イスラム教徒の米国への入国を完全に禁止すべきだと主張したトランプに対し、共和党内部からも大きな批判の声が上がっている(トランプは「一時的な」禁止を訴えたのだが)。同じく共和党候補の1人であるジェブ・ブッシュは、トランプは「どうかしている」と発言。ディック・チェイニー前副大統領は、「我々が支持するもの、信じるものの全てに反する」と批判した。ホワイトハウスやイスラム教の宗教指導者、国連関係者、そして英国のデービッド・キャメロン首相も、トランプの主張を厳しく非難している。
英国では12月11日までに、議会にトランプの入国禁止に関する審議を求めるネット請願書への署名が50万を上回った。ネット請願は署名数が10万を超えると、審議が検討されることになっている。
「笑いもの」が有力候補に?
ニューヨーク生まれの米実業界の大物で不動産王と呼ばれ、テレビタレントでもあるトランプが予備選を勝ち抜き、大統領に選出されることになれば、まさに驚くべきことだ。
12月9日に集計結果が発表された共和党の候補指名争いに関する世論調査では、トランプの支持率は35.6%。この数字は、33の世論調査機関が行った231件の調査結果から割り出したもので、今年6月2日に発表された同じ調査での支持率は、わずか4.9%だった。しかし、トランプはその後、8月3日の結果で24.5%、9月7日に31.6%と着実に支持を広げてきた。当初は大統領になる可能性について「オッズは100対1」と笑い飛ばされていたトランプだが、8月以降、思いも寄らないことが本当に起きるかもしれないと考える人は増えている。
トランプのイスラム教徒に関する発言は、PRチームとしては賭けだったのだろう。当然、この発言を理由に悪い評判が立ったということはないと強気を示す者もいる。いずれにせよ、トランプは議論を続けており、この発言は世論調査の結果に悪影響をもたらしていない。
英ブックメーカーが示す各候補のオッズ
賭けと言えば、選挙結果を対象にしたスプレッドベッティングを行っている英国のブックメーカー、スポーティング・インデックスによると、クリントンとトランプの売値と買値はそれぞれ、(34-37)、 (5-7)だ。
この賭けでは、候補者が党の大統領候補になればその終値は25となり、大統領に選出されれば、終値は50になる。つまり、例えばクリントンの高値である37に1ポンドを賭けたとする。大統領に選出されれば、終値の50と買値の37の差に当たる13ポンドのもうけになるが、負けて共和党候補が大統領になれば、買値の37と終値の25の差に当たる12ポンドを失うことになる。
トランプが共和党候補になれば、大統領選の結果はクリントンの圧勝になるとみられているが、同社の賭けに参加してトランプに賭けておけば、選挙結果にかかわらず大もうけができるかもしれない。クリントンが大統領になっても、25マイナス7で掛け金の18倍のもうけが得られるのだ。賭けておく価値はあるかもしれない。
2016年2~6月に全米の各地で行われる予備選挙や党員集会を経て、最終的に党の候補が決定するまでには、様々なことが起きるに違いない。だが、トランプには財力があり、選挙活動を続けるために資金集めをする必要がない。最後の最後まで、戦い続けることができるはずだ。