農業、鉱業、建設業などの過酷な環境におけるブルーカラーの仕事では、遠隔地の厳しい環境で働く意思のある熟練オペレーターの不足が深刻化している。2026年初頭にラスベガスで「CONEXPO-CON/AGG」を開催した米機器製造業者協会(AEM)によると、建設会社がここ数年直面している数多くの課題の中で、労働力不足は一貫して最上位に位置している。現在の労働力は高齢化しており、若い労働者を惹きつけることは困難だ。農業、鉱業、物流などの他のブルーカラー業界でも同様の状況が見られる。一つの解決策は、整地、機器・資材・物資の運搬、作物の収穫、鉱物の採掘などを行う機械に、部分的または完全な自律走行を実現するフィジカルAIやAoT®(Autonomy of Things:モノの自律化)を組み込むことだ。遠隔制御の機器ネットワークは、限られた人材である熟練オペレーターのスキルを有効活用し、快適なコントロールセンターから複数の機器を同時に制御することを可能にする。
ジョン・ディア(John Deere)、キャタピラー(Caterpillar)、コマツ、オシュコシュ(Oshkosh)といった大手OEMが、農業、建設、鉱業、物流におけるこの課題にどのように取り組んでいるかについては、多くの記事で議論されてきた。しかし、これらの取り組みは各社固有の機器や特定の用途に限定されている。現実のブルーカラー業界では、コスト、運用、信頼性の基準を満たすために、異なるモデルや年式の複数のOEMによる多様な車両が混在して配備されている。自律化ソリューションを導入するには、独立したプロバイダーによる、後付け(アフターマーケット)方式で統合可能な、メーカーを問わない(OEMフリーな)ソリューションが必要となる。そのようなプレイヤーは実在しており、例えば太陽光発電所建設向けのXpanner、鉱山向けのAIMやProntoなどが挙げられる。ASIもまた、建設、鉱業、物流、農業にまたがって、OEMフリーな後付け自律化ソリューションを提供するプレイヤーだ。
Autonomous Solutions Inc.(ASI)─ 自律型ロボットのパイオニア
ASIを率いるのは、ユタ州立大学で開発された技術を基に2000年に同社を設立したメル・トール氏だ(トール博士は同大学で農業ロボティクスの教授を務めていた)。ユタ州に本社を置き、テキサス州とコロラド州にもオフィスを構える同社は、自らを「ロボティクスに特化した非公開企業としては世界最大級の規模」であると主張している。契約社員を含め、グローバルで約700人の従業員を擁する。
ロボティクスに加え、同社の核となるのが、OEMフリーな運行管理システム(フリートマネジメントシステム)であるMobius®だ。これは完全自動運転から、ステアリング、トランスミッション、アクセル、ブレーキ、イグニッションの遠隔制御までをサポートする。これにより、1人のユーザーが複数の車両を同時に遠隔操作できるようになり、フリート内の数百台の車両を協調して稼働させるスケーラビリティが実現する。オペレーターは、指定された積み込み区域と排土区域の間でダンプトラックを運行させることができる。この自動化されたサイクルは、割り当てられた作業が完了するか、フリートが新しいタスクを受け取るまで継続される。
自律運転スタックには、自己位置推定と認知のためのGPS、LiDAR(ライダー)、レーダー、およびカメラが含まれる。システムはこれらの情報を経路計画、障害物回避、車両制御に利用する。自律運転スタックはMobiusと継続的に通信し、Mobiusがフリートの管理と協調を行う。
同社は2003年に防衛用途でソリューションの導入を開始し、その後、フォードなどの自動車OEMとの提携へと進んだ。2007年には、その10年後の自律走行型乗用車やトラック開発の先駆けとなったイニシアチブ「DARPAグランドチャレンジ」に参加した。2020年には、エピロック(Epiroc)との下請け契約を発表し、年間5500万トンの生産規模を持つ西オーストラリア州のロイヒル鉱山に自律走行トラックソリューションを提供した。この取り組みにより、ロイヒル鉱山が保有する77台の異なるメーカーのダンプトラックからなる混在フリートが、有人運転から自律運転へと移行され、フリート管理システムや他の鉱山管理システムと統合された。キャタピラー(CAT)793Fと日立建機EH-5000からなる混在フリートは、ASI MiningのMobiusフリート管理システムのもとで運用された。
2022年には、ソフトバンクロボティクス・アメリカ(SoftBank Robotics America)と造園および物流分野での提携を開始し、その後ジョン・ディアと提携して、ゴルフ場のフェアウェイ造園やサトウキビ栽培に取り組んだ。ソフトバンクロボティクスは同社の少数株を取得した。2025年にエピロック(ASI Miningの34%を保有)が鉱山部門を買収した後、ソフトバンクロボティクスは、サトウキビ農業、物流(倉庫や出荷港)、重建設(太陽光発電所やデータセンター建設のための敷地造成)におけるASIの他の取り組みに対する主要投資家となった。焦点は、多種多様な自律型商業サービス車両の開発と配備に置かれている。
