オラクル(Oracle)の「Fusion Claw」は、企業の専門業務を低コストで自動化するための実行環境だ。AIが推論して計画を立てる工程と、大量データを処理する工程を分けている。元帳照合や人員配置など25種のアプリケーションを用意し、AIにどこまで権限を与え、どこで人間に判断を戻すかは顧客が決める。
AIの推論と大量処理を分け、言語モデルの呼び出しを減らす
AIエージェントに仕事をこなす十分な能力があっても、実務で使うには費用が高すぎる場合がある。100万件の会計記録を処理させるような仕事では、採算性を無視できない。言語モデルが1件ずつ内容を判断して処理すれば、企業が結果を待つ間にも費用が積み上がる。
オラクルが示す答えがFusion Clawだ。企業向けアプリケーション内で、複雑なAI業務をより低コストで処理するための新たな実行環境である。AIエージェントに専用のコンピューティング環境を与えるOpenClawに着想を得ており、顧客が定める規則と権限の範囲内で専門業務を処理できる隔離環境を提供する。
AIエージェントはまず推論によって計画を立て、実行に必要なツールを組み立てる。その後の大量処理は、入力と処理手順が同じなら同じ結果を返す「決定論的な計算処理」へ引き渡す。計算のたびに言語モデルへ問い合わせる必要をなくし、処理費用を抑える仕組みだ。
オラクルは、AIによる推論と実際の処理を分離すれば、従来はアプリケーションだけでは完結せず、専門家が担ってきた業務まで低コストで自動化できるとみている。企業は、専門家が介入して計画を見直すまでに、どこまでの仕事をAIへ安心して委ねられるのか。
オラクルの最高経営責任者(CEO)、マイク・シシリアは、企業向けソフトウェアの利用価値を高める機会だとみる。
「人々は依然として、システムからデータを取り出して分析し、何をすべきか判断した後、そのシステムへ戻って行動に移すまでに相当な時間を費やしている。Fusion Clawを使えば、AIエージェントがそうした仕事をより多く自力でこなせる。人間をどの程度関与させるかは顧客が選べる」。
Oracle Fusion Cloud Applicationsは、顧客の財務記録や業務ルールをすでに保持しているため、Fusion ClawがAIエージェントを使って実務を行う基盤として利用できる。既存のアクセス制御によってエージェントが利用できる情報を制限し、自動実行を認める行動と、人間の承認を必要とする行動は顧客が決める。
シシリアは、こうした境界を設定することで、AIが「より多くの仕事を確実に処理」できると説明する。
「経営資源を他の用途に振り向け、人々が問題解決、顧客対応、イノベーションの推進により多くの時間を使える」。



