ほとんどのCEOは自社の戦略を説明できる。しかし、信頼に足る戦略、有能な人材、強い市場ポジションを備えた組織が、それでも期待を下回る理由を説明できるCEOは少ない。
理由の1つは、業績がしばしば足し算のように扱われることにある。戦略を改善し、より優れたリーダーを採用し、統制を強化し、文化に投資し、実行を引き締めれば、組織は改善するはずだと考えられている。しかし、組織は独立した部品の集まりのようには機能しない。一箇所の弱点が、他の場所の強みを打ち消してしまうことがあるのだ。
マッキンゼーの7-Sフレームワークは、数十年前にこの洞察を捉えていた。戦略、組織構造、システム、共通の価値観、スキル、スタイル、人材は、相互に補強し合わなければならない。CEOにとっては、この整合性の論理をより単純な経営上の方程式に圧縮すると有用だと私は考えている。業績=戦略×リーダーシップ×ガバナンス×文化×実行、である。
重要なのは掛け算であるという点だ。これは実証モデルではないが、経営上のヒューリスティックである。いずれか1つの乗数がゼロに近づけば、他が強くても企業は価値を毀損し得る。優れた戦略も、実行が伴わなければプレゼン資料のままだ。強い実行力も、ガバナンスが弱ければ、誤った行動を拡大させる可能性がある。そして「文化は戦略を朝食に食べてしまう」という格言は誰もが聞いたことがあるだろう。いつでもそうであり、したがって、強い戦略と弱い文化の組み合わせは失敗の処方箋である。一方で、戦略の明確さを欠いた高業績文化でさえ、誤った方向に膨大なエネルギーを生み出しかねない。
KPMGオーストラリアは、リーダーがこのように考えるべき理由を示す時宜にかなった例である。同社はImpact Plan 2025の報告で、23億1500万ドル(約3630億円)の収益、8967人の従業員、1万3000社超の顧客、そして収益が小幅に減少したにもかかわらず収益性が改善したという、相当な規模の企業像を示した。テクノロジー投資、AI研修、ガバナンス改革、倫理的リーダーシップに関する取り組み、品質管理基準も強調していた。従来型の業務指標で見れば、CEOが規律ある業績と認識し得る要素は多かった。
しかし、プロフェッショナルサービス企業の業績は、損益計算書にきれいには収まらない、ある一つの要素に依存している。それが「信頼」だ。
2026年、内部告発者が法的保護を求めて告発を行ったことを受け、オーストラリア議会の調査(自動ダウンロード)は、機密情報の不正使用疑惑をめぐりKPMGを精査の対象とした。その後、KPMG自身も、機密性の高い顧客情報の使用、内部告発者への対応、これらの問題の監督と管理に関する不備を認めた。
同社の6月の行動計画は、ガバナンス、文化と倫理、統制の3分野に焦点を当てていた。最近の議会公聴会では、当該行為と同社の対応について引き続き検証が行われている。
この事案はなお進行中であり、疑惑を最終的な認定と混同すべきではないが、経営上の教訓を得るために調査の結論を先取りする必要はない。KPMG自身の認めた内容だけで、5つの乗数がどのように相互作用するかを示すには十分である。
まず戦略から始めよう。プロフェッショナルサービスでは、成長を評判から切り離すことはできない。案件を獲得することは、その獲得手段が将来の案件の土台となる信頼を弱めるなら、業績とはいえない。したがって、戦略には境界線が必要である。リーダーは、組織が何を達成したいのかだけでなく、その目的を追求するうえで何を拒むのかも定義しなければならない。
2つ目の乗数はリーダーシップである。価値観は、経営幹部が商業的なプレッシャーの下でそれを実践するときに、初めて信頼に足るものとなる。その真価が試されるのは、全社集会でリーダーが何を語るかではない。極めて優秀な役員が境界線を越えたとき、悪い知らせが目標達成を脅かすとき、あるいは内部告発者が影響力のある同僚に異を唱えたときに、何が起こるかだ。リーダーシップこそが、抽象的な価値観を組織における具体的な行動の結果へと変換する。
3つ目の乗数はガバナンスだ。今でも多くの経営幹部が、ガバナンスを単なるコンプライアンス(法令順守)として扱っている。しかし、ガバナンスは情報、権限、異議申し立て、説明責任が循環する「オペレーティングシステム(OS)」として捉えるべきだ。優れたガバナンスとは、懸念事項が適切な階層に迅速に届いているか、意思決定権限が明確か、独立した異議申し立てが実質的に機能しているか、そして役職が高くなるにつれて説明責任の基準が緩和されるのではなく、むしろ厳格化されているかを問うものである。
文化とは、これらの選択が日常化する場である。文化とは、組織が掲げる価値観のことではなく、どのような行動が「称賛され、許容され、あるいは処罰されるか」を社員が身をもって学ぶことによって形成される。本来許されないはずの行為が、商業的成功を理由に免罪されるとき、従業員は強力なメッセージを受け取ることになる。逆に、耳の痛い懸念を提起する人々を組織が守るとき、早期の警告が業績システムの一部として機能するようになる。
実行は最後の乗数である。是正は業務として定着しなければならないからだ。方針、レビュー、行動計画は、行動を変える場合にのみ意味を持つ。ガバナンスや文化のようなものに注力すると表明しても、最終的には実行によって評価される。すなわち、明確な説明責任、強固な情報保護、信頼できるプロセス、一貫した結果責任、そして問題が公的危機になってからではなく、より早い段階で特定されていることを示す証拠である。
CEOにとっての実務的な意味合いは、単に「われわれは業績を上げているか」と問うのをやめ、「どの乗数が業績のボトルネックになっているか」を問い直すことにある。したがって、有用な経営ダッシュボードは、収益、利益率、市場シェアといった指標にとどまるべきではない。意思決定のスピード、部門横断の整合性、行動規範、意見の言いやすさ(スピークアップの信頼度)、統制上の例外、人材評価への影響、施策の効果実現度などの指標も含めるべきである。
最も弱い乗数は、四半期決算にすぐには現れないかもしれない。だからこそ、経営陣の注意に値する。財務業績は、多くの場合、組織の整合性に対する遅行指標である。文化、ガバナンス、リーダーシップの失敗が収益や評価額に表れる頃には、根本的な問題は何年にもわたり複利的に膨らんでいた可能性がある。
CEOの仕事は、単に各要素を個別に最大化することではない。それらが相互に補強し合うようにすることである。戦略は選択を定める。リーダーシップはトレードオフを体現する。ガバナンスは意思決定の質と説明責任を守る。文化は誰も見ていないときに何が起きるかを決める。実行は、その4つすべてを再現可能な成果へと変える。
したがって、持続的な業績は、財務上の問題になる前に、まず整合性の問題である。CEOにとって最も重要な問いは、組織がどこで最も強いかではないのかもしれない。それは、弱まることを許せば他のすべてを圧倒しかねない乗数はどれか、という問いかもしれない。



