ビジネス

2015.12.18 12:00

燃料電池自動車の販売開始、インフラ整備が課題

TOYOTAが昨年発表した、燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」(photo credit : TOYOTA)

TOYOTAが昨年発表した、燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」(photo credit : TOYOTA)

2015年10月下旬、トヨタはついに待望の燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」について、米国市場での納車を開始した。

販売台数は年末までにFCVとしては過去最高の水準に達する見込みだ。ホンダの「クラリティ」やヒュンダイの「ツーソン」など、先行するFCVはいずれも2桁台の実績にとどまっているため、MIRAIの販売台数が過去最高となるのは当然のことだ。

しかし、トヨタは最終的な成功まで長くゆっくりとした積み上げを必要としたプリウスの例を示し、非常に気長に構えている。


トヨタのスポークスマン、John Hansonは今週デトロイトで開かれたイベントで、「われわれは12月末までに少なくとも100台の納車を見込んでいる。2016年モデルイヤーが終わる来夏までに米国内では約1,000台が走行することになる」と述べている。

その頃までに、カリフォルニア州では30カ所近くの水素ステーションが稼働していることになる。この中には、ロサンゼルス〜サンディエゴ間の海岸の中間に位置する充電スタンド「テスラ・スーパーチャージャー」に隣接する水素ステーションも含まれる見込みだ。来夏にはまた、米国北東部で水素ステーションが稼働することから、同地域の顧客への納車も始まる予定となっている。

米調査会社ナビガントリサーチの新たな報告書によると、自動車各社の販売する燃料電池車が第2世代に入っている2024年までに、燃料電池車の全世界販売台数は約23万台に達する見込み。ホンダは新型クラリティを2016年に発売し、その後ヒュンダイの新たな量産型FCVやメルセデス・ベンツのGLCクロスオーバーの水素燃料電池版が2018年に発売される予定となっている。このほか2020年までに、ホンダとGMのパートナーシップによる第1号車も街中を走行する見通しだ。

しかし、これらの取り組みの商業的成功には、全ての代替燃料と同様、コストと燃料補給インフラへのアクセスが鍵となる。自動車メーカーは、燃料電池スタックに欠かせない高価なプラチナ触媒の量を抑えるため、新たな製造技術と設計を進歩させた。

しかし、水素ステーションを探すため街を横断する必要があるとしたら、これは消費者承認に大きくマイナスの影響を与えるだろう。これは、最近まで天然ガスがガソリンよりもコスト面で大きく勝っていたにも関わらず、米国での天然ガス自動車普及が進んでいない理由の一つでもある。


対照的に、電気取出口は至るところにある。一般的なコンセントでは自動車のバッテリーの充電に長い時間がかかるが、それでも特別な装置なしで使える。

国内では郡ごとに規制や建築基準法が異なる。このため、水素・圧縮天然ガス(CNG)ステーションの潜在的な運営業者は1カ所毎にある程度のカスタマイズをしなければならないという問題に直面する。

必要なコストは1カ所当たり100万ドル(約1億2,000万円)以上となる建築費の大部分を占めることになるだろう。トヨタとホンダはそれぞれ、十分な数のステーションを建設してプロセスを進めるため、数百万ドルの支援を表明している。

米国では半数以上のガソリンスタンドを大口顧客(フリート)が非公開で運営している。この市場でCNGステーションの建設費用を支援しないという判断は、天然ガスがたどったものと同じような運命につながっている。燃料電池は一般的に商用車やバス、長距離トラックなど大規模な車両にとって、バッテリーよりも有効な電化の代替手段と受け止められている。

もし消費者がこの技術を受け入れたら、電力会社やガソリンスタンドの運営業者は一般利用ができるインフラへの投資を加速させることになるだろう。そうでなければ、水素は市場において「(石油の)重質留分」のような存在にとどまってしまうかもしれない。

編集 = Forbes JAPAN編集部

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