経営・戦略

2026.10.05 14:15

M&Aで時価総額伸びる? 予兆は『IPO直後のこれ』を見よ 安藤智之の「最強企業の見分け方」vol.3

「言葉」ではなく「行動」を見よ

では投資家として、この「売主から選ばれる力」を、IPOしたばかりの企業の公開情報からどう見抜けばよいのでしょうか。

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当然ながら、売主との面談の中身や仲介会社からの評価は外部からはわかりません。IPO直後なら、上場企業としてのM&A実績を何年も遡ることもできません。

だから私は、「これから継続的にM&Aを生み出す仕組みが、上場時点ですでに存在しているか」を見るべきだと思います。

まず人材です。実際にM&Aを何度も経験した人材を経営陣に置いているか。企業を探し、交渉をまとめるだけでなく、グループ入り後のPMIや子会社経営まで経験しているか。

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そして、私なら決算説明資料だけでなく、採用ページも見ます。

本当に年間何社もの企業を迎えるなら、企業を探す人、財務や法務を見る人、条件交渉やグループ入り後の経営を支援する人が必要になります。採用したい人材の欄には、そのような要件が入っているはずです。どんな人材を採ろうとしているのかには、その会社が本当にどこへ経営資源を投じようとしているかが表れます。

「M&Aの手前」も見よ

もう一つ重視したいのが、「M&Aの手前」です。

M&Aは、10社を買いたいから10社を検討すればよいものではありません。数百社との接点を持ち、その中から条件に合う企業を見つけ、さらに売主からも選ばれて、ようやく一つのM&Aが成立します。

だとすれば、過去の成約数だけでなく、候補企業の情報量、M&Aアドバイザーや金融機関とのネットワーク、自ら企業を探す仕組みは、将来のM&A件数を考える先行指標になり得ます。

そして、もう一つ分かりやすいシグナルがあります。

「会社を譲渡した元オーナーのインタビューが公開されているかどうか」です。

元オーナーが実名で登場し、『なぜこの会社を選んだのか』『グループ入り後に会社がどう変わったのか』『この会社に譲って良かった』と語っている企業は、それだけでストロングバイヤーである可能性が一段上がると思います。

M&Aが成立するまでなら、買い手はいくらでも良いことを言えるでしょう。しかし元オーナーは、その会社の「M&A前」と「M&A後」の両方を知っています。『こんなはずではなかった』『約束と違った』と感じている経営者が、わざわざ顔と名前を出して、その買い手を肯定的に語るとは考えにくいのです。

もちろん、企業側が都合の良い事例を選んでいる可能性はあります。それでも、複数の元オーナーが、M&Aから時間が経った後にも『社員を大切にしてくれた』『投資をしてくれた』『譲渡前の約束を守ってくれた』と具体的に語っているのであれば、意味は小さくないでしょう。

これは、いわば「元売主から買い手へのレビュー」であり、次のM&Aにも効いてきます。買い手自身の説明より、実際に会社を譲った経営者の言葉の方が説得力を持つのです。

さらに、「何社買いたいか」だけでなく、「なぜ売主が自分たちを選ぶのか」を説明できているかも確認したいところです。

『3年間で100億円を投資する』は買い手側の都合です。売主にとって重要なのは、『なぜ大切に育ててきた会社を、この会社に託すのか』です。

譲受後も売却しない。経営の自主性を残す。販路を提供する。採用を支援する。技術を次世代へ残す。何でもいいのです。

自社が売主に提供できる価値をIPO時点ですでに言語化できている会社は、単に「M&Aをしたい会社」から一歩進んでいます。

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M&Aの旗手 安藤智之の「最強企業の見分け方」

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