多くの企業は、仕事そのものを再設計する前から、AIによる労働力の変革に備え始めている。デロイトが2026年8月に実施した調査では、米国のビジネス・ITリーダー501人のうち43%が、今後12〜18カ月以内にAIエージェントが自社の労働力に大きな変革をもたらすと予想していた。しかし、業務プロセスがその変化に備えられていると回答したのはわずか21%だった。
このギャップこそ、筆者らがHECパリで新たに発表したポリシーペーパーの中心にある経営課題を表している。多くの企業は既存の管理業務にAIを追加しているが、どの業務をAIに任せるべきか、どこで人による監督を強化すべきか、そしてルーティンの管理に費やす時間が減ったときに経営幹部の役割をどう変えるべきかを決めていない。
筆者らの分析は、タスク自動化に関する研究、経営幹部およびAI専門家45人へのインタビュー、7つの生成AIシステムによる探索的評価に基づいている。結論として浮かび上がったのは、一貫した非対称性である。AIは、構造化され、データが豊富なマネジメント業務を支援する能力を高めている。一方で、判断、信頼、社会的知性、説明責任に根ざしたリーダーシップ業務は、依然として人により大きく依存している。
まず仕事そのものから始める
グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリンは2025年、マネジメントを「AIで行うのが最も簡単なこと」と表現し、この問題提起を端的に示した。ブリンは、AIが社内コミュニケーションを要約し、フォローアップ業務を割り振り、昇進に関する議論の場で発言の少ないエンジニアの貢献を明らかにする助けにもなり得ると説明した。
ビジネスリーダーにとって最も効果的なアプローチは、役職名ではなくタスクを検討することだ。経営幹部の役割は、管理的、分析的、関係構築的、政治的、象徴的な活動の組み合わせで成り立っている。AIはそれぞれの構成要素に異なる影響を及ぼす。
業績モニタリング、ワークフロー調整、コンプライアンス、スケジューリング、文書レビュー、一次分析はいずれも、標準化された情報、明文化されたルール、測定可能な成果に大きく依存している。AIは指標を集約し、異常を検知し、シナリオをモデル化し、違反の可能性を示し、知識を検索し、初期説明を作成できる。
そうした出力をめぐる意思決定には、なお文脈が必要である。業績の異常には、解釈、コーチング、指標の恣意的な操作を防ぐ措置が求められる。コンプライアンス上の警告には、適正手続きと繊細な判断が必要になる場合がある。リスクモデルは証拠を整理できるが、どの戦略的トレードオフを企業として受け入れるかは、説明責任を負う経営幹部が決めることになる。
マネジメントとリーダーシップは異なる反応を示す
ハーバード大学のジョン・コッター教授と結び付けられる古くからの区別は、このパターンを理解する助けになる。マネジメントは安定を維持する。不確実性を減らし、仕事を配分し、進捗を監視し、人とプロセスが期待通りに機能し続けるようにする。リーダーシップは変化を生み出す。方向性を定め、アイデンティティと文化を維持し、境界を越えて橋を架け、共通の目的に向けて人々を動かす。
ほとんどの経営幹部は、その両方の機能を担っている。マネジメント業務は、多くの場合、構造化され、ルールに基づき、データが豊富である。リーダーシップは、創造的知性と社会的知性により大きく依存する。曖昧な状況で対応を生み出し、人や文脈を読み取り、信頼を築き、説得し、交渉し、集団的行動を調整する能力である。
ただし、この境界には例外もある。チーム育成や複雑な顧客対応は、管理業務でありながらも依然として人間の関与が強く求められる。競合情報の収集やコミュニケーション文書の作成は、リーダーシップ業務に寄与するものであり、AIによって大幅に拡張できる。それでも、全体的なパターンは変わらない。AIが最も力を発揮するのは構造化された管理業務であり、価値が意味、正統性、人間関係、説明責任を伴う判断に依存する領域では相対的に弱い。
減算効果
AIは経営幹部の役割にツールを加える。同時に、かつてその役割を定義していたタスクを減らすこともある。筆者らはこれを「減算効果」と呼んでいる。モニタリング、スケジューリング、コンプライアンス、一次分析に要する経営幹部の時間が減るにつれ、マネジメントの中身は変わっていく。
