ビジネス

2026.10.01 17:19

なぜ経営者は自社の企業価値評価を後回しにするのか

stock.adobe.com

stock.adobe.com

多くの経営者は、自社の価値を正式に評価することなく、何年もの歳月を会社の構築と成長に費やしている。

売上は増加し、新たな従業員がチームに加わり、業務は高度化していく。外部から見れば、会社は着実に進歩しているように見える。しかし、その根底にある企業価値は、往々にして謎に包まれたままである。

非公開企業の経営者を支援するなかで私が見てきたのは、初めての正式なバリュエーションが、落ち着いた戦略的計画の時期に行われることはまれだということだ。多くの場合、それは何らかの圧力がかかった局面で実施される。

危機に迫られて行う企業価値評価

企業価値評価は、人生やビジネスにおける重大な転換期を契機に行われることが多い。経営者が会社の売却を検討し始めたり、パートナーシップの移行を交渉したり、引退の準備を進めたりする場合だ。また、訴訟、株主間の紛争、離婚手続きの最中に企業価値評価が必要になることもある。

これらの状況には共通点がある。正確な財務情報を迅速に必要とするという点であり、その緊急性がすべてを変え得る。

大きな出来事の際にしかバリュエーションを行わない場合、経営者はその知見を早い段階の戦略的意思決定に生かす機会を失う。計画策定のツールとして機能するのではなく、バリュエーションは事後対応の作業になってしまう。

私は、このことによるコストへの影響を直接目にしてきた。時間のプレッシャー下や、訴訟、株主間の紛争、離婚手続きといった対立的な状況下で行われる企業価値評価は、主体的な戦略計画プロセスの一環として行われるものに比べ、通常、大幅にコストが高くなる。過密なスケジュール、増大する複雑さ、そして状況の緊急性が、専門家への報酬を押し上げる要因となる。私の経験上、定期的なペースで計画に企業価値評価を組み込んでいる経営者は、プレッシャーに押されてやむを得ず行う経営者に比べて、費やすコストが大幅に抑えられるだけでなく、得られる戦略的価値もはるかに大きい傾向がある。

不確実性という課題

私が普段よく直面する躊躇(ためら)いの原因の一部は、不確実性から来ている。多くの経営者は、評価額が自身の期待に届かないのではないかと心配している。また、会社が成長していれば、企業価値も当然高まっているはずだと決めつけている人もいる。

私はこのような会話を頻繁に行う。ある経営者は、売上成長や新規採用、事業拡大を、会社の価値が高まっている証拠として挙げる。それは時に事実である。しかし、売上高の成長や人員の拡大が、必ずしも企業価値の向上に直結するわけではない。企業価値は、より具体的な要因によって形成される。例えば、売上高に占めるリカーリング(継続)収益の割合、リーダーシップチームの安定性、ビジネスが1、2名の特定のキーパーソンの知識や顧客関係に依存していないか、そして特定の個人に依存せずに機能するシステムやプロセスを会社が構築できているか、といった点だ。

これらの価値の原動力を明確に理解していなければ、経営者は自社の実際の立ち位置を過大評価、あるいは過小評価してしまうことがよくある。

計画におけるメリット

ビジネスのライフサイクルのより早い段階で自社の価値を把握することで、経営者は強力な計画ツールを手にすることができる。非上場企業の多くにとって、これこそが真の好機であると私は考えている。

企業価値評価の知見があれば、経営陣は特定の決定が長期的な価値にどのように影響するかを評価できる。経営メンバーの追加採用、新規市場への進出、業務プロセスの再構築などはすべて、将来のバリュエーションに影響を与える可能性がある。

この情報を手にしていれば、そうした選択が企業の長期的な軌道にどう影響するかをより明確に理解したうえで意思決定できる。

戦略的意思決定の財務的影響を推測するのではなく、より広い価値創造の枠組みの中で、その選択を評価できるのである。

進捗を測る基準点

主体的に企業価値評価を行うもう一つの利点は、基準点(ベースライン)を設定できることだ。

会社の現在価値を理解していれば、将来の意思決定が時間の経過とともにその価値を高めているのか、低下させているのかを測定し始めることができる。

これにより、業績を測定するためのより高度な方法が導入される。売上成長や収益性も重要だが、より有益な問いは「それらの改善が、企業の長期的な価値を実際に強化しているか」ということになる。

定期的に企業価値評価を見直すことで、日々の業務上の意思決定が、測定可能な財務的成果にどのように結びついているかについての知見が得られる。

企業価値評価とエグゼクティブ報酬

定期的なペースで企業価値評価を行うことが重要である理由はもう一つあり、それは私が以前のコラムで取り上げたテーマに直接つながっている。優秀な従業員の報酬が企業価値の長期的成長に連動している場合、毎年の企業価値評価は任意ではなくなる。インセンティブプランへの拠出額を決定するため、そして、引き留めたい優秀な人材に対し、会社が彼らの貢献に報いる形で成長していることを示すための不可欠な要素となる。

最新かつ信頼できる企業価値が把握できていなければ、それらのインセンティブプランへの拠出額は一貫性を欠いた恣意的なものになってしまう。それでは、報酬体系がもたらすはずだったベクトルの一致(アライメント)が損なわれる。これら2つは相互に補強し合うものであり、どちらか一方が欠ければ、両者とも効果が薄れてしまう。

はじめにすべきこと

これらの知見を実行に移す準備ができている経営者にとって、スタート地点はシンプルだ。事業価値評価を一度きりの出来事ではなく、他の定期的な財務レビューと同じように扱い始めることである。

評価機関(専門会社)に依頼する前に、以下の基本事項を整理しておくとよい。

・少なくとも過去3年分の整った財務諸表。

・売上の集中度と顧客構成の明確な把握。

・ビジネスが最も依存している役割や関係性に対する客観的な見極め。

企業価値評価会社やアドバイザーを検討する際は、以下の点を考慮すべきだ。

・自社の事業に関連する業界や企業規模での実績。

・彼らのプロセスが自社の目的に合致しているか。社内計画向けの企業価値評価は、売却向けに作成されるものとは構造が異なり、優秀なアドバイザーであれば目的に応じて適切に調整(キャリブレーション)する。

・単に数値を書面で示すだけでなく、意思決定に役立つ形で評価結果を説明できる能力。

現段階での目標は、完璧な数値を出すことではない。信頼できる基準点を得ること、そして、これまで築き上げてきた価値の原動力をより明確に理解することだ。

戦略的なリーダーシップツール

企業価値を理解することは、単に売却の準備をすることではない。自身が築き上げている金融資産の実態を明確に把握することである。

これこそが、私が多くの経営者に促したい意識の転換である。すなわち、企業価値評価を取引に必要な要件とみなすのをやめ、定期的に行うべきリーダーシップの規律として扱うことだ。この転換を図る経営者は、自社を単に日々の業務を回す事業として管理するだけでなく、時間の経過とともに意図的に高めていくことのできる、価値ある資産として管理し始めることができる。

Continuum Capital Advisorsは、Northwestern Mutualの代理人として事業を行うAnthony L. Mastroが使用するマーケティング名称である。Northwestern Mutualは、The Northwestern Mutual Life Insurance Companyおよびその子会社のマーケティング名称である。個別の代理人に関する詳細な開示情報は、continuumcapitaladvisors.comで確認できる。

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事