なぜM&Aの機会に差が生まれるのか
私は、結局のところ「売主から選ばれる会社かどうか」が大きいと思っています。
M&Aというと、買い手が対象企業を選ぶものだと思われがちです。しかし魅力的な企業には複数の買い手候補が現れます。買い手が相手企業を選ぶのと同じく、売主も『大切に育ててきた会社をどこに託すのか』を選んでいるのです。
身も蓋もない言い方をすれば、買い手にも「モテる」「モテない」があります。
その差は、提示価格ではないことが多いといえます。社長の熱量、意思決定の速さ、質問の質。そして何より、『この会社と一緒になったら、自分の会社はどうなるのか』という未来を描いてくれるかです。
売主の多くは、何十年という時間をかけて会社を作った経営者です。売却後には、社員や家族、取引先から『なぜこの会社に譲ったのですか』と聞かれることも多いのです。
そのとき、『一番高かったから』ではなく、『この会社なら社員を任せられる』『このグループなら、自分たちだけではできなかったことができる』と納得して答えられる理由が欲しいのは当然です。
ストロングバイヤーとは、「この会社に託す理由」を自ら作ることのできる会社だ
私は、ストロングバイヤーとは、「この会社に託す理由」を自ら作ることのできる会社ではないかと思っています。
McKinseyも2013年の「M&A as competitive advantage」で、M&Aを競争優位になり得る組織能力と捉え、その一つに「買い手としての評判」を挙げました。多くの企業は、相手から自社がどう見えるかを十分に考えていないといいます。
優れた買い手は、価格やシナジーだけでなく、相手企業が自社と一緒になることでどんな未来を描けるかを示すので、価格以外の次元でも選ばれます。場合によっては、まだ売却を検討していない企業から声が掛かることさえあります。
日本ではM&A仲介会社も関与します。売主から選ばれる会社は、仲介会社からも「自信を持ってご紹介しやすい買い手」になり、魅力的な企業とのM&Aの機会にも早く接しやすくなるのです。


