多くの人は、並の人間と非凡な人間の差は才能によるものだと考えがちだ。2人の人間が同じ時間を費やし、一方が飛躍し、もう一方が伸び悩んだとき、一方は単に素質に恵まれていただけだという簡単な結論に至る。それはすっきりとした説明であり、心理学において長年の議論を形成してきた。
しかし、今年「Psychological Science」誌に発表された研究は、別の要因を指摘している。優秀な人と「極めて優秀な人」を隔てるものは、練習量や才能の有無よりも、ある特定の習慣、すなわち「自らのミスを振り返って研究すること」に関係している可能性があるという。
この習慣を明らかにしたチェスの実験
話はチェスから始まる。チェスは長年、心理学における卓越性(専門知識)研究の格好の題材となってきた。初期の研究では、グランドマスター(最高位のチェスプレイヤー)が超人的な記憶力を持っているわけではないことが分かっている。彼らが持っているのは、長年の研究によって構築された膨大なパターンのライブラリである。
1990年代、心理学者のK・アンダース・エリクソンは、この知見をさらに発展させ「意図的練習(deliberate practice)」の理論を提唱した。彼の主張は、専門性は経験だけで培われるものではないというものだ。それは、明確な弱点に焦点を当て、即時のフィードバックを伴い、その弱点が克服されるまで繰り返される特定の訓練から生まれる。エリクソンの研究は、後に広く知られる「1万時間の法則」というアイデアにインスピレーションを与えたが、本人はこのスローガンが最も重要な要素である「時間の質(どのようにその時間を過ごすか)」を排除してしまっていると感じていた。
その後、反論が起きた。2014年の影響力のあるメタ分析を行った研究者らを含む批判派は、個人間のパフォーマンスの差において、練習が説明できる割合はエリクソンの理論が示唆するよりもはるかに少なく、生まれ持った能力をもっと評価すべきだと主張した。
エリクソンらは、それらの研究の多くはあらゆる練習をひとまとめにし、気軽な対局と集中的なトレーニングを同列に扱っていると反論した。この意見の相違を解決するのは困難だった。なぜなら、証拠の大部分は、被験者が何年も前にどのように練習したかという記憶に依存していたからだ。



