将来は、筋肉細胞を動力とするこうしたロボットが、「従来の機械では傷つけてしまいかねない環境や、状況が予測できない環境の探査といった、繊細な仕事」をこなせるようになるかもしれない、とラマンは言う。筋肉組織は「柔らかく、周囲の状況に反応し、自ら傷を治すこともできる」からだという。
研究者らは論文のなかで、バイオハイブリッド技術はいずれ「精密なマイクロサージェリーから無人探査に至るまでの、将来のさまざまな用途」で使えるようになる可能性があると書いている。
これまでの経緯
ラマンの研究室は2025年3月、ラマン自身が「複数の方向に力を生み出す、骨格筋で動く初めてのロボット」と呼んだものを開発した。骨格筋とは、手足などを自分の意思で動かすための筋肉である。研究チームは、ゲルでできた円盤に微細な溝を型押しし、その上に生きた細胞を置いた。細胞は育って、ゲルの表面に沿った薄い層になった。光で刺激すると、細胞は複数の方向に動いた。「このような筋肉の構造をゼロから作り上げた例は、それまで誰も見たことがありませんでした」とラマンはMIT Newsに語っている。
ただし、その動きは「ごくわずか」だったとラマンは言う。そこで新たな研究では、動きをできるだけ大きくし、小型ロボットを動かせるだけの力を生み出すことをめざした。
泳ぐロボットを開発するにあたり、ラマンのチームは、土台となるゲルの素材を見直した。以前の研究で使ったのは、血液が固まるときにできるたんぱく質で、ごく柔らかいゲルになる「フィブリン」である。その代わりに、生体組織を人工的に作る研究でよく使われる「ゼラチンメタクリレート」を試したところ、筋肉がよりそろった向きで育ち、より大きな力を生み出すことがわかった。チームは素材のほかにも、ゲルの硬さや、表面に型押しする溝の大きさと形といった条件を変えながら、実験を重ねた。
「私たちは、生きた筋肉細胞を支えられるよう、こうした条件をすべて最適化したいと考えていました」とラマンは言う。


