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2026.09.30 16:36

偽領収書から着服まで、AIが変える職場不正と検知の最前線

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AIは職場での不正のあり方を変えるだけでなく、それを加速させている。従業員は、説得力のある偽の領収書をものの数秒で作成し、従来のチェックではまず見抜けないほど巧みに文書を改ざんできるようになっている。その一方で、雇用主側も従来のチェックで見落とされがちなパターンや異常を検知するためにAIを導入しており、AIを悪用した欺瞞とAIを駆使した検知の間で、激化する戦いが繰り広げられている。

増加する職場での不正

AIが職場での不正を生み出したわけではないが、それに伴う手間(フリクション)の多くを取り除いている。経費不正はその一例だ。エンバース(Emburse)の調査によると、調査対象となった米国の従業員の40%がAIを使って偽の領収書を作成したことがあり、そのうち19%は架空の購入履歴を捏造し、15%は実際の購入金額を水増ししていたという。

検知データは、この手法が急速に広がっていることを示唆している。アップゼン(AppZen)の報告によると、同社の顧客が検知した不正な領収書のうち、AIが生成した領収書の割合は2025年3月時点のゼロから、2026年5月中旬には70.8%へと急増した。生成AIを使えば、説得力のある請求書や給与明細、銀行取引明細書、その他の証明書類を数秒で作成できる。不正行為そのものは目新しいものではないかもしれない。変わったのは、従業員がそれを裏付ける証拠を、いかに素早く、安く、説得力のある形で捏造できるようになったかという点だ。

不正の手口が進化するなか、雇用主は常に一歩先を行くためのAIツールの導入を迫られている。しかし、より鋭い検知を約束するこの同じ技術は、プライバシーや合法性、さらには自動化の限界についての疑問も投げかけている。新たに浮上している課題は、単に不正を摘発することではなく、責任ある方法でそれを行うことだ。

点と点をつなぐAI

アクションワン(Action1)のプロダクト戦略担当バイスプレジデントであるピーター・バーネット氏は、AIの最大の強みは、一見普通に見える行動を相互に関連付け、意味のあるリスクシグナルに変換できる点にあると主張する。現代のシステムは、孤立した異常を指摘するのではなく、パターンを探し出すのだ。

「例えば、ある従業員が突然未認可のソフトウェアをインストールし、通常の勤務時間外に機密システムにアクセスし、その後大量のデータを転送したとする。この場合、個々の行動を単独で見るよりも、組み合わせて見る方がはるかに注目に値する」と同氏は語る。

別の例としては、普通とは異なる給与や経費の処理と、アカウントへのアクセス権の変更が重なるケースだ。「ある人物が、普段使わない財務システムにアクセスしながら、不審な経費を申請し始めた場合、その組み合わされたパターンはより大きな意味を持つようになる」とバーネット氏は言う。

極めて重要なのは、AIは全社一律の基準ではなく、個々の従業員の過去の行動履歴と照らし合わせて比較すべきだという点だ。「人によって勤務パターンは異なるため、AIは特定の職務やデバイスにおける『正常』が何であるかを学習し、そこからの著しい逸脱を検知すべきだ。これにより、不要なアラートを減らしながら、より質の高いシグナルを生み出すことができる」

自動化と人間の判断のバランス

小規模企業においては、自動化された異常検知に過度に依存するリスクがある。ブリージー(Brizy.io)の共同創業者兼CPOであるボグダン・コンドゥラケ氏は、不正検知システムは従業員の監視ではなく、あくまでビジネス上のリスクに厳密に焦点を当てたものでなければならないと警告する。

「経費が会社の規則に適合しているかを確認することと、従業員のコンピュータ上での活動を常に追跡することとの間には、大きな違いがある」と同氏は言う。「AIは、何百もの取引をチェックして不審なパターンを特定するような、繰り返しの作業を処理すべきだ。一方で、背景(文脈)の判断は人間が行うべきである。従業員には、AIには理解できない、不審な経費や通常とは異なる勤務パターンの完全に正当な理由があるかもしれないからだ」

同氏のこのアドバイスは、より大きなトレンドを反映している。AIは異常を表面化させるべきだが、それを解釈するのは人間でなければならない。

人間が見落とすものをAIが発見するとき

Direction.comは薬局向けのSEOを手がける一方で、在庫管理やロス防止システムも統括している。CEOのクリス・カークシー氏は、1日に約400件の処方箋を扱い、毎週数十件の返金処理を行うある薬局での出来事を振り返る。

「ほとんどの返金は、気が変わった顧客や、間違った商品を受け取った顧客によるものだ」と同氏は言う。「われわれは、ブランド医薬品や高価なサプリメントといった高価値の在庫を追跡するために、TecsysIQ Image Captureというシステムを導入した。システム上の在庫数と実際の棚卸し数との間に、原因不明のズレが頻繁に見つかっていたからだ」

