全米大学・雇用者協会が8月上旬から9月半ばにかけて送付したアンケートに対して、201の企業から回答があった。今学年で大学や大学院から卒業する学生の採用計画に関するアンケートである。回答を寄せたのは主に大企業で、Aetna、シェブロン、デュポン、プロクター・アンド・ギャンブル、メイシーズなどだ。
企業は、何を専攻した学生を最も求めているのだろうか? 全米大学・雇用者協会は、人気の高い学士号を11学位、修士号と博士号では10学位をリストにしている。案の定、理系の学位は人気が高く、学士では会計学が一番人気で、修士ではコンピューターサイエンスが、博士では電気工学の人気が最も高くなっている。
人気の高い学位と、それぞれの分野の学生を採用したいと答えた企業数を、以下に3つの表にまとめた。
社会学及び人文学科は、人気の高い専攻のどのリストにも載っていない。だが、がっかりすることはない。この報告書の他のリストによると、200の企業の内40社がコミュニケーション学専攻学生を、33社が経済学専攻学生を、14社が心理学科の卒業生の採用を予定しており、8社は英語学と英文学専攻の学生を採用したいと考えている。社会福祉は社会学のリストの最下位で、その分野を学んだ学生の採用を計画しているのは7社に留まる。人文学科の最下位は「地域研究及びジェンダー研究」で、その分野の専攻学生を求めているのは、わずか1社だ。
もっとも、社会福祉団体や政府機関は、このアンケートの対象となっていない。社会福祉を学んだ学生にとっては、社会福祉団体や政府機関こそがターゲットだろう。ジェンダー研究の専攻学生は、家庭内における虐待を扱う非営利団体や、Emily’s Listのような女性の権利保護を掲げる組織に応募するといい。これまでにも書いてきたように、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のBruins Feminists for Equalityのような大学内の女性団体でリーダーシップを発揮してきたことを示す履歴書があれば、女性の権利保護を推進する団体にとって魅力的に映るはずだ。
人文学科の学生にぜひ読んでもらいたい本誌の記事が二つある。一つは7月に掲載されたジョージ・アンダースの特集記事、「That ‘Useless’ Liberal Arts Degree Has Become Tech’s Hottest Ticket」(役に立たないと言われる人文系学位、テクノロジー企業への最もホットな切符に)だ。アンダースはこの記事で、Slack Technologiesのような急成長企業が、理路整然とした文章を書き、クリエイティブに思考できる、演劇や哲学を専攻した人材を求めているとレポートしている(数十億ドルの価値を持つユニコーン企業であるSlackは、全米大学・雇用者協会のアンケートに答えていない)。本誌に寄稿したジェフリー・ドーフマンの記事、「Surprise: Humanities Degrees Provide Great Return On Investment」(意外にも、人文系学位は投資利益率が高い)にも目を通してほしい。Payscale.comのデータを分析したドーフマンによると、全米大学・雇用者協会のリストではほぼ最下位で、わずか3社しか関心を示さなかった哲学専攻の学生は、大学に進学せずに哲学を専攻しなかった場合に較べて、「生涯収入利益」が658,900ドルにも及ぶという。
とはいえ、大学や大学院の卒業時に大企業に就職したければ、上のリストに名前の挙がった専攻を選ぶのが確実だろう。