国際エネルギー機関(IEA)が2026年4月に発表したエネルギーとAIに関する報告書によると、AIデータセンターに関連する世界の電力消費量は2025年だけで約50%増加した。同機関は、AIの普及が加速するにつれて、この成長ペースはさらに上昇し続けると予想している。米国では、ローレンス・バークレー国立研究所が、データセンターによる電力消費が2028年までに米国全体の総電力消費量の6.7%から12%に達する可能性があると予測しており、これは数年前の約4.4%から上昇している。多くの経営陣にとって、この成長は抽象的なものであり、隣の州のデータセンターで起きている事象にすぎなかった。しかし、AIの効率化と責任あるAIの利用は、次第にガバナンスの問いへと変わりつつある。経営陣や取締役会は、組織が選択するAIプラットフォーム、そのプラットフォームを支える物理的なインフラ、そしてそのインフラ内で実行されるデータ運用の3つの異なるレイヤーを通じて、この問題を理解する必要がある。これら3つのレイヤーすべてを理解していないリーダーは、部分的な解決策を完全な解決策と誤認するリスクを冒すことになる。
プラットフォーム・レイヤー:AIの効率化は設計から始まる
AIコラボレーションプラットフォーム「BoodleBox(ブードルボックス)」の創業者兼CEOであるフランス・ホアン氏は、AIのトークンとエネルギー消費の関係について説明した。「プロンプト(指示文)を送信すると、そのプロンプトはパッケージ化され、トークンという形で送信される」と彼は言う。「トークンが増えるのは、AIモデルに指示を出す際、現在のプロンプトだけでなく、添付文書を含む過去のプロンプトがすべて一緒に送信されるからだ」。AIモデルは、プロンプトを解釈して出力を生成するために推論(インファレンス)を行う。「推論が多く行われるほど、消費されるトークンが増え、使用される電力も増加し、最終的には環境への影響が大きくなる」と彼は語った。
ホアン氏によると、BoodleBoxのアーキテクチャはもともと環境対策として構築されたものではなく、結果的に環境対策を兼ねることになったエンジニアリング上の選択だった。会話内のすべての過去のプロンプトや添付文書を毎回AIモデルに送信するのではなく、プラットフォームが当面の要求に関連するものだけを特定して送信する。このアプローチにより、毎回すべての文脈を送信する場合と比較して、トークン消費量を最大96%削減できたという。
ホアン氏は、設計による効率化には限界があることも慎重に指摘した。「トークンを削減するよりも良い方法がある。それはトークンをまったく使わないことだ」と彼は語り、一見すると詳細で洗練されているように見えても、無関係な情報や誤った情報が含まれている「AIワークスロップ(AIが生成した質の低い雑多なコンテンツ)」を指摘した。「解決策は、実はAIを使う前に始まっている。それは課題をより的確に定義することだ」と述べ、効率化はプラットフォームの技術的設計だけでなく、組織の規律にも同じくらい依存していると主張した。彼の比喩はこうだ。「今、人々はランボルギーニとゴルフカートの違いを理解していない。ゴルフカートに乗るか自転車を漕ぐだけで十分な食料品の買い出しに、ランボルギーニで行こうとすることがあるのだ」
インフラ・レイヤー:建設の前に稼働率の向上を
人々が使用するアプリケーションの1つ下のレイヤーにあるのが、それらを動かす物理的なインフラだ。プライベートクラウドおよびAIインフラ企業であるWhiteFiber(ホワイトファイバー)のCEO、サム・タバール氏は、業界は効率化の問題を間違った順序で解決しようとしてきたと主張する。「実行すべき順序があるが、業界の多くの側面でそれが逆になっている」とタバール氏は、保有しているハードウェアの効率性を確認する前にハードウェアを増やそうとする組織を指して述べた。クラスターとは、AIを実行するために接続されたサーバー群のことだ。「クラスターの稼働率が常に40%未満、時には30%未満で動作しているのを目にする。これは、そのインフラに費やされている電力、冷却、資本が、稼働していないシリコン(半導体)に浪費されていることを意味する」。組織が既存の能力を十分に活用していることを確認して初めて、新たな容量を建設したり、拠点間でインフラを接続したりすることが適切な次のステップになると彼は言う。
