ニューロダイバージェント(脳の多様性を持つ)人材の需要は今、多くの人事リーダーの記憶にないほど高まっている。しかし同時に、彼らはかつてないほど誤解されてもいる。
雇用主側の売り文句は寛大だが、いささか単純すぎる。ADHD(注意欠如・多動症)は「創造的なスピード」に、自閉症は「パターン認識能力」に言い換えられる。AIがあらゆる職務記述書を書き換えるなか、こうした特性は、企業に欠けていた強みとして売り込まれている。
門戸が開かれつつあるのは重要だ。特にZ世代の53%が自身をニューロダイバージェントと認識している現状ではなおさらだ。しかし、問題はここからだ。誰かを「スーパーパワーの持ち主」と呼ぶことと、その人にとって働きやすい職場を作ることは同義ではない。そして、さまざまなデータがそのギャップを裏付けている。
裏付けとなる実態と、その偏り
EYの「グローバル・ニューロインクルージョン・アット・ワーク調査」によると、ニューロダイバージェントの専門職の約36%が、AIやビッグデータなど経済成長が最も速い分野でエキスパートレベルのスキルを有している。しかし、職場で真に包摂(インクルージョン)されていると感じているのはわずか25%にすぎない。
UiPath(ユーアイパス)の調査では、ニューロダイバージェントの従業員はAIデータのアノテーション(ラベル付け)において生産性が150%高かった。ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)では、ニューロダイバースなテスターチームが他チームに比べて30%高いパフォーマンスを記録した。
見事な数字だ。だが、これらがどのような業務であるかに注目してほしい。ラベル付け、テスト、アノテーションである。
いわゆる「スーパーパワー」とは結局のところ、雇用主が収益化できる能力を指しているにすぎない。看護師や大学教授、あるいは同じオフィスの会計士として働くニューロダイバージェントな人々について、そんな物語を書く者はいない。しかし、彼らこそが多数派なのだ。そして、その多数派は「問題」として扱われている。
採用後の現実を示す数字
ドレクセル大学の「全国自閉症指標レポート」によると、自閉症の診断を受けた若者のうち、20代前半までに有給での勤務経験があったのはわずか58%で、その大半がパートタイムや低賃金の仕事だった。
いったん組織に入っても、明るい見通しはそれほど見えてこない。
ハリス・ポールとUnderstood.orgが実施した2026年の「職場におけるニューロダイバーシティ調査」によると、自身の特性の開示が不利益につながるのではないかと懸念しているニューロダイバージェントの従業員は70%に上り、2年前の59%から上昇している。
ほぼ10人中8人が、配慮を求めること自体にスティグマ(偏見)が存在すると答えている。また、70%は自分にどのような権利があるのかを知らず、60%は誰に相談すべきか分からない。半数以上が、そうした支援プログラムは単なる見せかけにすぎないと考えている。
制度は存在しても、組織のカルチャーがそれに追いついていないのが実態だ。
「非凡」でなければ価値がないというプレッシャー
通常、エイブリズム(健常者中心主義)は当事者を排除することを意味する。「スーパーパワー」という物語は仲間入りを許可してくれるが、それには毎日「非凡」であり続けなければならないという条件がつく。
定型発達(ニューロティピカル)の従業員で、席を守るために30%高い生産性を求められる人はいない。
しかし、ニューロダイバージェントの従業員にはそれが期待されている。そのため、普通に過ごすだけの最初の1週間が始まると、多くの人が自分の特性を隠す「マスキング」をせざるを得なくなる。
採用プロセスも同様の矛盾を抱えている。ニューロダイバージェントな才能を称賛するAIは、同時に彼らを容赦なくふるい落とし、非線形なキャリアパスを減点対象にしたり、ビデオ面接での変則的な視線や話し方を問題視したりする。
配慮にかかる費用は高くない
これこそが、リーダーたちが最も誤解している点だ。
「ジョブ・アコモデーション・ネットワーク」の調査によると、職場における配慮の61%は費用が一切かからず、一時的な費用が発生する場合でも、その中央値は300ドル(約4万円)だった。
本気で心理的安全性の高い職場環境を構築しようとするなら、発想を転換しなければならない。
雇用主ができる4つのアプローチ
- 標準仕様として設計する。構造化面接、書面によるフォローアップ、感覚的な環境の選択肢、そして明確なフィードバックは、すべての従業員に役立つものであり、これらを利用するためにわざわざ自身の特性を開示する必要はない。
- 選考ツールを監査する。採用アルゴリズムが非定型の候補者を公平に扱っていることを証明できないのであれば、初出社日を迎える前に、裏でせっかくのインクルージョンの取り組みを台無しにしていることになる。
- 配慮を可視化する。誰も開かないハンドブックに記載するのではなく、オンボーディングやマネージャー研修、そして日々のチーム運営に配慮の実践を組み込む。
- 人数ではなく、成長・昇進の度合いを測定する。ニューロダイバージェントの人々をエントリーレベルの職種で採用し、そのまま放置することはインクルージョンではない。それは単なるポーズ(写真撮影の機会)にすぎない。
結論
「スーパーパワー」のストーリーは、ニューロダイバージェントな人々を組織へ迎え入れるきっかけにはなった。しかし結局のところ、ほとんどの組織はそこで立ち止まっている。リーダーたちが次に目指すべき成長は、ニューロダイバージェントの従業員が会社に何をもたらしてくれるかではない。現在の職場環境が彼らにどのような影響を及ぼしているのか、そしてそれを改善する意志が組織にあるかどうかなのだ。