筆者らのインタビューによれば、この変化はすでに複数のセクターで現れている。ある世界的な酒類企業では、AIが業績モニタリングとリソース配分をリアルタイムで支援し、数字の照合作業に費やされていた週次会議を減らしている。リーダーは、現地チームがキャンペーンを最大限に活用する方法、インセンティブが整合しているかどうか、戦略的優先事項が現場で理解されているかどうかに集中できる。
海運業では、AIシステムが船舶スケジュールを最適化し、状況変化に応じてリソースを再配分している。人間の注意は、優先順位の設定、どのトレードオフを許容するかの判断、方向性の伝達、プレッシャー下でチームが行動できるようにすることへと移っている。
マーチャントバンキングでは、AIによってポートフォリオ・アドバイザーが財務インサイトにより迅速にアクセスできるようになっている。彼らの価値は、分析を生み出すことから、それを顧客のために解釈することへと移る。情報が何を意味し、商業戦略をどう形づくるべきで、どのような行動を支えるのかを説明することだ。
ビジネスリーダーのための4つの対応
企業は、この新たなAI時代に4つの連動した対応で向き合うことができる。
- 仕事をマッピングする。 経営幹部の役割をタスクレベルで精査する。モニタリング、調整、分析、人を率いるリーダーシップに費やす時間を特定する。自動化の判断は、仕事そのものに基づいて行う。
- 役割を再設計する。 AIが信頼性高く実行できるルーティンを取り除くか、作り替える。取り戻した時間を、意味づけ、ステークホルダーの足並みの調整、文化、変化へ意図的に振り向ける。その時間が追加の報告儀式や会議に奪われないよう守る。
- 説明責任を守る。 AIが支援する意思決定について、人間によるレビュー、エスカレーション、説明、不服申し立ての仕組みを定義する。AIの出力は評価すべき証拠として扱う。倫理的かつ重大な意思決定に対する責任は人間が担い続ける。
- リーダーシップ上の優位性を高める。 経営幹部の選抜と育成を、創造的知性と社会的知性を軸に再構築する。判断、ナラティブ、信頼、対立、文化、交渉、境界を越えた影響力に投資する。業務効率と並んで、リーダーシップの価値を測定する。
経営幹部は、マネジメント業務をAIに委ねる前に、5つの問いを投げかけるべきだ。そのタスクはルールに基づき、反復的か。関連データは信頼でき、代表性があり、利用可能か。成果は測定可能で、誤りは検出可能か。そのタスクは雇用、尊厳、信頼、公平性に影響を及ぼし得るか。人間によるレビュー、説明、不服申し立ての明確なプロセスがあるか。
構造化され、データが豊富で、測定可能で、堅牢なレビューに支えられているタスクは、自動化の有力な候補となる。意思決定が人に実質的な影響を及ぼす場合、AIは人間の判断を支援する役割にとどめ、経営幹部が倫理、例外、信頼に関する責任を保持すべきである。
リーダーシップの基準は高まっている
今回の知見は探索的なものであり、タスク評価は職務代替の予測ではなく、方向性を示す指標として設計されている。それでも、実務上の含意は明確だ。AIは、長らく経営幹部の役割の中に一体化されていた活動を切り分けつつある。構造化されたモニタリング、調整、コンプライアンス、分析は、支援または委任しやすくなる。判断、正統性、信頼、意味、変化は、経営幹部の価値の源泉としてより重要になる。
それはリーダーに求められる基準を引き上げる。経営幹部は、弱いシグナルに耳を傾け、同僚幹部の足並みをそろえ、後継者をコーチングし、境界を越えて交渉し、不確実性の意味を他者が理解できるよう支援するための時間を取り戻せる。AIがプロセスを監督する能力を高めるにつれ、経営幹部の価値は人を率いることへと移っていく。
ジュリアン・ジュルダンは、HECパリの経営・人事担当教授。
エマニュエル・コブレンスは、HECパリの経営・人事担当教授(エデュケーション・トラック)。
カトリーヌ・タノーは、HECパリのリーダーシップ非常勤教授であり、エグゼクティブ・コーチ、コーチングおよびコンサルティング会社のCEOを務める。
ダニエル・ブラウンは、HECパリのリサーチ・コミュニケーション責任者。