ASIの強みの源泉(シークレットソース)は、多様なブルーカラー業界における数百台もの異なるOEMの車両に自律化プラットフォームを導入してきた25年間の経験であり、以下を特徴とする。
- センサーおよび自律化キット
- メーカーの既存のエンジンやトランスミッションと通信するためのインターフェース
- Mobiusからの高度な編成ガイダンスを受け取り、それを車両のセンサー情報と融合させて車両を効果的に制御し、高い生産性目標を達成するためのアルゴリズム/AI
図2および図3は、稼働中のASIのフリート自律化の例を示している。
トール博士は次のように述べている。「当社のお客様は、複数のメーカーが混在するフリートに依存している。ASIのOEMフリーな自律化技術により、単一のプラットフォームを通じてオペレーション全体を最適化することが可能になり、導入、トレーニング、監視、およびサービスが簡素化される」
AIM Intelligent Machines ─ 惑星規模の土工作業
元グーグル(Google)およびスペースXの従業員によって2021年にシアトルで設立された同社は、現在50人の従業員を擁し、建設、鉱業、災害管理、防衛分野向けに土砂や鉱物を移動し、整地することに情熱を注いでいる。同社は最近、コースラ・ベンチャーズ(Khosla Ventures)、ジェネラル・カタリスト(General Catalyst)、ヒューマン・キャピタル(Human Capital)、アイアンスプリング・ベンチャーズ(Ironspring Ventures)、マンティス(Mantis)、DCVC、およびエラッド・ギル(Elad Gil)からの投資により5000万ドル(約78億6000万円)を調達した。同社はCES 2026に出展し、その自律化機能を実演した。
同社は最近、建設機械事業の世界的企業であるコマツの子会社、EARTHBRAINとの戦略的提携を発表した。この提携は、日本および米国市場向けに自律型建設ソリューションを提供することを目指しており、当初はブルドーザーと油圧ショベルに焦点を当てる。
AIMのコア製品は、以下の構成からなる自律化キット(Autonomy Kit)である。
- 通信接続の有無にかかわらず、ノンストップ稼働を保証するために機械に搭載されて実行されるエッジAIコンピューティング。
- 現場での極端な振動、ほこり、熱、寒さ、および過酷な連続使用に耐えるよう設計された堅牢なハードウェア。これには、GPSやインターネット接続がない状態でも、安全性、自己位置推定、360度の状況認識(LiDAR)、複数のカメラ(用途に応じて3〜4台)、あらゆる角度からのマッピングを保証する搭載センサーが含まれる。
- GPSがない環境での自己位置推定は、LiDARとカメラのデータによって実現される。この課題の一つは、作業の進行に伴って地形が絶えず変化することだが、AIMはこれに対するソリューション(動的かつリアルタイムの適応型自己位置推定)を開発している。
導入への第一歩は、顧客の機器(メーカーを問わない)にハードウェアを取り付け、キャリブレーションを行うことだ。次のステップとして、現場の調査とマッピングを行い、安全性と効率性を高める機会を特定する。プロセスが確立され、オペレーターが訓練され、定義されたプロセスと効率パラメーターに沿ってハードウェアとソフトウェアの統合テストが行われる。最終ステップとして、自律運転とプロセスを顧客へと移行する。ダッシュボードアプリにより、オペレーションや主要指標の遠隔監視が可能となる。
AIMに対応した異なるメーカーの機械は、共有された土木作業ワークフローにおいて協調して動作することができ、自律型機器と手動運転機器が同じ現場で共存することが可能だ。図5は、AIMのOEMフリーなフリート自律化へのアプローチを示しており、顧客がすでに所有している機器全体に柔軟性をもたらしている。
AIMのフィジカルAIソリューションは、地面へのアプローチと地形の変形を中心に構築されている。システムは変化する地形を感知し、望ましい最終状態に向けて計画を立て、土砂の掘削、押し土、積み込み、移動、整地を行う機械を制御する。そして、これらの機能をフリートレベルで接続し、より広範な土木作業のワークフローを自動化する。最近のコマツとの発表で重要な点は、AIMが大手OEMと深く統合しつつ、顧客に対して混在フリート、後付け、および工場出荷時装着機器に共通する自律化プラットフォームを提供できることを示している点だ。AIMの創業者兼CEOであるアダム・サディレック氏は次のように述べている。「すべては地面から生まれる。すべての道路、家屋、ライフライン、データセンターは、存在を始める前に土の分子を動かす必要がある。農業や食料、鉱業や鉱物も同様だ。AIMは顧客にエンドツーエンドの自動化ワークフローを備えたエコシステムを提供する。当社はこの分野において、中立的な立場を維持しながら、その提供に注力している」
