最新研究によれば、家族内で受け継がれる珍しい遺伝子変異が、肺がんのリスクを25倍に高める可能性がある。
米国マサチューセッツ州ボストンにあるダナ・ファーバーがん研究所と、遺伝子検査サービス「23andMe」が主導したこの研究では、23andMeの遺伝情報が研究に利用されることに同意した330万人のデータを分析した。
『Science』誌に2026年9月17日付けで発表されたこの研究によれば、EGFR遺伝子にT790Mと呼ばれる変異を持つ人は、肺がんのリスクが著しく高まるという。
研究を共同で率いたダナ・ファーバーがん研究所の担当医師兼肺がん研究者ジャクリン・ロピコロ医学博士は、「現在の肺がん検診は、ほぼ喫煙歴に基づいて行われている」と話す。「我々の研究結果は、将来的には、遺伝的なリスクも検診の判断基準となる可能性があることを示唆している」
この変異は、肺がんの遺伝性リスク因子として初めて発見されたものではないが、これまでに特定されたもののなかでは、リスクに最も強い影響を及ぼしているようだ。
ロピコロ博士はこう述べる。「TP53、BRCA2、ATMなどの遺伝性がん素因遺伝子も、肺がんリスクの上昇と関連付けられている。遺伝性(生殖細胞系列)のEGFR T790M変異が異質なのは、そのリスクの大きさと、肺がんへの特異性にある」
さまざまながんのリスクを高める遺伝子変異は多く存在する。例えば、BRCA1とBRCA2の変異は、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんなどのリスクを高める。しかしEGFR T790Mは、肺がんのリスクのみを高めるようだ。
「我々の研究では、ある単一の遺伝性変異が肺がんのリスクを約25倍高めることが明らかになったが、調査対象となった他の17種類のがんについては、リスク上昇の証拠は認められなかった」とロピコロ博士は述べる。
この変異は2005年、肺がんの症例が複数確認された一家で発見され、それ以来、EGFR T790M変異を持つ他の家族についても研究が行われてきた。しかし、これまで報告された症例数は不十分で、この変異がどれほど強力ながん素因かはわかっていなかった。
たばこを吸う人は、もともと肺がんを発症する確率がかなり高いが、「喫煙者でこの変異を持つ人」は、「喫煙者でこの変異を持たない人」に比べて、肺がんのリスクが10倍高かった。