WhiteFiberは最近、83キロメートル離れた2つのデータセンターを接続し、タバール氏が「シングルスーパークラスター」と呼ぶものを構築した。これは毎秒111.2テラビットで動作し、往復遅延時間は光がファイバー内を移動する物理的限界の8%以内に収まっており、距離が業界でしばしば扱われてきたような固定された制約ではないことを証明している。「最新のGPUを搭載した1つのラックは40キロワット以上を消費することがあり、これは小さなマンション1棟分が使用する電力とほぼ同じだ」と彼は言う。既存のインフラで吸収できたはずの需要を満たすために新しい施設を建設するたびに、地域の電力網に対する新たな負担となり、土地や水への新たな要求が発生する。「すでに建設され、電力が供給され、認可を受けているインフラには、まだ十分な余裕が残されている」と彼は付け加えた。容量の問題に対する答えは、時に「手持ちのインフラを適切に接続すること」なのだ。
データ・レイヤー:非効率が蓄積する場所
3つ目のレイヤーは、多くの経営陣にとって最も見えにくいものである可能性があり、同時に最も重要な影響を及ぼす可能性がある。オープンソースのデータベース「PostgreSQL(ポストグレスキューエル)」に関するソフトウェアとサービスを提供するEDBの最高マーケティング責任者(CMO)、マイケル・ゲール氏はそう指摘する。ゲール氏はIEAのデータを引用し、データセンターの電力消費量は2030年まで毎年約15%成長すると予測されており、これは他のすべてのセクターを合わせた電力需要の伸びよりも4倍以上速いと述べた。同時に、推定10億のAIエージェントがオンラインになり、世界全体で1日あたり2170億回のアクションを実行するようになるという。「サステナビリティ(持続可能性)はもはや選択肢でも、あれば望ましいというものでもない」とゲール氏は言う。「それは、AIや新しいエージェント労働力をどのように活用するかという、企業の存亡に関わる基盤だ」。モデルレベルでのエネルギー使用量はほぼ固定されているが、データ・レイヤー(すべてのAIインタラクションの下で行われるインデックス作成、検索、文脈管理)は、企業が直接介入できる数少ない場所の1つであると彼は主張する。「不完全に構築されたベクトルインデックスや、最適化されていないクエリは、一度実行されるだけでなく、エージェントの活動が活発化するにつれて1日に何百万回も実行される」と彼は言う。「データ・レイヤーは、企業が実際にレバーを引いてその効果を実感できる数少ないレイヤーの1つだ」
あるグローバル通信プロバイダーとのパイロットプロジェクトにおいて、EDBは各推論の呼び出しに入力される文脈の量を制限することにより、回答の質を大幅に低下させることなく、トークン消費量を約57%削減し、データセンターの排出量を最大87%削減することに成功した。AIベンダーを評価する経営陣への彼のアドバイスは、契約を結ぶ前に「1ドル(約1万未満円)あたりではなく、1ワットあたりで実際に何を得られるか?」と尋ねることだ。彼はこれを「ワットあたりのインテリジェンス(intelligence per watt)」と表現しており、大半のベンダーとの会話で欠落している視点であるとしている。
AIの効率化に向けてスタックをガバナンスする
どのレイヤーも、単一のレイヤーを適切に選択しただけでは、他の2つのレイヤーが不適切に管理されている場合の埋め合わせにはならない。トークンを最小限に抑えるように設計されたプラットフォームであっても、十分に活用されていない物理インフラ上で稼働している可能性がある。効率的なインフラであっても、規模の拡大に伴って無駄を静かに増幅させるデータ・レイヤーに依存している。AIの導入が組織の運営基盤となるなか、AIの効率化を理解することは取締役会レベルの能力(コンピテンシー)になりつつある。それは企業がサステナビリティの数値を報告するかどうかという問題ではなく、経営陣がその数値がどこから来ているのかをレイヤーごとに説明できるかどうかという問題になりつつある。今すぐAI戦略に業務上のレジリエンス(回復力)を組み込んでいる組織こそが、この成長がもたらすであろう規制やその他の厳しい監視に備えることができるのである。
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