M&Aを「生み続ける」能力が醸成されているか
その一例として、技術承継機構を上場当時まで戻して見てみましょう。
同社は2025年2月の上場時点で、すでに10社の製造業を譲り受けていました。さらに、創業から2024年9月までに350社超のアドバイザーから累計1607件の紹介を受けていました。
ここで注目したいのは、10社という成約実績以上に、1,607件というその手前の数字です。
10社のM&Aは「結果」だが、継続的に企業情報が流れ込むネットワークは、次のM&Aを生み出す「仕組み」です。
さらに同社は、譲り受けた企業を売却せず、各社の自主独立を重んじることを差別化要因として掲げ、価格以外の面でも売主から選ばれることをM&A戦略の一部として説明していました。
つまり上場時点ですでに、「どんな会社を買いたいか」だけでなく、「なぜ売主が自分たちを選ぶのか」まで説明していたのです。
IPO直後の企業を見るのであれば、私は過去の結果だけでなく、人材、採用、情報流入、元オーナーの評価、そして売主から選ばれる理由まで含めて、M&Aを生み続ける「生産能力」がすでに組織の中に作られているかを見たいのです。
「これからM&Aを始める会社」ではなく、「すでに企業をグループに迎える仕組みが動いている会社」はストロングバイヤーになり得ます。
もちろん、これだけで株価上昇を予測できるわけではありません。グループ入りした企業の利益を伸ばせなければ、M&Aは株主価値につながりません。
それでも、上場時点で「他の“M&Aで成長する”会社とは何かが違う』と調べる意味は、十分にあると思うのです。


