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2026.09.30 09:24

AIでコスト削減しても、競争に取り残される理由

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より大きな競争優位性は、安価になった「思考」を、顧客が評価する迅速な実験、意思決定、そして改善へと変換することからもたらされる。

CEOは人工知能(AI)を活用して人件費を削減することで、巨額の利益を生み出すことができる。その後に続く議論を始める前に、まずはこの事実を認めるべきだ。

2025年6月、C.H.ロビンソンは、同社のAIオーダーエージェントが、電子メールによる配送依頼を解釈し、約90秒でオーダーを作成していると報告した。同社によると、このエージェントは1日に5500件のトラック輸送オーダーを処理し、毎日600時間の労働時間を削減しているという。これらは同社による削減実績の推計値だが、そこに大きな経済的機会があることは容易に理解できる。

ここで、2社の競合企業が同様のコスト削減を実現したと仮定してみよう。一方の企業はマージン(利益率)を向上させる。もう一方の企業は、それに加えて顧客の課題を理解し、解決策をテストし、ビジネスの仕組みを変えることにも投資する。改善のサイクルを重ねるうちに、たとえ同じモデルを使用していたとしても、両社の能力には格差が生じるようになる。

これこそが、筆者の著書『The Generative Organization(生成する組織)』で探求している戦略的課題である。AIは企業に対し、顧客にとって重要な事柄について、競合よりも早く学習する機会を提供する。人件費の削減は、その優位性を築くための資金源となり得るのだ。

安価になった「思考」が、ビジネスの挑戦領域を変える

コンピューティングのコストは数十年にわたり低下し続けてきた。現在という時代がこれまでと異なるのは、経済的に実行可能となる「思考」の範囲が広がった点にある。

人々は必要なものを自身の言葉で表現し、結果を検証し、詳細な記憶が新しいうちにそれをブラッシュアップできるようになった。専門家の知識が、実際に機能する成果物へと変換されるまでの道のりは短くなっている。また、AIモデルは、かつては共同分析に多大なコストがかかっていた言葉や画像、その他の情報を結びつけることもできる。さらに、十分な数の代替案を探索できるため、以前は実用的ではなかった実験も、試す価値のあるものへと変わる。

P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)で行われた実地実験が、その可能性を示している。研究者らは776人の経験豊富な専門職を、AIの有無、個人またはペアという条件下で製品イノベーションのタスクに割り当てた。その結果、AIを使用した個人は、AIを使用しないチームと同等のパフォーマンスを示した。また、AIを使用した商業および研究開発(R&D)の専門家は、技術的および商業的な検討事項をよりバランスよく組み合わせた提案を作成した。なお、この研究は限定されたイノベーションタスクを対象としており、すべてのチームが代替可能であることを証明するものではない。

CEOにとって興味深い可能性は、部門の垣根を越えて課題を検討できる人材が増えることだ。有用な専門知識を意思決定に取り入れることが、より容易になる。

FMロジスティックは、倉庫業務においてこれに関連した機会を追求した。同社は、GoogleのAlphaEvolveに既存のルート選定アルゴリズムと、実際のピッキング経路に基づく評価を提供した。システムは代替案を生成し、運用の制約条件に照らし合わせて検証した。FMロジスティックとGoogleは、従来の最良ソリューションを上回る10.4%のルート効率改善を報告し、その後、パイロット版が実際の生産現場で稼働している。

企業の業務プロセスそのものが、定期的な実験の対象になり得る。製造工場における実験ライン、すなわち基幹業務を改善するための場所を思い浮かべてほしい。コンサルティング、カスタマーサービス、購買など、情報を集約的に扱うその他の活動にも、同様の機能が必要である。

マネジメントサイクルも加速させる必要がある

分析が速くなるだけでは、企業の意思決定や行動は速くならない。ハーバード・ビジネス・スクールでマネジメント情報システムを教えていた際、私たちは「オペレーティングサイクル」と「マネジメントサイクル」を区別していた。

オペレーティングサイクルとは、注文の処理、顧客への対応、製品の製造など、実際に業務が遂行されるプロセスを指す。一方、マネジメントサイクルとは、組織が変化の必要性を認識し、意思決定を行い、リソースを配分し、対応を承認するプロセスである。

