラ保全イニシアチブのような団体も、角や肉を目的とした違法狩猟をさらに防ぐため、国家レンジャーの配置を支援した。

密猟削減の取り組みに加え、生息地保護もいっそう重視されるようになり、カザフスタンとモンゴル全域の主要な移動経路や出産地に、大規模な自然保護区や保護地域が新たに設けられた。

また、サイガのメスの多くは毎年双子を産むため、生息地喪失や密猟といった脅威が減ると、個体数は急速に増えることができた。

衛星追跡などのツールを使ったモニタリングプログラムの拡充や疾病予防の取り組みといった他の施策も、かつて脆弱だった個体数の安定化に役立った。

カザフスタンのステップが山火事に弱い理由

カザフスタンのステップが山火事に見舞われやすい主な理由の1つは、長く暑く乾燥した夏を伴う極端な大陸性気候にある。これに降水量の少なさが重なり、植生は乾燥した燃えやすい火口(ほくち)へと変わりやすくなる。

広大で平坦な地形のため、強い風が開けた平原を吹き抜けやすく、小さな火花を広大な距離にわたって素早く広げることもある。

草原も国土の大部分を覆っている。春には植物がかなり成長する一方で、夏には枯れて乾燥する大量のバイオマス(生物資源)となる。

ソ連崩壊後、家畜数は当初急減し、いくつかの地域で過小放牧(放牧不足)が生じた。植生を食べる草食動物が十分にいなかったため、多くの地域で背の高い枯れ草が蓄積し、激しい火災の豊富な燃料となっている。

また、夏の暑い嵐の際には、同国のステップ全域で自然の落雷が多発し、乾いた草にさらに引火する。

場合によっては、農地での無計画な野焼きや、農村地帯近くの産業インフラも、頻繁な着火源となる。

保全はいかに山火事管理になり得るか

サイガのような大型のキーストーン種(生態系の基幹となる草食動物)は、植生を食べることで山火事に利用可能な燃料を大きく減らすことができる。体系的な採食を通じて、植生の高さや密度を変え、連続して存在する燃料の中に潜在的な切れ目をつくる可能性がある。

踏みつけや群れの移動も植生をさらに変化させ、燃料の連続性を断ち切り、代わりに断片化したモザイク状の防火帯をつくる。これは主に、山火事が、酸素を吸収しやすく素早く広がるために、立ったまま乾いた草のような、ばらばらで直立し空気を含みやすい「細かな燃料」に大きく依存しているためだ。

燃料となる草が踏み倒されて平らになることで、酸素の供給は大きく制限され、草ははるかにゆっくり、かつ弱い勢いで燃えるようになる。これにより保水性も高まり、堆肥化への分解も加速する。

長期的には、こうした移動は、燃えやすい侵入性の一年生草本を抑え、耐火性のある多肉植物や広葉草本を促すことで、植物種の構成を根本的に変える。

ただし、潜在的な火災抑制効果とは別に、サイガの復帰は、高度に遊動的な大型草食動物として、ユーラシア・ステップ全体にわたる景観規模の生態学的影響ももたらす。

サイガは1つの植物種ではなく、多様なイネ科植物や広葉草本を食べることで、どの単一種も採食の中で優占しないようにし、多様な植物生態系を支えている。

また、動物の移動は、集中的に採食された場所と手つかずの場所が入り交じる景観を生み出す。この構造的多様性は、ノガンや深刻な絶滅危機にあるマミジロゲリのような重要な絶滅危惧ステップ鳥類に、不可欠な営巣地や隠れ場所を提供する。

サイガの群れは毎年数百マイルを移動することで、植物の繁殖における長距離の運搬者としても機能し、広い範囲に種子を分散させる。

さらに、オオカミのような地域の頂点捕食者に加え、ソウゲンワシやクロハゲワシのような脆弱な腐肉食鳥類の食物連鎖を安定させる助けにもなり得る。

残る課題

サイガ回復に伴う最大の課題の1つは、この景観規模では、巨大な群れがいま牧畜地と重なっていることだ。これにより、共有する水源、牧草地の劣化、作物の踏み荒らしをめぐって、地元農家との間で人間と野生動物の衝突が起きる可能性がある。

採食による山火事抑制効果も、草食動物が「どこで、いつ、どの程度の強度で」採食するかに大きく左右されるため、年や季節を超えて再現可能な戦略とは限らない。家畜とは異なり、サイガは非常に移動性が高く、渡りをする動物だからだ。

このため、局所的な高リスク火災地帯に囲い込んだり、追い込んだりすることはほぼ不可能である。

場合によっては、インフラの障壁によって、植生管理が必要な特定の過剰繁茂した牧草地にアクセスできないこともある。

サイガはまた、気候要因によって引き起こされる細菌感染症の流行など、壊滅的で急速な大量死に生物学的に極めて脆弱である。

特にカザフスタンでは、サイガの増加を受けて、農業への影響を懸念する地域社会から強い反発が起きている。その結果、農業活動を守るため、政府が認可した管理下での間引きが行われるようになった。

変化する保全の役割

カザフスタンにおけるサイガの目覚ましい成功は、生物多様性回復の役割が変化していることを明確に示している。多くの場合、深刻な絶滅危機にある種を保護することは、従来の保全指標では必ずしも測定されない、より広範な生態系レベルの恩恵につながり得る。

気候の変動性が高まり、異常気象がより頻繁になるにつれ、野生生物の保護はもはや気候適応と完全に切り離されたものではなくなる可能性がある。場合によっては、動物そのものが必要不可欠なインフラの一部となり得る。

したがって、こうした重要種の回復による二次的・三次的影響を考慮し、より大きな支援と資金を引き寄せるために、保全の評価基準や研究もそれに応じて進化する必要がある。

(forbes.com 原文)

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