職務記述書の役割は、候補者に業務内容を伝えるだけにとどまらない。それは、企業が従業員の成長やキャリアアップをどう考えているかを示すシグナルでもある。固定された職務や硬直的な要件、現時点でのニーズを中心に構成された従来型の職務記述書では、候補者がその組織で長期的な未来を描く余地はあまり残されていないかもしれない。
リーダーシップのパイプライン(後継者育成の仕組み)を強化したい企業にとって、職務の定義や提示方法を見直す価値は十分にある。以下では、Forbes Business Councilのメンバーが、未来のリーダーをより的確に見極め、惹きつけ、育成するために、従来の職務記述書を刷新する方法を紹介する。
1. 資格ではなくスキルに焦点を当てる
必要な資格ではなく、求められるスキルに焦点を当てることだ。従来の職務記述書は学位や実績を重視しがちだが、職務を遂行するために必要なスキルに着目するほうが、優れた人材を見つける方法として有効である。また、セカンドチャンス人材のような過小評価されてきたコミュニティ出身者にも門戸を開くことで、より包摂的な職場をつくることにもつながる。こうした人材は他と同等の成果を上げ、離職率も低い。 - Maha Jweied, Responsible Business Initiative for Justice (RBIJ)
2. 人柄で採用する
タスクを中心とした職務記述書の作成をやめ、人柄を重視したものに切り替えよう。職務のリストからは、その人物が「今日その仕事ができるか」はわかるが、「将来的にその仕事を率いるリーダーに成長できるか」は何もわからない。私たちはまず、人柄の相性や価値観を重視して採用し、その後に本人の強みに合わせて職務を構築している。そうすることで、単に仕事をこなすだけのスタッフではなく、定着してくれるリーダーを獲得できるのだ。 - Kelli Behan-Aspland, Solar Buddies Ltd.
3. 企業文化を言語化する
採用を成功させるには、自社の文化を言葉にして伝えることが不可欠だ。経験やスキルも重要である。しかし、企業文化とのミスマッチはより大きなリスクであり、そのように扱うべきである。 - Efri Argaman, OwnEZ Inc.
4. 職務を共通の目的に結びつける
従業員は職務記述書に書かれた以上の存在であり、組織の顔であり、頭脳であり、心臓だ。共通の目的意識は、コミットメント、協働、そしてイノベーションをもたらす素晴らしい文化を生み出す。当社のリーダーシップチームはその好例だ。最初の従業員は現在セールス部門のトップを務めており、若手の弁護士はコンプライアンス担当シニアバイスプレジデントへと成長した。このような共通の献身的な姿勢があれば、人々が自らのポテンシャルを発揮するのを後押しできる。 - Einat Steklov, Kashable
5. リーダーシップのポテンシャルを優先する
従来の職務記述書は、技術的専門性に偏重し、リーダーシップのポテンシャルを軽視しがちだ。組織は、機能的スキルと並行して、戦略的思考、協働、判断力、ステークホルダー・マネジメント、そして変革推進力を優先すべきである。もはや問うべきは「この人物はこの職務を遂行できるか」ではなく、「この人物は、組織が次に向かうべき場所へと牽引する手助けができるか」である。 - JC Gaillard, Corix Partners
6. 仕事だけでなく、人物像を記述する
職務記述書は仕事内容を説明するだけでなく、求める人物像を描くべきだ。当社の職務記述書には、コアバリューと起業家オペレーティングシステム(EOS)に基づいた「求める人物像」というセクションがある。その人物は役割を「理解し(Get It)」、「望み(Want It)」、それを実行する「能力があるか(Capacity to do it)」。私たちが求めているのは、単に空席を埋める人ではなく、自分の役割に主体性を持つ人だ。それが高いエンゲージメントと未来のリーダーを生み出す。 - Linda Varrell, Broadreach Public Relations
7. その職務の先にあるキャリアを示す
職務記述書は、その職務に就く人物に3年後にどのようなリーダーに成長してほしいかを意識して書こう。成長や能力開発の機会、リーダーシップ開発プログラムへの参加、メンターシップを受けることや他者を指導することへの期待を明記する。「職務の記述(ジョブディスクリプション)」というよりも、「機会の概要(アウトライン・オブ・オポチュニティ)」と捉えることで、リーダーシップに関心がある誰もが、自らの成長した姿をイメージできるようになる。そうすれば、未来のリーダーを確保できるようになる。 - Maren Perry, Arden Coaching
8. 職務に成長を組み込む
企業は、現在のタスクだけで人材を規定するような、硬直化した職務記述書を見直すべきだ。そうではなく、成長の可能性、リーダーとしての行動、問題解決に対する期待、主体性を発揮する機会などを盛り込もう。パフォーマンスと開発の双方を考慮して職務を設計すれば、従業員は今後の歩むべき道を見出すことができ、組織は内部から未来のリーダーを育成できるようになる。 - Dr. Ayush Gupta, G & G Global Training Services
9. 職務が進化する余地を残す
職務記述書が個人の限界を規定すべきだという考え方を見直そう。未来のリーダーを育成したいなら、過去の職務履歴のリストだけでなく、ポテンシャル、好奇心、主体性に着目することだ。職務には、会社の進化に伴って、より大きなチャンスへと成長していける余地を残しておくべきである。 - Raquel Gomes, Stafi
10. 継続的な成長への期待を明確にする
