競争の焦点は業務データと実行基盤の一体化
オラクルは、Fusion Applicationsが保持する業務データと、すでに組み込まれた管理策がFusion Clawの強みになるとみている。競合企業も、自社のプラットフォームならAIによる推論を実際に完了した業務へつなげられると主張している。
最も直接的な比較対象はSAPだ。SAPのAutonomous Close Assistantは、財務上の照合作業や会計上の例外処理など、Fusion ClawのLedgerアプリケーションと重なる業務を対象とする。
SAP Autonomous Suiteでは、50を超えるJoule Assistantが200を超える専門エージェントを連携させる。SAPとオラクルのアプリケーションは、AIエージェントが必要とする業務記録と、従業員が記録を変更する際の規則をすでに保持している。
財務責任者にとって重要なのは、各社が既存の業務データや規則を、AIエージェントに安心して完了を任せられる仕事へどこまで変換できるかだ。
ワークデイ(Workday)は人事と財務を強みにAIエージェントの利用を広げている。オラクルはShipping Consolidationなどを通じ、サプライチェーン業務まで同じ仕組みを広げられる。
サービスナウ(ServiceNow)は、複数のAIエージェントを協調させて業務を進めるエージェント型ワークフローを提供する。マイクロソフトも、複数のAIエージェントを連携させ、複数のツールやデータをまたぐ業務フローを構築する仕組みを重視する。
オラクルがより強調するのは、基礎となる業務記録とアクセス制御がすでに存在するFusion Applicationsの内部で、AIに仕事を実行させる点だ。
業務データやアプリケーションをつないだ状態を重視する姿勢は、分断された企業システムをレオーネが問題視する理由でもある。AIエージェントが新製品を提案しても、販売に必要なアプリケーションを接続するために企業が数カ月を費やすなら、提案の価値は小さくなるとレオーネは指摘する。
「企業は次第に、より広い業務プロセスを軸として、正式な業務記録を保持するシステムと基盤アーキテクチャを集約していくと思う。そうなれば、複数の業務にまたがる仕事を、より多く自律的に実行できる。企業がAIに期待する生産性を実現したいなら、企業向けシステムはこの方向へ進む必要がある」。
この構想は、オラクルの事業上の利益とも一致する。システムを緊密に統合するほどAIエージェントが処理できる仕事が増えるなら、顧客がFusion Applicationsを中心に業務システムを集約する理由も強まる可能性がある。
「意思決定を行い、何をすべきか伝えるエージェントを接続するだけでは、問題の約10%に対処するにすぎない。生産性を高める機会の残り90%は、実際に仕事を行い、大規模に実行する部分にある」。
「企業がAIを実際の業務実行に使う次の段階へ十分に進んでいないため、まだそこには到達していない。実行が鍵であり、我々はそこに注力している」。
Fusion Clawは、オラクルのアプリケーションに企業運営を担うより大きな役割を与える可能性がある。ただし、AIエージェントを監督する費用が、導入によって削減できる費用を食い尽くさないことが条件になる。
オラクルはAIの実行基盤を提供できる。何をもって適切な実行とするか、どの条件でシステムを停止させるかを決める責任は、依然として顧客に残る。


