サンフランシスコ大学で「AIと思考の未来」という講義を共同で担当することになった初日、マーク・ミラーとラリー・エバートは、学生たちに人工知能に対する考えやその利用方法について意見を求めた。神学者であるミラーと、システムエンジニアであり、企業の技術変化への対応を支援する経営コンサルタントでもあるエバートの2人は、学生たちからAIに対する手放しの熱狂が返ってくることを予想していた。しかし、返ってきた反応は違った。
学部生たちの多くは、OpenAIのChatGPT、アンソロピックのClaude、グーグルのGeminiといったツールの登場以降、生成AIを広範に試してきた。それでも彼らはAIに対し、幅広い懐疑を示したのだ。
「本当に驚いた」と、カトリック系イエズス会立の私立大学である同校で神学・宗教学の学科長を務めるミラーは語る。「全員が『大好きだから、絶対に取り上げないでほしい』と言うだろうと思っていたのだ」。しかし実際には、「少なくとも4分の3の学生が、AIに対してかなり否定的だった」
学生たちは、潜在的な雇用の喪失、事実の誤り、サイバーセキュリティの侵害、AIとの関係性が悪い方向に進むこと、そして、一部の学生によるAIを使った「不正行為」に対する不快感などを挙げた。AIシステムの訓練や運用に必要な巨大なコンピューティング・インフラが環境に与える影響を指摘する学生もいた。しかし、彼らの否定的な意見の大部分は、AIツールを使うことで、エバートの言葉を借りれば自分たちの「思考力が低下する」という感覚に集中していた。「ある学生は、それをジャンクフードになぞらえていた」とミラーは語る。
AIが人間の思考に与える影響は、すでに研究の対象として関心が高まっている分野である。今年初めに発表されたペンシルベニア大学ウォートン校の研究者らによる広く引用されている研究では、人々が自らの批判的思考よりも、AIに判断を委ねる傾向が強まっている証拠が示され、研究者らはこの現象を「認知の明け渡し(cognitive surrender)」と呼んだ。
この研究に携わった研究者の一人であるスティーブン・ショーは、AIツールがさまざまな課題を迅速かつ適切に処理できるため、学生がこの技術を良い成績と結びつけがちになると指摘する。「その結果、気づかないうちに徐々に認知の明け渡しに陥ってしまう可能性がある」と、キングス・カレッジ・ロンドンのマーケティング助教授であるショーはインタビューで語った。「見落とされがちなのは、その過程で犠牲になるかもしれないものだ。すなわち、自立的に思考し、議論に疑問を投げかけ、専門知識を深めていくという実践である」