往々にして、一部の期待事項は言葉にされないまま放置されてしまう。当社は職務記述書において、自己研鑽と継続的な自己開発が職務の一部であることを明記することが重要だと考えている。もちろん組織は支援のためのリソースを提供するが、プロフェッショナルとしての成長を促す主たる動機は、リーダーを目指す本人から生まれなければならない。 - Dennis Wilke, Rosedale Technical College
11. 硬直的な資格要件を見直す
要件のセクションを見直そう。従来の職務記述書は、学位、経験年数、肩書きといった「経歴」でスクリーニングを行うが、経歴は誰がリーダーになれるかについてほとんど何も教えてくれない。何十人もの営業担当者をトレーニングしてきた結果、未来のリーダーとなるのは資格を持つ人ではなく、指導を素直に受け入れられる(コーチャブルな)人であると学んだ。職務が生み出すべき成果に基づいて記述し、その成果を出せることを証明した人物を採用しよう。履歴書は面接を予測する。成果はリーダーを予測する。 - Ramon Cadiz, Upward Momentum LLC
12. 決定権とステークホルダーへの責任を明確にする
職務記述書は、書かれ方が逆になっていることが多い。現在の業務内容がリストアップされ、過去のことしか物語らない経験年数が記載されている。それよりも、その職務がどのような決定権(裁量)を持ち、誰を納得させる必要があるのかを知りたい。そうすることで、単に今の仕事をこなすだけでなく、次の職務へと成長できる人物が見えてくる。その上で、「2年後にさらに大きな仕事をこの人物に任せられるか」を自問するのだ。 - Kent Gregoire, Symphony Advantage
13. すべての職務にリーダーシップを発揮する機会を組み込む
職務記述書は多くの場合、その人が「何をしなければならないか」を規定しており、「どのような存在になれるか」を示していない。企業は、すべての職務に主体性、問題解決、リーダーシップの余地を組み込むべきだ。タスクを実行するためだけに人を採用していては、未来のリーダーの育成に苦労することになる。優秀なパフォーマンスを発揮する社員には、肩書きを超えて意思決定を行う機会を与えよう。ポテンシャルが後回しにされることなく、職務の一部として組み込まれているときにこそ、リーダーシップのパイプラインは成長する。 - David Price, The Price Group
14. タスクではなく成果に焦点を当てる
実行するタスクではなく、その職務が責任を負う成果に基づいて職務記述書を書き直そう。タスクリストは「どうやって忙しく過ごすか」を教えるが、成果は「何を勝ち取るべきか」を示す。リーダーを育てるのは後者だけだ。それぞれの職務について、その人物が責任を持つべき2〜3の成果を明確にし、それを達成する方法は本人に委ねよう。成果に責任を持つ人々は自ら決断を下すことを学び、その判断力こそが、現在のパイプラインに不足しているものなのだ。 - Jason Sisneros, Built To Exit
15. 革新的な思考の余地を残す
非常に多くの場合、職務記述書には重要なタスクだけでなく、何十もの項目が詰め込まれており、これが候補者の「現状に挑戦し、枠にとらわれずに考える能力」を制限してしまうことがある。医療分野においては、患者や医療システムが直面している極めて大きな課題に対処するために、革新的なアプローチが求められる。リーダーはイノベーションを起こすものであり、単にチェックリストを埋めるだけの存在ではない。 - Jigar Thakkar, Longitude Rx
16. 経験年数の先を見る
企業は、経験年数をリーダーとしての準備度と同一視する職務記述書を見直すべきだ。経験が育む判断力や文脈理解に、手軽な近道はないからである。焦点を当てるべきなのは、どの経験が本当に重要なのかであり、すべての経験が同じではなく、リーダーとしての可能性にはさまざまな形があると認識することである。優れた職務記述書は、今日必要なものを定義すると同時に、明日組織が必要とするものへ成長する可能性も見極めるべきである。 - Neelima Misra, DaasTek
17. キャリアアップの道筋を明示する
より強固なリーダーシップパイプラインを構築するために、職務記述書ではキャリアアップ(上昇志向)の道筋をより意図的に強調すべきだ。従業員の離職は成長途上のビジネスにとって致命的になりかねない。早い段階でお互いの成功のビジョンを描くことで、将来のキーパーソンとなる従業員が自らの選択肢やキャリアパスを見出せるようになる。早期に成長機会を提示することは、将来のチームメンバーが自社で働く未来を描く手助けとなる。 - Chase Fairchild, Bolt Marketing
18. 意思決定の権限を明確にする
タスクではなく、意思決定を軸に職務記述書を書き直そう。職務リストは、その人が何をするかを教える。しかし、任されている意思決定のリストは、その人が実際に何を所有(主導)するかを伝えてくれる。リーダーシップへの準備度とは、勤続年数や肩書きではなく、この主体性にこそ基づくものである。各レベルでの意思決定権を明確に定義できれば、単に「より多くの仕事」を引き受けるだけでなく、真に「より大きな権限」を持つ準備ができている人物が見えてくる。これにより、職務上の要請を迫られる前に、未来のリーダーを見つけ出すことができるのだ。 - Aaron Wolowiec, Event Garde
19. 職務記述書を柔軟なものとして扱う
職務記述書を、ある人物の価値を恒久的に規定するものとして扱うのをやめよう。肩書きは、その人物が今日どの位置にいるかを示すにすぎないが、発揮されたスキルや成果は、次にどこへ進むことができるかを教えてくれる。より強固なリーダーシップパイプラインは、単なる勤続年数ではなく、業務を通じて能力が開花していくプロセスを見届けることで構築される。 - Doug Dennerline, Betterworks