U.S. Sugar ─ 1931年からアメリカの家庭に食を届ける
U.S. Sugarは、フロリダ州を拠点とする創業約100年の非公開企業であり、「アメリカの家庭のために食物を育てる」企業だ。同社はフロリダ州の25万5000エーカーに及ぶ農地で、サトウキビのほか、トウモロコシ、柑橘類、サヤインゲンなどの新鮮な作物を栽培、収穫、加工している。ジョージア州サバンナとフロリダ州クルーイストンに大規模な製糖工場を持ち、300マイルの鉄道輸送ネットワークを所有している。現在、約2000人の従業員を抱えている。年間売上高は約13億ドル(約2040億円)と推定されている。食品メーカーへの砂糖供給に加え、一部は消費者への直接販売用にパッケージングしている。米国では年間約900万トンの砂糖が生産されており、その約50%がテンサイ(ビート)から、残りがサトウキビから作られている。U.S. Sugarは砂糖市場全体で13%、サトウキビ生産においては25%のシェアを占めている。
持続可能性と責任ある農業は、同社の事業の重要な柱の一つだ。砂糖の生産は天候に左右されやすい過酷なビジネスであり、生育期や収穫期は人間にとって厳しい労働環境となる。サトウキビの収穫量のうち、精製糖になるのは約10%にすぎない。残りの約50%は、サトウキビの茎を搾って汁を抽出した後に残る繊維状の物質である「バガス」だ。U.S. Sugarはこれをクリーン燃焼型のバイオ燃料へと加工し、自社の精製事業の電力源としている。U.S. Sugarのウェブサイトによると、1トンのバガスは50ガロンの石油に匹敵するエネルギーを生み出すため、年間900万トンのサトウキビ生産により、約450万トンのバガスから石油2億2500万ガロン(500万バレル)相当のエネルギーが生産される。サトウキビの本当の価値は、新たな石油とも言えるバガス・バイオ燃料にあるのかもしれない。
土地の造成、植え付け、収穫に至る技術の配備と精密農業の実践もまた、重要な事業の柱である。2025年、同社はジョン・ディアの機器と精密農業技術ソリューションを提供する全米有数のプロバイダーであるエバーグレーズ・イクイップメント・グループ(Everglades Equipment Group)と戦略的提携を結んだ。最近の記事で説明された多くの精密農業機能が、同社のジョン・ディア機器に導入されている。
この合意の一環として、ASIはエバーグレーズ・イクイップメント・グループと協力し、通常は手動で運転される無人のジョン・ディア製トラクター(ジョン・ディア8Rシリーズ4台と、ジョン・ディア9Rシリーズ1台)のフリートをフロリダ州に配備し、25万5000エーカーの農地で稼働させている。ASIのMobiusフリート管理システムが自律運転を編成し、1人のオペレーターが遠隔コマンドセンターから同時に複数の車両を稼働させることを可能にしている。主な利点は24時間稼働であり、効率の向上は目覚ましい。ASIによる自律運転の導入前は、人間のオペレーターによる2交代制で、1台あたり1日約60エーカーの作業が限界だった。ASIの導入により、1人のオペレーターが5台の機械を遠隔制御し、1日約240エーカーの作業を行えるようになり、生産性と機械の稼働率が4倍に向上した。自律化のもう一つの重要なメリットは、限られた熟練人員を確保し、オペレーションの他の部分に配置できることだ。旧世代の機器に自律化機能を後付けできるASIの能力も強みである。さらに、MobiusはU.S. Sugarの運用データを収集し、作業のすべての段階においてU.S. Sugarの空中マッピングドローンからの地図データも統合する。
図6は、ディスク耕作と呼ばれる作業中の自律型トラクターを示している。これは畑の準備プロセスの一部であり、前の作物を地中から引き抜く作業だ。次のシーズンのために新しい作物を植え付けるには、ディスク耕作が必要となる。
U.S. Sugarの精密農業マネージャーであるスコット・バーデン氏は、次のように述べている。「ASIとの提携は、U.S. Sugarにとって正しい決断だった。彼らは時間をかけて私たちのオペレーションを理解し、私たちのチームと密接に協力して、私たちが日々直面する現実の状況で機能するシステムを開発してくれたからだ。彼らの技術は信頼性が高く、高精度で拡張可能であることが証明されており、同様に重要なこととして、私たちが業務全体で自律化ソリューションを拡大し続ける中で、彼らのチームは真のパートナーであり続けてくれた」
フィジカルAIの革命は、ブルーカラー業界に大きな利益をもたらしている。異なる機器サプライヤーの移動機械に後付けでき、これらの用途全体に対応できる自律化スタックは極めて重要だ。それは今まさに起こっており、この分野における新たなフロンティアを切り拓いている。