導入から3カ月後、システムはあるパターンを検知した。1人のスタッフが、同僚よりも40%多い返金処理を行っていたのだ。AIは各返金処理を画像ログと照合した。いずれのケースでも、その従業員は返金用のバーコードをスキャンしていたものの、返却箱に商品が戻される様子はカメラに一切写っていなかった。

「私は6週間にわたり27件の返金処理をレビューした」とカークシー氏は言う。「いずれも同じ手順で行われていた。迅速に返金処理を行い、商品は返却せず、返金はストアクレジット(店舗でのみ使える引換券)として処理されるためキャッシュドロワー(レジの引き出し)の現金は一致する。従業員はそのクレジット分の現金を着服していたのだ。被害総額は2,400ドル(約37万円)だった。本人を呼び出して画像ログを見せたところ、すべてを認めた。即刻解雇処分とした」

あの画像ログがなければ、損失はサプライヤーのミスや顧客による万引きのせいにされていただろう、とカークシー氏は語る。さらに同氏はこう付け加えた。「この件をきっかけに、現在では全3店舗で同じシステムを稼働させており、それ以降同様の事案は発生していない。また、リアルタイムで在庫レベルを追跡する『Inventory Visibility(在庫可視化)』モジュールも試験導入しており、損失につながる前に問題を捉えられるようにしている」

承認前に不正を見抜く

文書の改ざんも、急速に増加している不正の手口の一つだ。コピーリークス(Copyleaks)のようなツールは、改ざんされたテキストや画像の領域を特定することができ、その精度の細かさは、雇用主が経費不正や文書による欺瞞を調査する方法を変えつつある。

CEOのアロン・ヤミン氏は、シームレスな統合が鍵だと話す。「例えば、買掛金管理の受信トレイに届く請求書を考えてみてほしい」と同氏は言う。「人間の担当者が承認し、支払いが行われた後になって初めて問題が発覚するのではなく、技術によって受領の段階、つまり承認待ちのキューに入る前にフラグを立て、改ざんされたと思われる特定の箇所を指摘することができるのだ」

それは、明細の合計額と合致しない総額であったり、過去の請求書と一致しない署名であったりする。「審査担当者に渡されるのは、中身のわからない(ブラックボックス化した)リスクスコアではない。代わりに、フラグが立てられた領域が表示されるため、推測に頼ることなく、承認するか、上申するか、あるいは背景を確認するために元の文書を求めるかを判断できる」と同氏は付け加える。

監視を伴わない検知

AIを活用した不正検知ツールを導入する雇用主は、技術的な可能性が雇用上の権利を損なわないように配慮しなければならない。デヴォンシャーズ(Devonshires)のパートナーであるケイティ・マグワイア氏は、正当なモニタリングと違法な監視との境界線は、「必要性」「比例性(妥当性)」「透明性」という3つの原則によって定義されると語る。

「まず何よりも、モニタリングは正当なビジネス目的によって正当化されなければならない」と同氏は言う。「不正防止は正当な目的だが、雇用主は、よりプライバシーへの侵害が少ない他の方法では不十分である理由、ひいてはAIによるモニタリングが必要である理由を証明できなければならない」

リスクの高い職務であっても、モニタリングは対象を限定したものでなければならない。そして、GDPR(一般データ保護規則)およびデータ保護法に基づき、従業員に対して周知を行う必要がある。

AIが不審な行動を検知した際、そのアラートはあくまで指標であり、証拠ではないとマグワイア氏は強調する。「雇用紛争において、労働裁判所は雇用主に対し、アルゴリズムによる単なる疑いではなく、検証可能で説明がつき、かつ裏付けのある証拠に依拠することを求める」と同氏は言う。「AIは補助的なツールとしては優秀だが、人間の判断に代わるものではない。AIが検知した異常は、システムログや領収書、あるいは防犯カメラの映像といった証拠によって裏付けられる必要がある。AIのアラートが1回出ただけでは、懲戒処分を正当化することはできない」

AIは不正のあり方を変えるが、人間の判断に代わることはできない

AIは、攻防の双方において職場での不正のあり方を変貌させている。AIは欺瞞を生成することを容易にする一方で、機械が検知した異常を、公平で説明可能、かつ裏付けのある決定へと昇華させる機会を雇用主に与えてもいる。AI主導の職場不正対策において、何かが「おかしい」と気づくことは容易になりつつある。しかし、それが何を意味しているのかを理解するには、今なお人間の力が必要だ。

(forbes.com 原文)

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