もうひとつはバリュエーションです。大会では理論株価まで出す必要はないのですが、機関投資家にとっては最も重要な仕事のひとつです。しかも出して終わりではなく、その水準は妥当か、同じセクターの似た企業と比べて高くあるべきか低くあるべきかを突き詰めて、売買の判断につなげていきます。
一次情報を取りに行く
──生成AIが財務モデルまで作れるようになった今、人間にしかできないことは何だと思いますか。
恐ろしい質問ですね(笑)。アナリストはみな「いつ自分の仕事がなくなるのか」と思っているはずです。実際、私も財務モデルの最初のバージョンはほぼAIで作りますし、企業の基本的なリサーチもほぼAIで済みます。
そのうえでジュニアのアナリストが価値を出せるのは、一次情報を持ってくることだと思います。特に上場企業は情報開示の規制が厳しく、会社側はなんでもかんでも話せるわけではありません。だからこそ、話しぶりから前向きなのか慎重なのかを感じ取ることが大切です。開示ではこう言っているけれど、実際にマネジメントの方と話すとあまり自信がなさそうだ、ということもある。決算説明会に限らず、普段からIR担当者にミーティングを設定してもらい、事業の見通しや株主還元の考え方を聞いています。
それに、この業界は人手の制約がとても大きく、ポートフォリオマネジャーもアナリストも非常に忙しい。AIがアナリストを置き換えるより、アナリストがAIを使いこなす余地のほうがまだ大きいので、短期的に完全に置き換えられるとはあまり心配していません。
──この仕事のどこに魅力を感じますか。
一番は、自分の仮説が当たったときです。論点を考え抜き、何が最も重要かを見極めて予測する。それが株価という結果になって表れ、大きく伸びたときは「イケてる分析をした」と思える、最も楽しい瞬間です。
もうひとつは、知らなかったことを学ぶプロセスそのものです。普段はケチャップを使うだけでも、調べると様々なプレーヤーがいて、トマトがどこから来ているのかまで見えてくる。好奇心がなかったら、入社1カ月で辞めていると思います。調べることが膨大にあるので、それを楽しめないとつらすぎる仕事です。
将来は自分のファンドを運用したいという野望をもっています。ファンドオーナーはアナリストと違い、自分のお金を投入し、出資者のお金も預かる立場です。責任も大きいですが、そのやりがいは計り知れないと思います。
──最後に、これからGyoseki大会に挑む学生たちへメッセージをお願いします。
分析を始める前に、流れを一通り組んでおくことです。まず論点を整理し、それを検証するために何をすべきかを、チームで骨組みにしておく。時間は限られていますし、メンバー全員が金融に精通しているとも限りません。何が最も重要で、それを検証するには何をすればいいのか。事前に決めておくことが大切です。
私にとってGyosekiは、今のポジションを得た最も大きな要因です。金融でのキャリアを目指す人にとって、大会に出て成績を残すことは、将来を決める大きなきっかけになり得ます。ぜひ頑張ってください。
柳翔太◎シンガポールに拠点を置くグローバル投資会社アナリスト。早稲田大学国際教養学部で経済を専攻。在学中、第2回、第3回のGyoseki大会で優勝した。


