米国は、民間企業が外国の犯罪組織に対して攻撃的なサイバー作戦を実施できる仕組みを初めて導入しようとしている。米国人から数十億ドル(数千億円規模)を盗む犯罪ネットワークを追跡・妨害するため、いわば「政府公認のデジタル海賊」に当たる私掠船の制度をサイバー空間へ応用する構想だ。
編注:私掠船は、政府から私掠免許状を与えられ、戦時に敵国の船を攻撃・拿捕し、戦利品の一部を報酬として得た民間船。政府の許可なく略奪する海賊とは異なる。
米政府、「デジタル私掠船」をサイバー犯罪対策に投入へ
ドナルド・トランプ大統領は米国時間2026年8月12日、大統領覚書に署名した。米国人を狙う外国の犯罪組織に対し、審査を通過した米企業が攻撃的なサイバー作戦を実施できる制度を創設する内容だ。
覚書は「米国の民間部門は世界で最も革新的で、技術的に進んでいる」と記している。その規模、速度、能力によって、米国は攻撃的サイバー作戦で重要な優位性を得られるとしている。
米議会でも、民間のサイバー能力を政府の監督下で活用する法案が提出されている。ユタ州選出のマイク・リー上院議員は2026年7月、サイバー空間で私掠免許に相当する権限を認める上院法案を提出した。
法案は、大統領が民間事業者を「デジタル私掠船」として認可できるようにする。認可された事業者はサイバー犯罪者の活動を妨害し、盗まれたデジタル資産を回収して、回収資産の一部を連邦政府に納める。
テネシー州選出のティム・バーチェット下院議員は、下院版の下院法案9697号を提出した。リーは、この法案を「究極のホワイトハット・ハッキング」と呼んでいる。
大統領覚書と法案は、民間企業の能力を国防に活用する取り組みとして、過去数世代で最も野心的なものだ。ただし、政府が民間に攻撃権限を与えるという発想自体は新しくない。その起源は米国建国期までさかのぼる。



