──店頭での調査は、勉強会で教わったのですか。
自分たちで考えました。当時の私たちはプロではないので、ブルームバーグのようなデータベースにもアクセスできない。限られた時間とリソースの中で、数量が伸びるという仮説をどう検証するか。3人で議論した末に「自分たちで見に行くしかない」となったのです。
第2回のときは、チームメートが中国とカナダに、私が留学先の米サンフランシスコにいました。サントリーは海外でも商品を展開しているので、3カ国のスーパーを回って棚の写真を撮りまくりました。当時はおそらく私たちだけの取り組みで、ユニークな点として評価していただけたと思います。
ただ、今振り返ると分析は粗かった。「棚のいい位置に置かれているから、成長率は過去並みの4〜5%だろう」といった具合に数値を入れていくのですが、本来はもっといろいろなデータでサポートしなければいけなかった。「このデータがこう示しているから4%だ」と、ロジカルに積み上げなければいけませんでした。当時の自分をダメ出しするなら、まずそこです。
日用消費財メーカーは、機関投資家にとっても成長の予測が難しい分野です。ほかの業界ではある程度は市場のモデルを自分で組んで積み上げられますが、消費財ではそうはいかない。店に行って棚を見て「この棚は伸ばせるのか」と考えるのは、今の立場では当たり前のことです。学生時代、議論を交わして自分たちでそこにたどり着けたのは、そのプロセス自体が本当に良い経験でした。
面接の半分は企業分析大会の話
──就職活動でも、大会での経験が生きたそうですね。
Gyosekiのことは面接で真っ先に聞かれました。面接官の方が履歴書を見て、「このGyoseki Competitionとは何だ」と。それから企業をどう分析し、どんな結果とフィードバックを得たのかまで深掘りされ、面接時間の半分ほどはGyosekiの話だった気がします。今の会社に入れた最大のきっかけだったと思っています。
入社して同期に会って驚いたのですが、世界大学ランキングの上位校出身で、在学中の4年間ずっと投資クラブで活動し、米国のストックピッチ大会で優勝していたり、高校生から資産運用会社でインターンをしていたりする人ばかりなんです。日本で普通に大学生活を送っていて、そこまでの実績を積める環境はなかなかありません。海外の運用会社は、ソフトスキルに加えてハードスキルをどれだけ持っているかを重視します。外に示せる実績をつくれたことは、大きなアドバンテージになりました。
大会のプロセスは、実務ともよく似ています。今の仕事でも、上司から「この銘柄は面白そうだから分析して」と言われると、何をどう分析するかは完全に任されます。論点整理から仮説の検証、最終的な投資推奨まで自分で持っていく。その流れを学生のうちに経験できたのは大きかったですね。
──実際に働いてみて、プロのレベルの違いを感じるのはどこですか。
ひとつは情報の粒度です。機関投資家になると、得られる情報が桁違いに増えます。証券会社のアナリストレポートを読めますし、ブルームバーグやファクトセットといったデータベースも使える。経営陣と直接話し、業界の専門家にインタビューすることもできます。