顧客からの苦情を毎日分析できても、方針変更に四半期ごとの会議が必要なら、ボトルネックの場所が移っただけである。逆に、経営陣が意思決定を早めても、現場がそれを実行できなければ、決定事項が積み上がるだけだ。両方のサイクルを調整しなければならない。

ハパックロイドは有用な例を提供している。同社のAIシステムは毎日顧客のフィードバックを取り込み、チームの2週間ごとの計画サイクルに合わせたレポートを作成する。船積み指示書(Shipping Instructions)のプレビュー機能を求める要望が繰り返し寄せられたことで、チームはその機能の優先順位を上げ、リリースへとつなげた。その後のフィードバックでは、該当する要望が解決されたことが示された。これは同社による改善の事例報告であり、収益や顧客維持率に関する対照実験ではない。

ここで重要なのは、顧客の声を聞くことと、サービスを変更することとの間の「つながり」である。ダッシュボード単体では、そのつながりを生み出すことはできない。

筆者はこれまでに、部分的な自動化(自動化の孤島)を歓迎しながらも、それを構築した従業員に対して、本来の業務の傍らでより広範な再設計を行うよう期待する企業を見てきた。チームがせっかく機会を見つけても、資金調達や専門知識の獲得、意思決定の権限に至る明確な道筋が存在しないのだ。

大規模な変革を、いつまでも「課外活動」のような扱いで従業員に任せ続けることはできない。

顧客に最も近い従業員が、自発的に改善プロセスを立ち上げ、サポートを要請できるようにすべきである。問題の原因が数部門先にある場合もある。AIはその調査を支援できるが、行動を起こせるようにするのはマネジメントの役割である。

学習のための予算を確保し、プロセス全体を測定する

筆者であれば、AI予算の一部をビジネス改善のための実験に割り当てる。業務上の実験については、ポートフォリオ全体でコストを回収できるレベルを目標とするのが妥当だろう。いくつかの試みは失敗に終わる。しかし、それ以外の試みによって、それらの失敗や学習コストを補って余りある価値を生み出さなければならない。

モデルの使用料だけでなく、評価、専門家の時間、統合、そして実装にかかるコストも合算して考えるべきだ。見込みのありそうなデモンストレーションは、経済的有効性を検証するテストの始まりにすぎない。

長期的なR&D(研究開発)には、異なる投資ロジックが必要となる。コールセンターの実験であれば数日で成果が出るかもしれないが、科学的な発見が商業製品になるまでには何年もかかる場合がある。それぞれの潜在的なビジネスへのインパクトと、価値が現実のものとなるまでの妥当な期間に基づいて評価すべきだ。

その上で、顧客からのシグナル検知から、改善の実装に至るまでのプロセス全体を測定する。情報が利用可能になるまでにどれだけの時間がかかるか。誰かが意思決定を下すまでにどれだけの時間がかかるか。変更が現場に届くまでにどれだけの時間がかかるか。そして、それが実際に顧客の助けになったか。顧客維持率、シェア・オブ・ウォレット(顧客内シェア)、従業員あたりの売上高、資産稼働率などの指標が、それらの改善がビジネス成果に結びついているかどうかを示す手がかりとなる。

最後に、システムを価値あるものにする専門知識を保護することだ。専門家はシステムの知識更新に関わり続ける必要がある。また、初心者が判断力を養うための時間も必要だ。筆者が推奨するアプローチの一つに「ソクラテス・モード」がある。これは、モデルが学習者に質問を投げかけ、例外的なケースを提示し、専門的な基準に照らしてその推論の根拠を説明させるというものだ。これを行うための時間を確保すべきであり、顧客に対応する従業員が、すべての取引をトレーニングセッションに変えなければならないような状況は避けるべきだ。

競争優位性は、AIによって生み出された余力を、企業がどう活用するかにかかっている。顧客にサービスを提供するより良い方法を繰り返し発見する競合は、まったく異なる脅威へと進化する可能性がある。

蒸気船の時代にクリッパー船を最適化するため、多大な創意工夫を費やすことはできる。しかし、AI投資の一部は、顧客が次に何を必要とするかを発見し、組織がそれを構築できるようにするために確実に振り向けるべきだ。

(forbes.com 原文)

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